崩れた女


優しく私の肌を弾く指



敏感な所をねっとりと這う舌…





耳元で囁かれる淫靡な言葉……




嗚呼、貴方と想いが通じてからこんな夢しか見ない…
私はなんて淫乱で愚かな生き物なのだろう…そんなの、絶対に認めたくない。




「…っ、」




真夜中0時……いつもの様に勢いよく目を開いて何も言葉を紡ぐことないまま夢の世界からの離脱。
ガバリと身体を起こしてこれまたいつもの様に昂っている身体を鎮めるようにぎゅうと自身で抱き込めば
すぐ隣でもぞもぞと動きゆったりと瞳を開けてしまった最愛に罪悪感と後ろめたさでびくりと揺れてしまいひとつ、汗を流した。





「んぅ……花子、どうした……眠れないのか?」



「う……ううん、平気だよシュウ……だい、じょうぶ…」




紡がれる言葉は純粋に私を気遣ってくれている言葉なのに
その声色が先程の夢とリンクしてずくりとまた体が火照りだす。
嗚呼、もう……私はシュウの優しい気持ちにまでこんなに反応してしまうの……?




「ちょ、っと……外の空気吸ってくる、から…シュウは先に寝ててよ…」



「…………」





リアルで彼の声を聴いただけですっかりソノ気になってしまった体をどうにかしようと
必死に笑顔を取り繕ってそそくさとキングサイズのベッドから飛び出した。
私の背中を彼がどんな表情で見ているかは分からないけれど…今は一刻も早くこの火照りをどうにかしたい。






嗚呼、私は彼と想いが通じてから淫夢しか見れてない…






「はぁ……もうやだ。なにこれ。」




バルコニーで昼間よりかは幾分涼しい風に当たって長い溜息。
やっぱりそう言う夢を見ていて、現実のシュウの声を聴いて私の身体は治まらず下着も……その、濡れていて
シュウと両想いになってはしゃいでいる暇もなく私はこの毎日見る厭らしい夢に悩まされては独り、こうして長い溜息を付くばかりだ。




「んん、シュウ………」





『花子、どうした………』




「………っ、」





こんな恥ずかしい事誰にも相談できないし…どうしようと思っていれば無意識に呟いてしまった最愛の名前。
するとまた反射的に鮮明に先程の声が脳内でリピートして響き渡りまた身体が一気に熱くなる。
嗚呼、どうしよう……私、シュウと両想いになってからおかしくなっちゃったのかな?






あの細くてしなやかな指で私の肌をなぞってほしい





低くて甘い声で厭らしい言葉を並べで責め立ててほしい





あの柔らかで温度の無い唇と舌で…私の厭らしい部分を嘗め回して貪り尽してほしい






「あ……ぁ、………あ、」




想いが通じ合ってからいつも思っていることが堰を切って溢れだしてきて
想像しただけでもう私は思考も顔も体も全てトロトロで…
もうその場になっていられずにへたり込んで息を乱しその熱を抑えつけようとする余裕さえなくなってしまう。





「シュウ……しゅ、あ……ぁ、んぅ……」




ペタンと座り込んだ床に再び潤い始めた秘部を擦りつければ痺れた快楽が全身を襲って虚ろな瞳のままもう一度彼の名を何度も呼ぶ
嗚呼、この冷たい床が彼の身体ならもっと…もっとキモチイイのに




「ん、ん、ん、……ぁう…シュウ、あ、ひ…」





コスコスと腰の動きを速めて床にぐりぐりと押し付けながら次第に声も大胆になっていく
嗚呼、違う……こんなの私じゃない。
私……こんな厭らしい子じゃないもの。




「や、やぁ……ちが、ちがう……やだ……やぁ…」




「何が違うんだ?」




「!?」




自分が今どれだけ卑猥な事をしているのかを自覚したくなくて……
これは私じゃない……きっと別人で私の意思なんかじゃないと何度も首を横に振りながらも火照った身体を絶頂まで上り詰めさせようとした瞬間に響き渡る私をこんなにおかしくさせる甘くて低い声…




