5:木曜


「………」



「ああ、来たか…お疲れ様。」



「………ハッ!」



木曜日はルキさんが迎えに来てくれた。
彼は静かに校門に立っていて相変わらず難しい本を読んでいたけれど
それがあまりにも絵になり過ぎていて思わず声をかけるのを忘れてしまっていた。


昨日のコウさんはアイドルだからこう…人懐っこいオーラって言うのが出てて
みんな暴走して群がっていたけれど、ルキさんは何というか…近付きにくい。
イケメンなのだけれど…その近付いてはいけないような雰囲気がある。



「行こうか」



「は、はい!」



すっと手を出されて反射的に掴めば彼はおかしそうに笑って「鞄を出せと言いたかったのだが」と言われてしまったので
今週一番盛大に顔を赤くしてしまった。
わ、私はなんてことをしてしまったんだ!!ああもう恥ずかしくて今なら死ねる!!


けれど彼は掴んだ私の手を振り払う事はしないでそのままぎゅっと握ってくれた。
ああ、こう言う所…優しいと、思う。



「今日は何があった?」



「ええっと、今日は数学の授業で新しい公式が…えっとあとは論文も…それとお昼休みは…」



彼のそんな一言が引き金になって私の口はまるでマシンガンの様に饒舌に今日起こった一日の出来事を離しだす。


どうしてだろう…ルキさんに沢山私の事知ってもらいたいって思ってしまってこんなにも必死になってしまう。
ルキさんはそんな私の目を見て優しく微笑みかけながらひとつひとつに相槌を打ってくれる。



ああ、やっぱりルキさんは本当に優しい。



「ルキさんは損をしてますよね…」



「どういう事だ?」



「…だって、本当はこんなに優しいのにいつも怖い顔しているから誰も近付いてこないじゃないですか。」



自分でも大それたことを言ったのは自覚があるけれど
でもホントはこんなにも優しい彼がさっきの校門前の様に誰にも近付かれないのってなんだか悲しい。


ルキさんは怖いひとじゃないんですよって
すっごく優しいひとなんですよって
出来ることなら声を大にして言いたいくらいだ。


するとふわりと優しい手が私の頭を撫でたから
驚いて上を見上げるとルキさんがとても嬉しそうに微笑んでいた。



「花子と弟達が俺の事を分かってくれているのなら…他はいらないさ。」



「じゃぁじゃぁ…私とコウさん、ユーマさん、アズサさんが沢山沢山ルキさんの事大好きでいますね。」



「ああ、そう…だな。」



彼のそんな言葉が酷く嬉しくて私もニッコリ笑ってそう言えば不意に頬に触れた冷たく柔らかい感触。
一瞬何が起こったのか分からなかった。



「けれど花子には大好きではなく、愛していると思われたいんだが。俺としては。」



「ふぁふぁふぁふぁ…ファァァァア!!!!?」




意地悪に笑うルキさんがほっぺにキスしたんだって認識すれば私の一番の変な断末魔は
夜の帰り道に響いて消えた。



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