夢のやり直し
酷く恐ろしくて、悲しい夢を…見た
「……っ」
深夜、本当に静かな時間
独りでキッチンへと向かい落ち着く為に一気に水を飲み干す。
嗚呼、どうしてあんな夢を見たのだろう…
「…………」
悪い夢は良い現実への予兆だと言うけれど
それでもあの内容は酷すぎる。
思い出してはふるり、一つ身体を揺らした
「花子?」
「……っ、あ……嗚呼、どうしたの?カルラ」
背後から心地よい低音に自身の名を呼ばれて振り返れば起こさないようにそっと抜け出してきたはずなのに心配そうにコチラを見つめる愛しい人…
本当、貴方……きちんと熟睡できているの?
「ごめんなさいね…少し夢見が悪くて……起こすつもりはなかったのだけれど」
「貴様の温もりが離れたのでな…いくら気遣って抜け出したとしても無駄と言うものだ」
「あら、可愛らしい事を言ってくれるのね…ふふっ」
流れるように腰を抱き寄せられてそのまま優しく髪にキスをされて苦笑。
嗚呼、誰があの威厳溢れる始祖王がこんなにも一人の人間を愛していると思うだろうか…
そんな自惚れじみた考えを抱きながら、ベッドの時と同じく彼の腕の中で瞳を閉じた。
「花子…悪夢を見ると言ったな」
「あ……ええ、そうなの…だからこうして、」
「気に喰わない」
「え?」
何度も優しく頭を撫でられて心地よさにうっとりとしていれば不意に問われた質問に何の考えもなしにそのまま答えればどうしてかとても不機嫌な瞳が私を射貫く。
そしてふわりと浮かんだ体に自身が王に本当に姫そのものな抱き上げられ方をされているのだと認識してしまえばどきりと胸が跳ね上がる。
ねぇカルラ……私、まだ貴方にこうして突然砂糖菓子のように甘やかされてしまうの慣れていないみたい。
「花子……貴様は始祖王である…最愛である私の腕の中で眠っていたと言うのに幸せな夢はおろか、ましてや悪夢を見ただと?」
「……仕方ないじゃない。夢までは私もコントロールできないわ」
「気に喰わない……やり直せ」
「ふふっ、素直にもう一度一緒に寝直そうって言えないの?」
スタスタと私を抱いたまま再び足早に寝室へと戻る彼がおかしくて可愛くて…それでいて愛おしくて
思わず腕の中で小さく笑えばそんな彼の眉間に少しだけ皺が出来てしまった。
そうよね……貴方は真剣に心配してくれて、真剣に私が最愛の腕の中なのに悪夢を見たことが気に喰わないものね。
「ほら、花子……夢のやり直しだ」
「ええ、けれど……」
寝室に着くや否やそっとベッドへと降ろされて
カルラも一緒にベッドのシーツへと潜り込んでぎゅうとそのまま私の体を抱き締めてくれるけれど
私はやっぱりまだ先程見た悪夢が恐ろしくて眠るのに躊躇してしまう。
きゅっと彼の寝着を縋るように握って少し震えてしまえば落とされる瞼への二つのキス。
どうしたのだろう…魔法にかかったみたいに体の力が抜ける。
「花子、私は始祖王だ…二度も同じ失態は起こさない」
「しったい……?」
「嗚呼、貴様を襲う悪夢は全て私は消し炭にしてやろう」
「なぁに?それ……とても物騒……悪夢よりカルラが恐ろしい」
うつらうつらと彼からの優しいキスを受けた後微睡へとゆったり墜ちていけば
頼もしすぎる台詞に思わずふにゃりと笑ってしまう。
嗚呼、そうね……私の最愛は始祖王様だもの…悪夢なんてきっと全て、消してくれる
「ね、カルラ……もっとぎゅうってして?」
「嗚呼、他ならぬ貴様の頼みだ……聞いてやろうな。」
物騒すぎる、絶対的な安心感の元…すぐにでも夢の中へと意識を落としてしまいそうなのを必死に堪えて最後のお願いを紡げば
愛おし気に微笑まれて願いそのまま強く強く抱き締められてそのまま「ありがとう」とだけ呟いて瞳を閉じた。
嗚呼、本当に…
夢のやり直しは怖い夢なんか見る気さえ起きない
だって私を強く強く包んで守ってくれているのは偉大なる王で頼りになる最愛だ…
二度目に見た夢は
夢の中だと言うのに最愛に抱きしめられて穏やかに二人で眠っている夢でした
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