「ぁ………」



「いつまで経っても帰ってこないと思ったら……バルコニーで床オナとはね……俺の最愛はとんだ淫乱女らしい」




「や、ちが……っ、違うの!」



「違わないだろ」



ビクリと体を震わせ後ろを振り返ればなんとも酷く意地悪な表情で私を見ていた彼に
限界寸前だった身体で必死に違うと弁解するも私の言葉は彼の少しばかりはっきりした言葉にすぐさま遮られてしまった。





「毎晩エロい夢ばっかり見て一人でこっそり抜け出してオナってるの俺が知らないと思った…?シーツまで毎回ぐっしょり濡らしちゃってさ……ククッ」



「え!?嘘…っそんな……」



「あんたがこうやって一人で処理してる間にいつも使い魔に新しいシーツ用意させてたからな……ホントに気付かなかったんだ。毎晩花子の愛液すごいんだけど?」



「………っ」




ゆっくり近づいてくるシュウの予想外の言葉に体だけじゃなくて顔も熱くてもう火が出てしまいそう…
心臓もさっきからバクバクと煩くてドキドキしすぎて痛いくらい…
嘘………シュウ、ずっと知ってたの?
私が……こんな事になってるって…



動揺しすぎて固まってしまっていれば不意に頬に触れた彼の掌にまた身体の熱が上がってしまう。
嗚呼、どうしよう……こんな触れられただけで……見つめられただけで…私




「ほら……、認めなよ。花子はどうしようも無く淫乱で卑猥で欲望にまみれた女だって…」



「や………やだ、違うもん…」



「俺に少し触れられただけでこんなに感じてるのに今更過ぎるだろ…」




すりすりと頬を撫でられるだけでじわりとまた体から厭らしいモノが溢れだす
嗚呼、駄目……こんなのが私だって認めてしまったら……




けれど先程シュウの乱入によって中断されてしまった身体は正直で…
自身の思考とは正反対にもっと触れてほしいともじもじと太腿を擦り合わせるばかり
嗚呼、シュウ……私、シュウに只優しく触れてもらってるだけなのにこんなにも厭らしい事しか考えられないの……




「ほうら……花子。………ホントは俺にどうされたいの?」




「あ…………」




そっと顔を大きな両手で包み込まれて息がかかるくらいの距離でそう問われればもう終わり
今まで必死に否定してこようと思ってきた私の意思なんてたやすく脆く儚く崩れ去る




「シュウ……シュウ……えっちしたい……シュウに沢山触れてもらいたい…いやらしい事沢山……ココ、ぐちゅぐちゅって掻き回して…あ、ぁ」




彼の一言でいともたやすく陥落してしまった私から出た言葉は本当はもっと早く彼に伝えたかった言葉
けれど羞恥とガチガチに固められた貞操概念がその言葉を紡ぐのを遮っていた…
なのにシュウの言葉は……瞳は、そんな全てをこんなにもあっさりと崩して無かった事にしてしまう。




「そう……それでいい。花子は俺に抱かれたくて仕方ない淫乱女……ホラ、此処で抱いてやるから……いい声、出せよ?」




ニヤリと笑った彼の瞳は恐ろしいくらいにギラついてしまっていて…
嗚呼、もしかしたら彼は私が打ち明けるまでずっと私を抱くのを我慢していたのだろうか……なんて自惚れた事を考えてしまうが
今はもうそんな事を問うている余裕なんてない。




「シュウ、シュウ……早く、早く触って、舐めて、突っ込んで……さっきイけなかったの……辛いよ」




「嗚呼、花子……あんたのその火照りを鎮めることが出来るのは俺だけだ…」




理性のカケラも崩れて失って必死に縋りついて懇願すれば夢なんかより…想像なんかよりもっと体の奥から熱を呼び覚ますような声色が響いてそれだけで達しそう…
嗚呼、シュウ……もう私、淫乱でも卑猥でも何でもいい……だから今すぐに私を逝かせてよ




解放的なバルコニー、月明かりの下
淫乱な女と男の荒い息遣いと、卑猥な水音だけが淫靡な音楽を紡ぎ奏でて響き渡る





そこにはもう、必死に理性に縋ろうとしていた私は居なかった






在るのは必死に男の身体から精を貪り
快楽を欲する只の厭らしくも欲望にまみれた女―



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