えびばでぽっきー!〜ダル男と私の攻防戦〜


「なぁ、あんた今日何の日か知ってる?」



目の前に差し出された赤い箱をチラリとみて
私はそのまま目を閉じた。




「………ちょっと。」


「あーはいはい、アレでしょ?ポッキーの日でしょ?分かったから今は寝かせてよ〜…もう無理ぃ。」




シュウの膝の上でゴロリと寝がえりをうってぎゅうっと彼の腰に抱き付く。うん、いい香り。こうして彼が起きて何か行動を起こそうとすることはとても珍しいのだが、生憎今の私はそれどころではないのだ。




「今私は猛烈に眠いの…ポッキーゲームやりたいなら勝手にやっててよ〜。」




「ん…分かった…勝手にする。」




「んぇ?」





私のボヤキにだるそうな声で返事をして彼の腰に巻き付いていた私の腕をほどいて仰向けに寝かせて視界に入ったのは意地悪そうな彼の顔。




「お前が言ったんだ…後悔するなよ?」



「ん、シュウ…なに…んぅ」





強引にそのお菓子を口に入れられたかと思うと
迫ってくる意地悪な彼の顔。ちゅっと、小さな音が聞こえて来たらすぐにそれは深く甘いモノへと変わっていって。思わず甘い声を漏らしてしまう。




「は…っ相変わらずエッロい声だなぁ…?」



「んん…しゅ、んむ…」




「ほぉら、まだだ…まだ俺は満足してないからなぁ」





おかしそうに笑う彼はまた私の口にそのチョコのお菓子を突っ込む。突っ込んでは貪って、突っ込んでは貪っての繰り返し。その行為に次第に熱くなっていく体にもう睡魔なんて残っていなくて…




「ぁ…シュウ、もう…んんっ」



「なぁに?眠いんだろ?寝てていいぜ…」




クツクツと低く笑いまた私の唇を貪るものだからムカついて彼の頭をそのまま抑えつけて自ら深く舌を絡めてやった。




「…っ、何、いきなり」



「人間ってのは酷く浅ましい生き物だからこんな事されると発情もしちゃうわよ。」




彼の胸に手を這わせて挑戦的に笑ってやったら
しっかりとその手を掴まれて、指と指の間を丹念に舐めとられる。




「ふふ…知ってる。」



「なに、確信犯な訳?タチ悪いわよ。」




「今更だろ?嗚呼、もうこれはいらないな…」




ぽいっと放り投げた赤い箱が宙を舞うのを視界の端に捕えながら私は小さくため息をついた。




「なんか不服でもあるわけ?」



「無いわよ…それこそ今更、でしょ?」



「ははっ、言えてる…」



そう言いながら私の上に覆いかぶさって来たクソ我儘な吸血鬼にそっとキスを落とした。軋むベッドの端に放置された衣服とお菓子が恨めしそうにこちらを睨んでる気がして私はひとつ、ふたつ微笑んで彼の首に腕を回す。



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