スーパーダーリン、彼女


俺はとっても格好良くて素敵な売れっ子スーパーアイドル!!!
沢山のエム猫ちゃんがこぞって俺を取り合ってとっても滑稽で笑えるけれど
それも俺の魅力がさせてるんだって思いと悪い気はしない寧ろもっと醜く争えばいい






なぁんて思ってたんだけどさ……





「嗚呼、コウ君どうしたのそんな重い物持って。貸してごらん、綺麗な手に痕が残ったらいけないよ」




「………………」




俺の手から自然に…本当にそれが当然だと言わんばかりに
流れるような動作で学校鞄を取り上げちゃった少し俺より小さな手に思わずじと目。
く……くそう!こんな…こんなはずじゃなかったのに!!




「ちょっと!そんなの普通に持てるし!!返してよ花子ちゃん!!」



「駄目だよ仮にもコウ君はアイドルなのに軽率に痕が残る行為なんて…」



「いやいやいやいや!!!俺背中とか傷だらけだよね!!知ってるよね花子ちゃん!!!」




手を伸ばして取り上げられた鞄を取り返そうとするも
それは取った本人がひょいと躱してしまって俺の手は虚しく宙を切ってしまう。
う……ううう、いつも…いつもこうだ…どうして花子ちゃんはいつもこうなんだよ…!




「もう!!俺の彼女がイケメンすぎて辛い!!!」



「あはは、大好きなコウ君に褒めてもらえるなんてとっても嬉しいな……嗚呼、そうだ。手、空いたんだし繋ごうよ。コウ君を私のモノだってたまには見せつけてもいいよね」




「ナニソレときめく好きにして!!!」




俺の心からの叫びに呑気に微笑んで答えながらも鞄を持っていない方の手を差し出しちゃう花子ちゃんは
紛れもなく絵本とかから出てきた王子様そのもので…




不覚にもイケメンスーパーアイドルとして名高い俺の乙女心がきゅんっと鳴って勢いよく自身も手を差し出す始末。





違う……俺の予定ではこんなんじゃなかった…






こうさ、可愛い可愛い虐め甲斐のあるエム猫ちゃんと
一緒に楽しくラブラブな毎日を…って夢見てた
あのお方の想いはきちんと叶えるけれどそれはそれ、これはこれとしてね?
なのに……なのに現実に俺の心を鷲掴みにしちゃったのは彼女だよ





「……?どうしたのコウ君、さっきから私の顔を見て…そんなに綺麗な瞳で見つめられると流石に照れちゃうんだけど」




「だったらもっと可愛く照れろよ!!!なんだその俺よりイケメンな照れ方は!!もういっそ男子制服着て来いよお前!!!」





じっと現在の恋人を見つめれば彼女は少し照れ臭そうにはにかみながらも
そっと繋いでいた手を離して優しく頬を撫でるから照れ隠しに酷い暴言を吐いてしまうけれど
それさえも困った表情で微笑みながら受け流してしまうからもはや俺がエム猫……というか雌猫になってしまいそうだ。





「全く……花子ちゃんてどうしてそんなに王子様なの?」



「ええ?ううー…ん、そうだね」




優しく何度も頭を撫でられながらも今まで疑問に思ってた事を口にする
どうして花子ちゃんは他の女の子みたいに可愛くないんだろう…
可愛くないからって別に特別ブサイクって訳でもない……格好いい
取りあえず格好いいんだ。




すると俺の言葉に数秒相変わらず困ったように微笑んだ彼女から
とっても……とっても可愛くてイケメンな言葉が出てきてしまって
また俺の乙女心は彼女にぐしゃっと鷲掴みされてしまった。




「コウ君に見合うような素敵な人になりたいなって思ったらこうなっちゃった…きっとコウ君がとってもとっても格好いいからだろうね」



「な、なんだその理由!!!可愛い!!でも努力する方向性が違うけれどさりげなく俺を褒める事も忘れない花子ちゃんマジスーパーダーリン!!!」



そう答えた彼女はとっても素敵で可愛くて愛しくて……
でもやっぱりすっごく格好良くて彼氏としては最高に複雑な気分
ねぇ花子ちゃん……俺に見合う様に願うのは可愛いけれど
そのイケメン……もうとっくに俺を凌駕しちゃってるって事、気付いて欲しいかも




「あーもー……なんかアイドルとしての自信なくなってきた。いっそ花子ちゃんがアイドルすればいいんだ」



「嫌だよ。私はコウ君だけのもので居たいから……幾ら大好きなコウ君のお願いでもそれは聞けないな」



「やだもう!!!ホント好き!!!いっそ俺がアイドルしててごめんね!!!」




珍しく紡いでしまった卑屈めいた言葉さえも彼女は王子様みたいな言葉で返してきちゃうから
もはや今日も俺の完敗は確定したも同じで…
嗚呼、もう…きっといつかはイケメン、スーパーダーリンな君よりもっともっと格好良くなって見返してやるんだからね。








その後、花子ちゃんのファンクラブみたいな女の子達に
校舎裏に呼び出されてしまったのはまた別の話





ち、違う!!!!




こういうのは俺のファンに花子ちゃんが呼び出されて
落ち込んだ彼女を俺が慰めるって言うのが王道なのに!!!!






「ああもう!!!もっと…もっと格好良くなりたい!!!それこそ王子様みたいに!!!」





俺の悲痛すぎる叫びは虚しく夜に消えてしまったけれど
絶対……ぜーったい実現してやるから覚悟してよ花子ちゃん!!!!





いつの日か、スーパーダーリンな彼女を上回る彼氏力を手に入れて
花子ちゃんをきゅんきゅんとときめかせるのが今後のスーパーアイドル、無神コウの目標です。



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