デブまっしぐら


血を吸っては寝て




晩餐を食べては寝て




と言うかいつだって四六時中爆睡で…





私はそんな彼の将来を身体的に心配してやまないのである。





「シュウ君さ、今からそんなだと将来デブまっしぐらだよ?」



「は?」





今日も今日とてソファで健やかにすやすやタイムの最愛をじっと見つめながら
普段ずっと思っていたことをぽつりと呟けば寝てたはずなのにその瞳を開いてこちらをジトリと見つめちゃう彼は普段より少しだけ怖いかもしれない…




「だーってさ、食べた後や吸った後すーぐこうして寝ちゃうでしょ?と言うかいつも…今はさ、肉体年齢的に若いから代謝いいから大丈夫なんだろうけどさ…」




「……………何が言いたい訳?花子」




少し怖いけど、普段は開いてくれない瞳を開けてくれたのだ
構ってもらえると判断した私はのしっとシュウ君の上に覆いかぶさってタラタラと普段の怠惰仕切った彼の生活態度を並べてその後は流石にもごもごと口ごもる
流石にこれ言っちゃうと怒っちゃうかなーって思うけど…でも心配なのは心配だしなぁ




なんて胸の内で葛藤をしていれば煮え切らない私の態度にイラついた彼が
少しばかり低くて速い口調で言葉の続きを催促したのでこれ以上戸惑っていれば逆に彼の機嫌を損ねてしまうと思い
思い切って彼の触り心地のいい腹をふにっと抓んで一言





「このままじゃ中年太り吸血鬼爆誕だよ?」




「……………………」





数秒、部屋一体に沈黙が流れてしまうが私は漸く自身が思っていたことを言葉に出来てスッキリ。
だって今のシュウ君の生活態度、誰がどう見てもヤバいでしょ。
食べる、吸う以外は爆睡。晩餐は彼らにとって嗜好品程度だって言うのにお父様の言いつけで毎日レイジ君がおいしいもの作ってくれて逆巻の皆はちゃーんと残さず食べてる…
更には彼の好物はレアステーキ……カロリーの大魔王だ。




まぁ甘いものが苦手ってだけまだ救いはあると言ってやりたいが
それを引き算してもコレである……今は肉体年齢ピチピチの19歳かもしれないが
こんな生活続けて彼のお父様位の年齢にでもなってみろ…絶対に下腹出て大層醜い姿になる事間違いなしだ





「まぁ私は下っ腹出てるシュウ君でも愛せるけどー……」




「………随分言ってくれるな花子」




「うえ?」





ふにふにと彼の腹を弄びながらぽつりとつぶやいた言葉…
その後に「やっぱり貴方の健康を考えると心配だよ」と続けたかったのに
それは彼の言葉に遮られ、視界はぐるんと反転してしまい背中に大量の汗が流れる





…………いやいやいや、こんなお約束な展開認めるか





「俺の将来の下っ腹の心配してくれてありがとう花子……流石俺の最愛だな」



「わ、わぁ…言葉はすっごく優しいのに綺麗なほっぺに青筋浮かんでるよシュウ君」




先程まで私が彼の上に乗っていたのにあっという間に形勢逆転
ソファに組み敷かれてニッコリ笑っているのに頬に青筋を浮かべている彼の表情を見つめてこれから何されちゃうかなんて馬鹿でも分かっちゃってあわあわと弁解しようにも
手首をぐっと抑えられちゃって身動きが取れない。





「いやいやいやベタ!ベタすぎるよシュウ君!!恥ずかしいと思わないの!?」




「ベタと王道は紙一重だろ花子がさっきから失礼な言葉並べるのが悪い」




「すっごい!すっごい言い訳された!!!まってまってマジでスるの!?」



ちゅっ、ちゅっと首筋に唇を落とされてもはや絶体絶命
確かにこのままだとデブになるよとは言った!言ったけども…!
もうどうする事も出来ずにこれから起こるであろう事を察して顔を赤らめていれば彼はニッコリと
とても柔らかで……それでいて最高に真っ黒な笑顔を浮かべてこういうのだ





「俺が将来デブにならないよう……運動、付き合いなよ?」






それからの記憶はほぼない……
意識を戻した時に全身が痛すぎて起き上がる事もままならなかったという事くらいしか






後日…





学校でちょっぴりいつもより自分で歩いちゃうシュウ君を見かけて
逆巻、無神両家で何事だと大騒動になってしまったのはまた別の話…





シュウ君、
もしかして私にデブになるよって言われたの…気にしちゃってたのかなぁ
なんて





そう考えるとあの日、
記憶が飛んでしまうまで激しく抱かれた事も別にいいかなぁと許してしまえる…
嗚呼、私って本当につくづくシュウ君に甘いみたいだ。



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