綺麗になりたいの!


「ああーもう!どうすれば綺麗になれるんだろー。」


「………」


私の盛大な独り言は静かな部屋に虚しく響き渡った。
…ちょっと、無視だなんてひどすぎやしませんか。


それもこれも全ては私の嘆きを今先程盛大に無視しやがったこのイケメンインテリ野郎に原因があるのだ。



そう、ぶっちゃけ隣にいるのが恥ずかしいのである。彼は、ルキは腹が立つほど顔もスタイルもいい、所謂イケメンという部類にカテゴライズされる吸血鬼様である。
そんな彼が何を血迷ったのか事もあろうに恋人というポジションに私という一般庶民を選択してくれやがったのでもう大変だ。一大事だ。事件です姉さん。




私にだって人並みの羞恥心や劣等感を持ち合わせている。それは彼の隣、傍に居ることによってことごとく刺激されてしまって泣きわめく日々。
そもそもどうして私なんか選んじゃったのよルキ。意味わかんない。
いや、私だって馬鹿みたいにルキの事は大好きだから飛び上るほど嬉しいのだが。




「ちょっとルキ、難しい本読んでないで私に協力してよー!綺麗になりたいのよー!」



「はぁ…花子、お前が綺麗になるだなんて出来る訳ないだろう。」



な ん だ と !?



呆れるように本に視線を向けたまま言い放った彼の大暴言にピシリと青筋を立てる。
オイ、無神家長男。言っていい事と悪い事の区別もつかないのか。



や、分かってる。分かってますよ!?庶民がどれだけ努力しても貴族にはなれないいってことぐらいさ!けど、けどさぁ!それを言っちゃおしまいってやつなんじゃないかしら!



しかし彼はそのままパタリと分厚い本を閉じて
こちらに顔を向けてさも当たり前の様にこう言いのけたのだ。




「お前は美しい部類ではなく、可愛らしい部類なのだからな。」




…私は許さない。今の無神ルキの女たらし発言を決して許しはしない。
そしてもっと許しがたいのはそんな事を言われて顔をゆでだこの様に真っ赤にしてしまっている自分自身だ。




「…なんだ、照れているのか。相変わらず可愛らしい奴だなお前は。」



「うる…っ、煩い!も、もういいから…!頭撫でんな!本読んでなよ!」




おかしそうに優しく私の頭を撫でて笑う彼に勝てる日だなんて来るのだろうか。
そんな考えを巡らせているとルキは小さな音を立てて私に口付けた。




「可愛らしく愛らしいお前を誰よりも愛しているよ、花子」



「…もうルキには一生勝てる気がしないわ私。」



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