愛しくて、しあわせ


「ほら花子、はやくしなよ……口開けてるの怠い」



「う、うう……はい、シュウさん…あーん」




「ん、」




彼が大きく口を開けて待ち、そこに私がおいしい料理をそっと運んであげる
これが私と彼…愛しのシュウさんとの食事中、恒例な光景ものとなっていのだけれど…




うう、いつだってこういうの周りの視線が痛かったりするんだ
何処のバカップルだってさ……けれど私の心理はもはやバカップルと言うかおじいちゃんの介護だ。最愛だけど



シュウさんは自他ともに認めるウルトラ無気力ダル男マン。
それに加え、吸血鬼である彼にとって血さえあれば食事なんて必要ないからそのダル男っぷりはここぞとばかりに発揮されてしまう。
けれど人間の私はやっぱり最愛とこうしてご飯を食べたいから全く動こうとしない彼に必死にスプーンを運んでやっているのだ。







「不服そうな顔だな花子。俺が態々こんな戯言に付き合ってやってるってだけありがたいと思いなよ……あ、」




「まぁ確かにそうですね…こんな面倒な事にちゃんと起きて口開けてくれてるだけで愛されてるって実感します…あーん」







たまには自分でスプーンやフォーク使って食べてくれと言う気持ちが顔に出ていたのか
彼の発せられた言葉を聞いて苦笑しながらも変わらず彼の口へと食事を運ぶ。
確かに日頃の彼の行動を見ていればこうして自身になんの得もない事に一々付き合っている時点で相当優しいのだろう…




チラリと私の手から運ばれた食事を頬張る彼の表情を見つめる
するとあれだけ恩着せがましく仕方なく付き合ってやっているんだ的な事を言っている割には纏っている空気が柔らかい
全く………嬉しそうな顔しちゃってさ






「はーい、シュウさん次これですよーあーん」




「あー……って何嬉しそうな顔してんの?俺に餌付けするの楽しくなっちゃった?」






嬉しいのはどっちなんだか
彼のそんな表情を見つめ、自身の顔もふにゃりと緩めれば
からかいがちにそう言ってきちゃうシュウさんにひとつ苦笑
どうやら自身の表情に自覚がない様だがそれは私にも同じことが言えるだろう




きっと今の私の顔はだらしなくゆるゆるなんだろうなぁ…





「いやぁ、彼氏の介護は楽しいなって」




「おい花子、誰が介護だ誰が」




「ああ、ほらほらシュウさんレアステーキあーん」




「あ」





思わず出てしまった言葉にちょっぴり眉間に皺を寄せちゃった彼のご機嫌を取ろうと手近にあったレアステーキを差し出せば条件反射的に口を開けちゃうシュウさんに思わず噴き出してしまう。
嗚呼もう、なんだかんだでこの介護、もとい餌付けが身体にまで定着しちゃってるシュウさんが愛しくて可愛い





「えへへ、シュウさん食事楽しいですね」




「さっきまで俺の餌付け嫌がってたくせに…女ってよく分からない」






彼の言う通りさっきまでこの羞恥プレイと言うか介護プレイに少々げんなりしていたけれど
それもシュウさんの嬉しそうな表情を見ることが出来て今や私はこのあーんを幸せに感じてしまう。





「はーい、シュウさん…あーん」



「あー」




きっとこれからもこうやってシュウさんは私の我儘に応えて
私は彼のおくちへあーんして、お互いふにゃりと笑う




嗚呼、なんて幸せで愛おしい時間



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