愚鈍な花占い
好き、嫌い、好き……
好きな人が出来たらこういうの、やってみたいって思ってた。
私の手には一輪の真っ赤な薔薇。
その花弁を一枚、また一枚と取り去って呟くは“好き”と“嫌い”
この花を選んだのは私の想い人に少し似てるなって思ったから。
とても気高くて偉大でそれでいて愛しい彼…
「花子、貴様花弁を弄んで何をしている」
「あ、カルラさん!ええと、花占いしてました…」
プチプチと花弁を取り去りながら呪文のようにブツブツと呟いていれば背後から愛しい声が聞こえて思わず表情を緩めてしまう。
嗚呼、けどこんな所あまり見られたくなかったかも…少し恥ずかしい気がする。
私の愛しい想い人は彼……
偉大なる始祖王…只の人間な私が釣りあう筈の無い人……
けれど恋をするのだけは自由だと思い、こうしてひそやかに彼を想ってる
だからこの花占いの相手は勿論ナイショ
きっとばれてしまったらこの恋心さえ彼に潰されてしまうだろう
ヒラヒラと未だに花弁の多い薔薇を揺らして微笑めば
カルラさんは数秒じっと見つめた後「続けろ」と、それだけ言葉を紡いで隣に座ってしまう。
ううう、いつもならこうやって好きな人が傍に居てくれるの嬉しくてはしゃいじゃうけど今日は酷く緊張しちゃうなぁ…
だって今私は「カルラさんは私の事を」って心の中で唱えながら花弁を摘んでいっているのだ
「花子、私は続けろと言っている。」
「!あ、は、はい!そうですね!!ええと、好き……き、きらい…すき」
じっと見つめられ、占いを中断していれば少し低い声色でそう窘められて
本人同席の元、よく分からない緊張感の中花占いは再開された。
ずっと憧れてた、こういう乙女チックな事…
只、するにしてもそう言う想い人が今まで居なかった訳で。
そう思うと初恋相手が始祖王とか最高にハードルが高い
初恋は叶わないとよく言うけれど
私もきっとその例に漏れず、失恋してしまうのだろう…
だって彼が王で私は只の一般人
種族も地位も全てにおいて天と地以上に差があるのだ
けれど
それでも、彼に抱く愛は薄れる事はなく未だに胸の奥で存在し続けている
きっとこの想いも伝える事は出来ないままいずれ風化してしまうのだろう…
酷くそれは哀しい事だけれどどうしようもない
だからこうして、ずっと憧れていた事を一人で実行して彼を愛していると言う思い出作りをしたかったのだ。
「好き、きらい……すき、きらい」
「…………」
いつかは忘れなければいけないであろうこの気持ちを乗せてプチプチとゆっくり花弁を摘んでいく
嗚呼、せめて花占い位はカルラさんと両想いになりたいなぁ……なんて淡い想いを抱きながらもその手を止めずにいれば
不意にその薔薇に黒い影
ぶちっ
「えぇ!?」
「飽きた。花子、貴様…タラタラと下らない事を続けおって……暫く戯れに付き合ってやろうと思ったが限界だ」
「だ、だからって花ごとちぎっちゃいますかねぇ!?」
感傷に浸ってゆっくりと花弁を摘んでいれば
そんな私に痺れを切らしたカルラさんが無造作に花自体を鷲掴みにしてそのまま引きちぎっちゃったから思わず大きな声を上げてしまう
え、ちょ、どういう事!?
わ、私は花占いさえ楽しめないって事なのか!
余りにも突拍子の無いカルラさんの行動に固まってしまっていると
ぐいっと手を引っ張られてそのまま何処かへと連れていかれてしまう…
「あ、の……カルラ、さん?」
「花子の臆病さ加減にもほとほと痺れを切らした……貴様に私の気持を教えてやる」
「いやちょっと何言ってるのか分かりません。私花占い強制終了させられてどこ連れてかれるんですか虐められるんですか」
「……………………この愚鈍め」
ぐいぐいと何処かへ足早に足を向ける彼に引かれて状況がよく呑み込めないままついて行けば辛辣な言葉をひとつ。
何なんだ今日はなんて日だ、花占い中にご本人登場でそれも彼によってとんでもない形で強制終了させられて今から何処かに連れてかれるし罵声まで…
ついてなさすぎる。
私はこの時、まだ何も知らない
「愚鈍は……カルラさんです。……私の気持なんか知らないくせに」
「…………私が本当に何も知らないと思っているなら貴様は愚鈍を通り越して逆に神だ」
「え?カルラさん今何か言いました?」
「何でもない、それより早く行くぞ愚図が」
「愚鈍の次は愚図とか泣きそう!そろそろ泣きそう!!!」
彼がとうの昔に私の気持に気付いている事なんて…
今向かっている先がそんな彼の部屋だと言う事なんて…
そして先程の花弁の数が偶数だったなんて
「カルラさん、あの、ほんと、ちょっと今日意味わかんないんですけど!!」
彼が途中で花ごと引きちぎったのは私の「嫌い」と言う言葉の後だったという事なんて…
それが
彼が私に伝えた遠回しの「好き」と言う言葉だったなんて…
初恋は叶わないと
勝手に諦めていて、カルラさんの気持ちさえ確認する事をしなかった
彼曰く愚鈍で愚図な私はこれから起こるであろう最高に幸せな時間をまだ何も知らないでいる
(「全く……告白もしてこないと思っていれば偶数の花弁で花占いだと……?私にそこまで嫌いと言わせたいのか花子め」)
(「カルラさん、また何か言いました?」)
(「貴様の耳は何か詰まってでも居るのかまずその耳の穴を反対側まで貫通させてやる」)
(「ええ!?ちょ、もしかして今から私拷問されちゃうんですか!?」)
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