見上げれば夜空
外は苦手だ。
全ての人が私を見て嘲笑っているように感じるから。
そんな事あるはずがない。
自意識過剰なのもわかっている。
分かっているうえで怯えてしまうから本当に私は私が嫌い。
「花子、下を向いて歩くな。」
「だ…って、怖いもの…」
ルキの声が頭上から降ってくるが私は顔をあげることは出来ない。
顔をあげれば私を見て嘲笑い馬鹿にする人間を見てしまうではないか。そんなの怖い。
ルキは私を愛してるというけれど、私の望み通りに殺してはくれない。
何もないところに閉じ込めてもくれない。
かといって食料にもしなければ性欲処理にも使わない。
正直彼が何をしたいのかが分からない。
「花子。」
「や、」
ぐい。
頬に両手を添えられて、無理矢理上を向けられてしまった。
けれど私の視界に広がるのはまるで夜空のような漆黒の彼の瞳。
温度がない生き物のくせにその瞳はとてもあたたかで逆に彼の瞳に映る私は悲しげで冷たい。
嗚呼、これではどちらが化け物なのかわかりはしない。
「周りが恐ろしいのならば、俺だけを見つめていればいい。」
声も、瞳も、指先も、彼を形作るもの全てが優しくて
ぎゅうっと自身の胸が締め付けられるように痛くて痛くて
「ふふ…暖かい、な。」
「ル…キ、ルキ…」
気が付いたら零れていた涙をそっと指で掬って
困ったように微笑んだ彼の顔があまりにも綺麗で私は零れ落ちる涙を止めることが出来なかった。
只、壊れた玩具の様に彼の名だけを呼び
暖かいと言われたその雫を流すだけ。
彼の瞳に映る私は変わらず悲しくて冷たいけれどそんな私でもヒトらしく温度の持つものがあるのならば嬉しい。
「ルキはどうして私なんかに優しくするの。」
「答えなんて何度も伝えているだろう。」
それはきっと“あいしてる”の五文字。
私がこの世界で最も信じることのできない感情だ。
「“アイシテル”なら血も身体も奪えばいいのに…どうして?」
「花子が俺の愛を信じてくれる日が来たら…な。」
少し淋しそうな声。
そんな日は来るのだろうか。
“愛”、だなんてそんな曖昧なもの…
彼のその言葉に敢えて返事はせず。
私は彼の言う愛の様に不器用に微笑むだけにした。
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