みんなでディータイム
珍しい事もあるものだ。
正直仲が良いとはいえないであろうこの兄弟達がこうしてみんなでお茶会だなんて。そんな事を頭の隅で考えながらも目の前の赤い液体を口に含む。
「花子、お前まぁたトマトジュースなのかよ。だっせぇ。」
「煩いなぁ、トマトジュースは至高の飲物なのよ。その良さが分からないのならアヤトはまだまだお子様なのねよしよしいいこでちゅねー。」
「だぁぁあ!子ども扱いはやめろっての!」
わしゃわしゃと赤い髪の毛を撫でてやると不服そうに頬を膨らませるお子様。
そんな様子をすぐそばで見ていた翡翠の瞳のヴァンパイアは同じく頬を膨らませる。
「あー!アヤト君だけずるーい!ねぇ?花子ちゃん、ボクも!ボクも撫でて?」
ぐりぐりとその頭を押し付けてくるものだから
小さくため息をついて手に持っていたトマトジュースを静かにおいて右手でアヤトを撫でたまま、左手でそいつを思いっきり乱暴に撫でてやる。
「んもーぅ!花子ちゃんってば本当に激しいよねぇ。僕、興奮しちゃうよぉ。」
「興奮してもいいけどちゃんと1人で処理してよねー。」
そんなお下品な会話でも彼がとても幸せそうなので今回はよしとしておこう。そしてチラリと少し離れたところにいるカナトへと視線を移動する。先程から可愛らしい形をしたクッキーをもくもくと頬張ってとても幸せそうだ。
「カナト、ちょっとこっち。」
「どうしたの?花子さん…」
私が呼べば少し首を傾げてこちらへ寄ってきてくれる。うんうん、三つ子の中で一番かわいいぞカナト君。そんな彼の口元をぐいっと拭うとそのままついていたクッキーのかけらをペロリと舐めあげた。
「ついてたよ。もう、可愛いなぁカナトは。」
「ふふ…ありがとうございます。」
嬉しそうにはにかんだ彼を見て私は満足げに微笑んだ。そんなとき、コトリと置かれた大皿に目をやれば先程の可愛らしいクッキーの追加分。焼きたてなのか、ホカホカとゆげをたてていてとてもおいしそうだ。
「ありがとう、おかあさん。」
「誰がおかあさんですか、誰か。」
盛大な溜息と一緒に降って来た額への小さな痛み。どうやら小突かれてしまったらしい。
ひりひりする額をさすりながら恨めしそうに彼を見やるとクイっと嫌見たらしく眼鏡を上げる。
「折角私がお礼言ったのにこの鬼の所業。アナタさては鬼畜なの?レイジ。」
「馬鹿言っているじゃありませんよ。あんなもの、礼のうちにも入りませんね。」
そんなとげのある会話をしながらも、彼は少なくなっていたトマトジュースを甲斐甲斐しくも注いでくれる。そういう無条件に優しいところ、どうかと思うわ。勘違いしちゃうじゃない。もんもんと考えていると不意に自身の足が重くなったのに違和感を感じて下を向いて小さくため息。
「なぁに、シュウ。折角のお茶会を台無しにしないでよ。この寝太郎穀潰し」
「…おい、レイジ。お前のせいで花子が余計な言葉を覚えちまったじゃないか。」
ゴロゴロと私の膝の上で気持ちよさそうに動く長男に対して嫌味を吐けば予想外にもその矛先はレイジに向いてしまって、彼は言葉に詰まり青筋を立ててしまった。
ああ、きっとこの後長男vs次男の激しい戦争が巻き起こるんだろうなぁ。
「…ん、スバル?」
「んだよ…」
先程から刺さるような視線を送り続けていたスバルに対して首を傾げれば彼はさらに不機嫌そうにじっと、私とシュウを睨みつける。
…ふーん、なるほどなるほど。
「すーばーるー。」
ぽんぽんと、シュウが寝転んでいない膝を叩くと彼はその顔を少し赤くしてしまい、瞳を泳がせる。全く、自己表現が苦手なくせに本当にこういうのは分かりやすいんだからなぁ。
「おいでよー。花子さんのココ、空いてますよー。」
「おいスバル、花子が珍しく気を遣ってるんだ。来いよ」
「うるさい黙れ一言余計だ無気力ダル男。」
「…アヤトの口癖も覚えちまったのか?オマエ。」
そんなシュウの抗議を無視して私は膝を叩く手を早めるとスバルは観念したかのようにあーとかうーとか唸りながらおずおずと私の膝に頭を乗せた。
「なぁ花子…重くねぇか?」
「大丈夫、スバルは脳みそ少ないから軽いよ。」
「おまっ!お前なぁ!」
だって本当にことじゃないか。
私は知っているぞ逆巻スバル君、キミの悲惨すぎるテストの点数を。
「す…すごいね、花子ちゃん。」
「んー?何がかな、ユイさん」
今の状況を尊敬のまなざしで見つめるユイさんに対して子首を傾げてみるものの
彼女のそのきらきらと輝く視線は未だに私に降り注ぐ。…眩しい。
両ひざに長男と末っ子を乗せながら何事もなかったかのようにトマトジュースを飲みつつ
美味しいクッキーを頬張る。んー、おいしい。
「ねぇ、シュウ、スバル。」
「ん?何…ぅん、」
「んだよ、って…んぐっ」
あまりにもクッキーが美味しかったから
二人の名前を呼び、それに答えるようにこちらに顔を向けた瞬間同時にその小奇麗なお口に一つずつクッキーを放り込んでやる。
大人しくもぐもぐとそれを食べてる二人が可愛らしくて私は思わずへらりと微笑んだ。
「こういうのも、たまには悪くないよね。」
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