お疲れ様〜カルラさんの場合〜
疲れた…もういやだ
どれだけ頑張っても足りなんだ…
私は本当に駄目人間
「うー…う、うううう!」
独り自室に響き渡るのは情けない私の嗚咽ただひとつ。
ベッドに体を投げ出してひたすら泣きじゃくるみっともない自分に嫌気がさしてしまう。
せめてこんな弱いところは誰にも見られたくないから厳重に鍵を掛けたけれど
もしかしたらこの声も外への漏れているかもしれないと思うと本当に自分が情けなくて仕方がない
「ホント……っ私って駄目な奴…っ」
ぐずぐずとひたすらに涙を零しているこの現状にさえも腹が立って余計に涙が零れてしまう。
頑張って頑張って頑張ったけれど足りなくて…
どれだけ自分なりに努力した所で自分の満足出来る事…皆に認めてもらえる事が出来ない自分が大嫌い。
そう考えると悲しくなってこうやって一人でぐずぐずとジメジメ泣いてしまう私はもっとキライ。
「うう……死んでしまいたい」
自己嫌悪と負のスパイラルの末に出るお決まりの言葉にまた涙……
本当に死んでしまいたいって思っているわけではないのにこんな事を言ってしまう自分はもっともっと大嫌いだ。
「おい花子」
「……っ!」
そんな事を思っていれば何事も無かったかのように開かれた扉と心地よい低い声
思わず肩が揺れてしまう……あの、ちゃんと鍵はかけたはずなんですけどどうして開いちゃうんですかね?
「カルラさん…」
「酷く無様な表情をしているな」
「………、」
静かに入ってきた彼は私を見下ろすや否や酷く冷たい言葉を投げかけるけれど
それに反論できる術を私は持っていない。
だって彼の言葉はまさに正論……自分の精一杯が理想に足りないってだけで更に頑張ろうとはせずに一人で泣いて自己嫌悪
そりゃこの様子を無様以外のなんと表現できるだろうか。
「花子………貴様は愚かだ」
「そう、ですね…」
ギシリとベッドが揺れたかと思うと彼が隅に腰を掛けてコチラをじっと見つめていた。
淡々と紡がれる言葉に必死に流れる涙を堪えようとするけれど、どうしても声だけは震えてしまう…
嗚呼、大好きな人の前でも気丈にふるまえない私は本当に無様で愚か…
けれど彼は何を考えたのかそんな私に両腕を伸ばし、少し強引に自身の胸元へと抱き寄せてくれた。
え……?どういう事なのだろうか?
最愛に酷い正論ばかりと紡がれていたかと思えばこの状況…泣いていて回らない思考回路では彼の真意なんて汲み取る事は出来ない。
「カルラさ、」
「貴様は愚かで愚鈍で無様なのだから……難しい事を考えず、私の腕の中で喚けばいい」
どういう意図で抱きしめてくれたのかと問おうとすれば酷く甘やかされそうな台詞でそれは遮られてしまい酷く困惑する。
でも、私は別に…本当に頑張りが足りないだけで…勝手にマイナス思考になってるだけのクズで…だから、
ぐるぐると彼の言葉と自身の中の複雑な気持ちを葛藤させていれば
沢山涙を流していた瞳にちゅっと優しい唇の魔法が落とされた
「花子……そんな理屈はどうでもいい。本当は貴様はどう思っている?所詮愚かな人間なのだから今更私はそれで貴様を幻滅などしない…」
「………、」
「寧ろ…こうして低能な建前を持って本当の意味で嘆くことが出来ない貴様の方が私は失望してしまうが……構わないのか?」
言っている事はとても酷い癖にそう紡ぐカルラさんの瞳は何処までも優しくて…
私に「泣くのならきちんとした理由で泣け」と促してくれる。
じっと私を見つめるその金色の瞳にじわり、じわりと本当に零したかった意味の涙が溢れて零れだした。
「わた…し、頑張ってる…」
「嗚呼、」
「たくさん、がんばってる……のに…っ」
「そうだな……」
「皆……認めてくれない…っ」
「花子……」
「わたし、がんばってる……よぉ!」
