黒薔薇とチョーカー


今日はあいつの誕生日。
まさか俺が待つ事になるなんて思いもしなかったがそれ程彼女を愛してしまったという事なのだろう。
逆巻家の長男がただの人間にここまで手懐けられるなんざ、本当に笑い話だ。




右手には小ぶりの小箱。
左手には黒い薔薇。




本当は自分色の華を贈りたかったのだが生憎いい意味のものではなかったので
無神の長男を連想させるのが正直癪だがこの色の薔薇を選んだ。
まぁ……こちらも相当な意味合いを込めた花なのだが。




辿り着いた大きな扉を三度ノックすれば
勢いよく開いたそれに思わず身を仰け反らせてしまう。
俺が関わるとせっかちになるそのクセ…いい加減直したら?




「シュウさんっ!!」



「っと、花子……今両手塞がってるから倒れる。」



「ああ、ごめんなさい。こんな日にシュウさんに会えるって言うのが嬉しくてつい…」




扉の中かから弾丸のように勢いよく飛び出した小さな塊は
そのまま俺の体に飛びついてきたので少しばかり両足に力を入れて踏ん張る。
全く…はしゃぐのは構わないが俺だってこんな日に後頭部にデカイこぶとか作りたくないんだからな。




俺の胸元で反省したのか少ししょんぼりとしてしまっている最愛…花子に苦笑。
違う違う。
今日はそんな顔をさせたくてここに来たんじゃない。
まぁ……普段ならそういう顔も悪くないけれど。




「花子、ええと…人間はこういう時おめでとうって言うんだろ?」



「わ、わ、…ありがとうございますっ!!」



彼女の扉をノックする前に左手の物を後ろに隠し、
右手にあった小さな箱を差し出せば
花子は目をキラキラと輝かせながら喜び、それをぎゅうとまるで俺にそうする時みたいに幸せそうに抱き締めた。




「開けないの?」



「もうちょっとこのまま……嬉し過ぎて、今は」



「…………ふーん、」




まだ少し幼さの残るあどけない笑顔でそう答える彼女は今日で人間でいう大人。
付き合って数年は経つのに彼女とキス止まりだったのは
単純に彼女に魅力がないからではなく、俺の欲を受け入れるにはその器が幼すぎたから。




「花子……ん、ん…」



「あ…シュウさ……んぅ、……ぁ、」



未だに嬉しそうな笑顔が止まらない彼女の名前を呼んで上を向かせれば
そのまま深く深く可愛らしい唇を奪って犯す。
嗚呼、この時をどれだけ待ち望んだことか……




あんたの全てを俺のものに出来るこの瞬間を




「ずっと……ずっと待ってた、花子」



「あ………シュウさ、あの…やさしく、」



「さぁ、どうだろ?」




ゆったりと名残惜しいが重なる唇を離し
潤んだ瞳を射貫いて今までひた隠しにしてきた欲望をあらわにする。
彼女と結ばれるときに交わされた大人になるまでは繋がらないと言う約束。




何度も何度もそんなもの破って捨ててやろうかと思ったが
まるで従順な犬のようにそれを守ってきたのはひとえに彼女を欲だけではなく本当に愛しているから。
けれどもうそれも今日で終わり……俺だって男だ。
愛する女の全てを手に入れたいと思ってしまう。




そっと濡れた唇を指でなぞれば今から起こる事に
不安と期待を孕んだその体がピクリとゆれて愛おしくて仕方がない。




不意に先程まで後ろ手に隠していた黒薔薇を彼女の目の前に差し出してやる。
なぁ花子……お預け喰らった分、優しくできないかもしれないけれど
十分に愛も欲もその体に溢れるほど注いでやるよ。




「黒薔薇……?」



「そう、花言葉は………自分で調べなよ、」




きょとんとした花子に小さく笑ってそのまま黒薔薇ごと抱き締めて
彼女の部屋へと雪崩れ込んで開かれていた扉を静かに閉じた。
此処からの花子は何人たりとも見せたくない………全て俺のものだ。




小さな箱に入っているのは彼女に似合いの色のチョーカー。
そして捧げた花は黒薔薇…




それらの意味を知ったら花子…どんな顔をするだろうか。




「花子……もう待てない。あんたの事、ぐちゃぐちゃに愛して啼かせて善がらせたい……俺の手で乱れて?」




もう少女ではなくて女になった彼女を今宵抱いて
『首輪』を付けてずっと傍に置けばもう……




身体も心も全て『花子は俺のモノ』になるだろう?



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