永遠と一目惚れ
きっと俺を遺して逝くあんたに
俺なりの最大の愛を
「す、すごい!こんなの御伽噺だけの出来事だと思ってました!」
「俺だってこんなの初めてだし……と言うかだっる」
「あっあっ、ごめ……ごめんなさいシュウさん私がボヤいたばかりに」
目の前にはキラキラと目を輝かせる最愛、1000本の薔薇、そして満身創痍な俺
いつも寝てばかりの俺にとって今回の事はかなり重労働だった……
「まぁ、いいんじゃない?いつも俺の世話してるんだし……今日くらい花子の願いが叶っても」
「え、どうしたんですかシュウさんいきなりのデレとか怖いこの後別れ話ですか今日私誕生日なのに!」
「うるさい」
「痛い!御褒美!」
珍しく俺が素直に花子の願いをこうして叶えてやったらこの態度。
それだと俺がいつもいつもあんたの言葉に耳を貸さなかったり愛に答えてないみたいじゃないか
…………まぁ、実際俺が応える隙さえ与えずこいつがぎゃんぎゃん愛の言葉のマシンガンを撃ってくるから応えてないと言えば応えてないかもしれないけれど
それでもそんな心外な事を言われてしまっては俺も不服だからごちんと1発、彼女曰くお誕生日様の頭にげんこつを降らせれば帰ってきたぶっとんだ喜びの言葉
…………本当にその俺になら何をされても嬉しいスタイルそろそろ変えないと周りからド変態に見られるぞと心配するが直そうとしない。
今日は花子の誕生日。
普段文句も言わず、というか喜んで俺の周りの世話をしまくってレイジに「甘やかすな」と叱られ続けてる花子がぽつりと零した言葉
『こう、誕生日に1000本の薔薇とか一度貰ってみたいなぁ……ロマンティック』
花子の愛の言葉のマシンガンが五月蝿すぎて眠っているふりをしていたけれど、その言葉がやけに残っていて今日、彼女の誕生日に俺は花屋を走り回ってこうして1000本の赤い薔薇を差し出した
「ったく、少女思考も大概にしなよ幾つだあんた」
「私は永遠の16歳ですよ女性に歳聞かないで涙出てくる好き」
「はいはい、知ってる。嫌ってほど知ってる……いいからホラ、受け取りなよ」
勝手に俺がその日の言葉を覚えていてこうして捧げていると言うのにいつもの調子で恩義せがましく大きな溜息を付いてそう呟けば彼女も俺の性格を知ってか知らずか全く起こるそぶりも無く、寧ろ隙を見て愛を紡いできやがるからそのまま溜息が止まらない。
最後にもう1度溜息をついてずいっと1000本の薔薇を差し出しそこで少しの意地悪。
1本……たった1本だけそこから抜き去ってそのまま彼女に999本を押し付けた
「うおおお!やっぱり1000本となると迫力ちがう!あああ私今日だけお姫様みたいシュウさんありがとう、だいすきっ」
「……………………あっそ」
押し付けられたそれを1000本だと思い込んではしゃぐ花子に小さく笑って後ろ手に隠した1輪の薔薇をきゅっと握る
あんたに渡したのは999本
何度生まれ変わっても愛しますと言う花言葉を馬鹿で愚鈍で呑気な花子は知っているだろうか……
そして俺が握っている1輪の薔薇は一目惚れ
人間である花子の寿命はとても短い
今日もまた死へと1歩近づいたと言うのに呑気な馬鹿は目の前で嬉しそうにはしゃいでいる
きっと花子は俺を遺して逝く
けれど俺は彼女が想像している以上に花子を愛していて、もう離したくない……
ただ、花子が俺に言葉を紡ぐ、態度を示す隙を与えてくれないだけ
だからせめてこういう形であんたに愛を示させて欲しい
「永遠と、一目惚れ」
「?シュウさん?」
「何でもない。それよりその薔薇どうすんの?保管までは俺は手伝わないからな」
「ああ!そこまで考えてなかった!」
ぽつりと呟いた言葉に反応を示した花子に誤魔化すような言葉を掛ければ返って来た花子らしいとんでもなく間抜けな台詞に思わず小さく噴き出した
俺は愛しい愛しいあんたを死んだからって離すつもりはない。
何度生まれ変わっても見つけてまた愛する……その時にこの1輪を薔薇をあんたに捧げよう
きっと思い出を覚えているのは俺だけで、あんたは全て忘れて新しく生を得るから……その時に、一目惚れって名目であんたに愛を紡ぐよ
何度も一から繰り返す覚悟なんざとうに出来ている
「シュウさんシュウさん、だいすき!愛してる」
「あー、はいはい……俺もだよ」
いつだってとことんまで俺を甘やかして愛する健気なあんたに返せるものはきっとこれくらいの覚悟しかないと思うからどうか
何度生まれ変わっても、1からでいい
その度に俺に愛されて欲しい
きっと俺を遺して逝くあんたに捧げる俺の愛
あんたなら気付いても受け取ってくれるだろうけど……それだと気恥しいからこうして静かに差し出すよ
彼女の傍で999本、俺の手で1本
赤い薔薇がふわりと柔らかな風に揺れて優しく笑った気が、した
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