胸の奥の温度


いつもいつも私が彼の周りに嫉妬するばかり
始祖王様なんだから沢山の始祖を崇拝するひと達に慕われるのは当たり前なんだけれど…




当たり前なんだけど……





「たまにはカルラさんが私に嫉妬してもいいと思う!!」




「うっわ、めんどくさい思考だねそれ…流石下等な人間らしいというかなんというか」




「煩いよシン君!!そのめんどくさくて下等で愚かでゴミみたいな生き物を恋人に選んだカルラさんのセンスを遠回しに貶してる訳!?言いつけるよ!?」




「わ、わぁぁ!花子のその考えわかる!!だよね、最愛にはちょーっと位妬いてもらいたいよねぇ!!」




今最愛は所用でいない特別教室で、彼の弟を前に
ダンダンと机を叩き嘆けば相変わらず私を見下し切った言葉を投げかけるので
こちらも切り札それを言ってしまうと貴方の崇拝する兄さんのセンスが悪いって事になるぞを叩きつければ
慌てて愚かな態度を訂正しちゃう彼にもはや勝利宣言しかない。




シン君を大人しくさせるには最愛であるカルラさんの名前を出すのが一番だ。




「でもさぁ……あの兄さんが誰かに妬くとか想像できないっていうか……そもそも花子モテないし」




「其れだよね……んん、でも私も言ってみたいんだよあのセリフ」




うんうんと頭を抱えて、いつだって人望と美貌溢れる彼によって来る美女に
嫉妬むき出しの私同様たまにはカルラさんにも嫉妬してもうにはどうすればいいかを知恵を絞りだそうとする。




いつだって私は彼の周りに嫉妬してしまって
それが私だけっていうのが何だか不公平に感じて不満なのだ。
それに………それにいつもそんな私に言ってくれるあのセリフを彼にも言ってみたい。





『私の最愛は花子、貴様だけだ………無用な嫉妬はいただけんな』




あの言葉、いつだって聞くたびに彼のトクベツは私だけなんだと
胸の奥が温かくなってすぐにご機嫌になる。
そしていつだって思うのだ…、この気持ちをカルラさんにも味わってもらいたい。
私のトクベツも貴方だけだって伝えたいと…




「ま、それもこれもまずカルラさんが私に嫉妬してくれるところからなんだけどー………おお?」




まずそのきっかけとして彼に嫉妬してもらわないといけないが
それが難しいのも分かっていると溜息を付きながら今日買ってきた雑誌をペラペラとめくっていれば目に入ってきた見覚えのありすぎるキラキラアイドルがひとり
こ、これは……!これはいけるんじゃないか!?




思わずいける!と大きくガッツポーズをとれば
ビクリと目の前のシンくんが体を揺らしたけれど関係ない。




そうだ!そもそも私みたいな平凡な人間が誰かにモテるわけないし
カルラさんと同じシチュエーションで嫉妬してもらおうと思っても絶対に無理!!私モテないし!!
だったらもはや一抹の希望を抱いて仕掛けるとすればこれしかない…!




一人で意気込んでその日は早めに特別教室を後にした
嗚呼、楽しみだ……これできっとカルラさんは妬いてくれる
そして私も彼みたいな台詞を言ってトクベツだって伝えることが出来るんだ!!








「ん?花子……今日は珍しく何かを聞いているのか?」




「え?ええ!そうなんです!!最近彼にハマってて〜……キラキラしてかーっこいいですよねっ!!」




次の日の特別教室
今日はカルラさんも一緒に居る事が出来ていつもの私なら大喜びで彼にべったりくっついて離れないけれど
今は少しばかり彼から離れた所で彼の心地いい声ではなく、プレイヤーでとある音楽を聴いていた。
すると普段彼と一緒の時ではありえない私の姿に興味を示してくれたカルラさん自ら声をかけてきてくれて胸の中で大歓喜。
いける!これはいけるぞ花子!!


