甘やかし彼氏
定時にタイムカードを退勤ボタンにして切って
営業スマイルでオツカレサマデシタ。
嗚呼、学校終わりにバイトって、けっこう疲れるなぁ…なんて。
お店の制服から私服へと着替えてればブーブーと携帯のバイブがなったので液晶を覗き込めば
それはメールではなく着信だったので慌ててそれに出てみると今一番聞きたかった愛おしい人の声がノイズまじりに聞こえる。
「シュウさん!!!」
『…っ!煩い。耳元で叫ぶな。鼓膜破れるだろ。』
「す、すいませんっ!」
すごく嬉しくてはしゃいでしまい、大きな声で彼の名前を呼べば電話越しに怒られてしまって
目の前にシュウさんはいないにも関わらずペコペコと何度も頭を下げてしまう。
それを見たバイト仲間のクスクスという笑い声に思わず赤面だ。
うう…恥ずかしい。
「ええと、所で何か用ですか?」
『………用がないと彼女に電話しちゃいけないの?』
「めめめめっそうもございません!!!」
私の不用意な言葉で彼の声色がとても不機嫌なものになってしまったので
慌てて謝罪をまた大きな声で言ってしまえば「花子は学習というモノを知らないのか」と二度目の叱責。
『花子、そろそろバイト終わるかなって思って、電話したんだけど』
「そうなんですか!今終わりましたよ!!うわんシュウさん、優しい言葉かけてください頑張った私を甘やかして下さい!!」
『優しい言葉と甘やかし、どっちがいいの?』
「どっちも!!」
ようやく帰り支度をおえてお店の扉に手をかけながらそんな会話。
そう言えばシュウさんの後ろ、なんだか騒がしいなぁ。
いつもならおうちのベッドかソファで寝てるのに今日は何処かにお出かけしてるのかな?
『どっちかにしろよ。どんだけ強欲なの花子は』
「だってだって、大好きなシュウさんの優しい言葉も甘やかしも両方欲しいんだもん!!」
ガチャリ
「ふーん」
お店の扉を開けて聞こえてきたのはノイズ交じりのモノではなく鮮明でクリアな甘く優しい声色で
思わず顔を上げてみれば私の最愛が月明かりの下優しいいほほえみでこちらを見つめていた。
「よーくーばーり」
「シュウさん!!シュウさんだ!!!」
意地悪なそんな台詞を言いながらも携帯をしまって両腕を広げてくれた彼に遠慮なんてしないで勢いよく飛び込めばスクリと小さく笑われてそのままぎゅっとシュウさんからも抱き締めてくれたので思わず顔がだらしなく緩む。
ああ、うれしい…嬉しい!!!まさかこんな所に来てくれてるなんて思ってなかった方すごく嬉しい!!!
「どうして!?どうしてシュウさんがここにいるの!?」
「大好きな花子を1人夜道を歩かせるなんて考えられないからな。」
ちゅっと頬にキスをされて愛おしげに見つめられてはもはや私の体温はぼふんと沸騰するしかなくて
全身を赤らめていればシュウさんはすごく意地悪そうに微笑んだ。
「んー?花子は俺の優しい言葉と甘やかしをご所望じゃなかった?」
「でででもでも実際にされるとあの、その…ドキドキしすぎてあのあの」
「だーめ、取り消しなんてさせない。…花子がバイトの間ずっと淋しかったんだからな。」
むすっとしてそんな事を言われれば胸の奥からじわじわと彼への愛おしさが湧き上がってどうしようもなくなって
必死に抱き付いている腕に力を込めてごめんなさいの言葉。
「シュウさん、ひとりにさせて…淋しい思いさせてごめんなさい。だいすき」
「ん、俺も大好き。……かえろ?」
そっと手を取られてそのまま二人ならんで帰路につく。
嗚呼、学校もバイトも疲れるし、しんどいけれど
彼が…シュウさんがその間私を想ってこうして迎えにまで来てくれるならもう少し頑張れそうかも
なんて考えてしまう私はもしかしたら単純なのかもしれない。
「花子、帰ったらもっとたくさん甘やかして愛してやるから覚悟しとけよ。」
「え、」
「俺を淋しがらせた罰はきっちりその体で受けてもらう。」
………前言撤回。
学校もバイトも頑張りたいけれど
余り頑張り過ぎると次の日、体は動かないフラグをこうして立ててしまうので程々にしようと思う。
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