ぽつりぽつりと涙と共に零れる本音。
それにひとつひとつ、心地いい声色で返してくれるカルラさんはいつもの威厳溢れる始祖王ではなくて
本当に彼女である私贔屓の優しい彼氏そのもの…
「うぁ…あ、…ああああ」
「花子……そうだ、花子は頑張っている…貴様の努力は私が見ている」
彼の腕の中で絞り出された悲痛な嘆きは決して可愛いものではなくて
理由さえも酷く利己的な筈なのにそんな私を抱き締めてくれる二本の腕は私を認めるように強く強く力を込めてくれる。
本当はそんな事思っちゃいない…努力しても足りない私が悪いなんてタテマエ
こんなにも頑張ってるのに誰もそれに気付いてくれないのが…認めてくれないのが酷く悲しくて辛くて苦しかっただけ
けれどそんな自己中心的な汚い気持ちで嘆くのは私の妙な意地が許さなかった…
でも、
でも目の前の彼はそんな意地を易々と壊して汚くて醜い感情のまま喚く私を丸ごと抱き締めて欲しい言葉をくれてしまう…
皆を纏める王なら幾ら努力の過程があったとしても結果が出ていないのであれば切り捨てる癖に
私だけはこうして甘やかしてしまうのは本当にずるいと思う。
「う、うー……カルラさ、うぐっ」
「………全くもって可愛らしくない泣き声だな。」
「酷いですよがるらざん!!!!」
ひとしきり彼の腕の中で自分本位な不満をぶちまけ嘆き切って
漸く落ち着き始めた時に落とされた辛辣な言葉に思わず顔を上げて抗議すれば
視界に広がったのは少しばかり安心したような最愛の優しい笑顔。
「これからは妙な綺麗ごとや理屈を並べて偽りに嘆くのはよせ……分かったな?」
「……………カルラさんカルラさん、アレ、もしかして私が心配で此処に来てくれたんですか?鍵も魔法で外して」
「煩い黙れそして死ね」
「デレからツンへの落差が激しい!!!さっきまで私落ち込んでたんですよ!?照れ隠しだってもっと言いようがあるでしょ!?」
そんな優しくも愛おしい言葉をかけてくれる彼の微笑に見とれながらも
不意に思った事を口にすれば返ってきたのはさっきと打って変わって棘しか見受けられない辛辣すぎる言葉の暴力で
思わず再び嘆いてしまったけれどこれは正直先程のものとは違って幸せの嘆きに近い…
「この私が照れる訳がない思い上がるな人間風情が」
「そんなもん耳まで赤くして言われたところで説得力ないんですからね!!もうもうもう!!!優しくするなら最後まで優しくしてくださいよー!」
未だに彼の腕の中でぎゃんぎゃんと喚けど表情は互いに笑顔
嗚呼、本当に……彼の言葉は魔法の様だ
「全く……私一人が貴様を認めてると言っただけでここまで立ち直るとは…本当に単純だ」
小さく呟かれた彼の言葉に私はとびきりの笑顔を作って
ぎゅうとカルラさんに自らも抱き着き小さく笑う
「だって誰かに認められたいって思ってたのが最愛にって、最高じゃないですか!?」
私は酷く愚かで単純で愚鈍な人間だから
一番愛しい人に自身の頑張りを認めてくれてるって言われるだけですぐにこうして立ち直れる
自分の醜い感情をまるっと包み込んでもらえるだけであっという間にご機嫌になれる
本当に……本当に愚かな人間だ。
そしてこんな愚かな私を心配してわざわざ厳重に鍵を掛けた扉を魔法で強制的に開いて
無理矢理上がり込んで来てこの妙な理屈を並べて本当の意味で嘆くことのできなかった私に望む言葉をくれたこの始祖王が
誰よりも私を愛してくれているんだと、酷く自惚れていたりもする…
「カルラさん、ありがとう!だいすきっ!!」
そんな愚かで単純で自惚れて思い上がりの激しい人間の言葉に
目の前の始祖王はそっと嬉しそうに微笑んでくれたのを私は絶対に忘れない。
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