しあわせに


「〜だぁぁ!どいつもこいつも結婚結婚煩いよ!私はまだ遊んでたいっつーの!」




大きな声で喚くと目の前の気弱な彼は少し苦笑い。
正直私はそんな年でもないので周りのお節介にはうんざりなのである。



「仕方ないよね…花子さんは…人間、だから…」



「ややや、でも私だって人を選ぶ権利位はあると思うのよアズサ君」



そもそも。そもそもだ。
私にはこんなに可愛くて格好いい彼氏様がいるのにも関わらず大量のお見合い写真を送り付ける親戚一同はどうかしていると思う。



「大体結婚ってさぁ、私考えた事無いのよねぇ。」


「そう…なの?………でも、」




私の何気ない言葉にアズサ君は少しだけしょんぼりしたようにその綺麗な眉を下げて小さく呟いた。




「俺は…花子さんには、幸せに…なってもらいたい…」



「…なんで他人事なのアズサくーん」




むにむにと彼の頬を抓りながら不満を漏らすと
困ったように、悲しそうに微笑む彼。
嗚呼、別にそんな顔をさせたかったわけではないのだけれど…



「だって…俺は、ヴァンパイアだから…きっと、花子さんを…幸せにすることなんて…できない、から」



それは、悲しいけれど紛れもない真実で
種族の違う私達が永遠に結ばれる事などありはしない夢物語なのだ。
救いようのない事実に私は小さくため息をつき、コツンと彼の額を指ではじく。




「花子さん…?」



「もう、馬鹿。愛してるんだから。」




別に彼の同族になる事を恐れているわけではない。
けれどそれは一種の賭けのようなもので、誰彼かまわずヴァンパイアに覚醒するという訳ではないそうだ。だから、もしも覚醒できずにそのまま死んでしまうのではないかという不安から私も彼も中々一歩を踏み出せずにいる。



「俺も…俺も、愛してる。だから…花子さんは…」




“しあわせになってよ”




それは愛し合っているのに、まるでずっと片想いをし続けているような悲しい言葉。
けれど私が死んでしまうよりずっといいからと、泣きそうな声で言った彼の気持ちを踏みにじれるほど私は強くなれなくて…。



「しあわせに、なれたらいいなぁ。」




出来ることならあなたと二人で。
なんて、少し欲張りになり過ぎた私は目の前にいる彼に気付かれないよう小さく胸の中で泣いたのだ。



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