気遣い彼女
俺様の女、花子はいつだって臆病で控えめで…
正直見ててイライラする事が多い
彼氏である俺様にさえ何か気ぃ使って隣歩かずに三歩くらい下がって付いてくるし
いつだって顔色伺ってきてるのが見え見えだ……
「なーんか違げぇんだよなぁ」
俺様を崇め奉る信者とか子分なら申し分ないけど花子は俺の女…彼女なんだ。
なのにこうしていつまで経っても対等じゃねぇっての、正直面白くねぇ。
「あー……花子が餌の時代が懐かしいぜ」
あの時は満足していたこの距離感。
けど最愛として見るようになってからそれが酷く遠くてもどかしい。
花子、俺様の事……まだ、最愛って認めてねぇのか?
そんな考えがふと過ってしまえば
自然と彼女の部屋へと足を向けていた。
この時間、花子は眠ってるだろうがでもやっぱ確かめてぇ…
花子……俺様の事、どう思ってんだ
「おい花子!」
勢いよく彼女の部屋の扉を開けても返事は返ってこない
当たり前か……寝てんだもんな。
でも今そんな彼女の事を気遣う余裕なんてねぇ
だってもし花子が俺様をちゃんと最愛として認めてねぇってなら
自身を捕食するもののメイレイとして仕方なしに付き合うって事にしたのかもしれねぇもん
それは……それは何か違う気がする
「おい、花子。花子、起きろ。アヤト様のお越しだぞ」
ベッドで眠っている彼女の傍まで寄ってゆさゆさと大きく身体を揺らせば
微かに唸り声が聞こえるけど一向に起きる気配はない。
そう言えば花子……寝起きが死ぬ程悪いって前言ってたっけか
「っだぁぁ!今はんなもん関係ねぇ!花子ー!!!お前に聞きたいことが…っ!!?」
ガシッ!
と言っても大分前…花子を愛してるって自覚する前だって何度も何度も寝込み襲ってる時だって
只々ぼんやりと俺様の名前を呼ぶ程度だったから別に何も問題もねぇだろって思ってペチペチと頬を叩いた瞬間
俺様の頭がミシィ!っと何かに締め付けられる感覚を覚えた
何事かと思って頭上に視線を向けるとそこにあったのは
いつも控えめに俺様に縋ってくる小さな手がギリギリととんでもねぇ力で頭を鷲掴んでいたのだ。
「は、はぁ!?チョ、オイ花子!!はな…っ」
「煩い」
「え」
慌ててその手を離す様に再度花子の方へと視線を戻し
鋭く睨みつけるが普段とは想像もつかない低すぎる声と、まるで地獄の門番のような俺様なんかより比べ物にならない視線で射貫かれ思わずビシリと体を硬直させていしまった。
あれ、俺様の花子ってこんな魔王みたいな怖え顔してたか?
「おい花子、」
「さっきからぎゃーぎゃーとなんなんだ私の睡眠邪魔して……何様なんだ俺様か調子乗るのも大概にしなさいよ」
「や、その……聞きたい事」
「あ?」
「ひぃ!!」
いつもの控えめな花子は一体どこに行きやがった状態でさっきから俺様に突っかかってくるっつーか威圧してくる彼女は正直レイジなんかより数百倍も怖い
現に俺様背中に嫌な汗がぶわっと出てきちまってキモチワルイし…
けれどここで気圧されっ放しだと駄目だと思い今日此処に来た理由を紡ごうと
少しばかり目の前の寝起きで豹変しきってる最愛にビビりながらもそっと言葉を紡いだ。
「花子、俺様と付き合っても気ばっかり使いやがるから…その、本当は俺様の事好きじゃねぇんじゃねぇかって……俺様が怖いから無理矢理付き合ったんじゃねぇのかって…」
「貴様たこ焼きにするぞ」
「なんでだよ!!って、うお!?」
らしくなさすぎる小さな声色で漸く呟けば返ってきたのは相変わらず鋭い眼光と辛辣な言葉で
思わず身を乗り出して掴みかかろうとすればぬっと伸びていた彼女の手に捉えられてあっさりとベッドへと引きずり込まれてしまった。
そしてそのままボスボスと何度も強めに頭を撫でられるっつーか叩かれるって言うのに近い感覚で宥められちまって俺様ポカーン。
「気使ってる相手に私こんな姿見せないし……前アヤト君が寝起き忍び込んできたときこんなんじゃなかったでしょ?」
「あ?嗚呼……確かにそうだけどよ」
「私は私なりに気、許してるから……不安にならないで良い。私は私の意志でアヤト君と付き合ってる」
いつもより数段低い声で、不機嫌そうにそう呟く彼女に何故か俺様の胸の奥が軽くなった気がした。
花子は花子なりに気を許してくれてる………そうか、なら……なら、このままでいいのかもしれねぇ。
「つー事はこの怖え花子も俺様限定って事か……ククッ」
「ん、そう……だから今度寝起き襲ったらその首跳ねるからな」
「ちょっ!いくら何でも物騒すぎるだろ!!!!っていでででででご、ごめん!悪かった煩くして悪かったって!!だから髪を引っ張るないってぇぇぇ!!!」
別に急に距離を近くって思ってる訳じゃねぇ
只少し不安だった……気を遣われすぎてもしかしたら自分の意志に反して俺様の傍に居るんじゃねぇかって
けど違うなら……こうして気を許したあてのみに見せる姿を見れてるんなら
ちーっとばかし気の許し方が物騒な気もするけどまぁ…暫くはこのままでもいいかもしれねぇ………なんて
深夜3時過ぎ…いつも大人しい筈の最愛に全力で髪の毛を引っ張り上げられながら
安心して笑みを浮かべちまう自分がらしくなさ過ぎて笑えちまう。
(「ったく……こっから先もっと気を許したらもっと怖え花子が出てきそうで不安だぜ」)
(「………………」)
(「いででででで!わ、悪かった!!可愛い花子も出てくんもんな多分!!分かったから頬抓んな!!!つかお前ほんっと寝起き凶暴だな!!今までどんだけ寝起きも気使ってたんだ!!」)
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