彼の反応にわざとらしくすり寄って、今聞いているアーティストの雑誌、
昨日見ていたものをカルラさんの前にずいっと差し出してにっこりと微笑みを浮かべた。




「今をときめくスーパーアイドル、無神コウ君です!!いやぁ、彼すごく格好いいだけじゃなくて歌も素敵で……もう惚れちゃいますよね!!」



「……………」



そう、私がカルラさんのように誰かにすり寄られたりとか人が集まったりとかはまずない
だとしたら残る方法は私自身の好意が彼以外に向けられるという設定を作り出すだけだ。
これが他の一般学生なら本当の心移りだと誤解を招きかねないがこのアイドル君だったらただのミーハー的な好意だと後程言い訳も付くし一石二鳥。
ま、その分嫉妬してらうには今一つパンチに欠けるが本格手に誤解されて修羅場になってしまうよりマシだ…





そう思っていたのだけれど





「か…………カルラさん?」




「ふむ…………………」




じっとそのキラキラ雑誌を数秒見つめていた彼が何を思ったのか
カタリと静かに席を立ち、扉の方へと歩いて行ってしまったので思わず唖然としてしまう
あ……あれ、やっぱりアイドルにきゃーきゃー言うくらいだとちょっと弱かったのかな
まぁ確かにカルラさんは偉大な始祖王様だから私みたいな人間のミーハーな好意位ならなんとも思わないか…
んん、カルラさんに嫉妬してもらおう作戦……失敗かなぁ





「カルラさん、カルラさん、どこ行くんですか?」




自分としてはナイスな作戦だったと思ったのだが、彼相手だと聊か浅はかだったのかと
ガックリと肩を落とし彼の行く先を訪ねれば、カルラさんは何事もないように振り返りとんでもない言葉を投下されてしまう。





「嗚呼、その無神コウとやらを消しに行こうと思ってな」




「ふぁ!?」




本当に……本当に何でもないことのように落とされたその言葉に思わず妙な声をあげてしまったがそこでようやく思い出した
そうだ!カルラさんは偉大で聡明な始祖王様だけれど案外怒りの沸点が低いんだった。





「まってまってまってカルラさん嘘でしょちょっと滅茶苦茶怒ってます!?」




「いや、怒って等いない私が居ない間に別の男に心変わりしていた売女の仕置きは後にしてまずは諸悪の根源を絶たねばと思っているだけだ」




「めっちゃくちゃ怒ってんじゃないですか!!!というかちょっとアイドル君格好いいって言っただけでこんなんなっちゃうんですか!?カルラさん私の事好きすぎなの!?」




「今更だろう」




大慌てで彼の腰に抱き着き全く罪のないキラキラアイドル君の命を守ろうと必死に説得を試みようとするが
予想外に滅茶苦茶怒っている彼にもはや私はパニックだ。
ちょっとカルラさん、私ただアイドル君格好いいって言っただけでこうなっちゃうとか聞いてませんけど!?




行かせまいと抱き着く腕にぎゅうぎゅうと力を籠めれば
それを彼の手によりそっと引きはがされじっとそのまま顔を覗き込まれてしまう。
嗚呼、こんな大パニックな状況なのにいつみてもその顔…綺麗で大好きですカルラさん。




「花子、貴様が私以外を見るのは許さない。貴様の唯一無二は私でなければならない。」




「え、あ………えっと、」




「返事はイエス以外は認めんぞ」




「は、はい!!」



彼の綺麗な顔に見とれていればそんな最高の殺し文句というかほぼほぼ命令みたいな言葉を紡がれて
最初の目的をすっかり忘れてしまう……あれ、私カルラさんに妬いてもらって
それからそのまま私のトクベツはカルラさんだけですよって言ってみたかった筈なのに………
そんな事を伝える前に彼は私のトクベツは彼自身以外は許さないと言う




嗚呼、もう……
自分勝手すぎる王様のお陰で私の計画は滅茶苦茶だ





「なんだ花子、嬉しそうだな」




「えへへ、だって………」




自身の計画を台無しにされたにも拘わらず
彼のそんな言葉が酷く嬉しくてふにゃりと表情を和らげればカルラさんはその綺麗な顔をくたりと傾げるので
思わずそんな彼の頬にそっと唇を落としてしまった。



「そうですね、私のトクベツはカルラさんただ一人です」



「………嗚呼、それでいい」




そして昨日考えていた流れとは全く違ってしまったが
伝えたかったその言葉をようやく紡げばカルラさんの表情もふわりと和らいでくれたので
こちらの表情も更にだらしなく緩んでしまう。




あ、もしかして今……カルラさんの胸の奥も
いつも私が嫉妬した後に彼が紡いでくれた言葉を受け取ったときみたいに温かくなってるのかな





ふいに、そんな彼の胸元に手を当ててみれば
体温がない筈なのにどうしてか温かく感じることが出来てもう私の顔の緩みは止まらない。




「ふふっ、トクベツです」




その私の言葉にまたふわり
手を添えた彼の胸が温かく、感じれた気がした





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