狡いユーマ君


「プレゼントは私。キャッ!って言うのそろそろ飽きた」





「はぁ!?雌豚花子この野郎…俺が毎年どんだけ楽しみにしてると…!!!」





本日7月23日相変わらずとんでもない暑さのなか私が真顔で紡いだ言葉は目の前の最愛の顔面に青筋を浮かべるには十分だったようで…


とんでもなく不機嫌なお顔が私の目の前にずいっと詰め寄ってきたが
出会って初めの頃はそう言う顔にだって酷く怯えていたけどもう今やそんな彼と付き合って数年、そんな凄みで怯えちゃうほど私も若くない。




「だってさー。毎年毎年ユーマ君の誕生日に私とか芸がないよ。たまには私以外をあげてみたいお誕生日おめでとう」




「そう言う問題じゃねぇんだよ!!!なんつーんだ男のロマンって奴てか花子からそれ以外貰ったところで嬉しくねぇ。ん、これからも宜しくな。」




「おいさらりと失礼な事言うな野生児ぶっ飛ばすぞ」





ぐいぐいと本日お誕生日様なのに怖い表情で近付いてくる彼に毎年思っていた文句を垂れ流しながらもついでに祝いの言葉を紡ぎながら
ケーキをフォークで掬い差し出すと、未だに私の言葉に納得いかずに反抗の言葉を口にしながらも素直に差し出したケーキは食べてくれる辺りは本当にイケメンだとは思う。





「ねぇねぇ、ホントにこのままだとお婆ちゃんになっても私をプレゼントになるよ?私も年老いてあんな台詞ごめんなんだけど。」




「あ!?当たり前ぇだろ!?花子がババァになろうが何だろうが…………」




「?」





今はまだ言っても若いからこういう戯れが許される外見だが
ユーマ君の目は結構真剣で、これは本当に私がご老体になってもずっと言わされかねないと思っていれば案の定
やはり彼は死ぬまで誕生日プレゼントは私とかとんでもなく恥ずかしい台詞を言わせ続けたかったようだが…


というか私がご老体になってもユーマ君は私を食べる気なのかとんだストライクゾーンの広い男に惚れてしまった。





「ユーマ君?」




「あー……そこまで嫌がるならプレゼントは花子っての、今年までにしてやる」




これはひたすらに私をあげるあげないで揉め続けるなと、覚悟した瞬間
どうしてか珍しくもユーマ君がニヤリと意味ありげに笑って譲ってくれたので思わず目を見開いた。



ええ、珍しい…しかも今日はユーマ君の誕生日だからまたお誕生日様のいう事は絶対だとか訳の分からない理屈をこねられて言わされちゃうんだと思ったけど…
うんうん、遂に無神ユーマも大人になったって訳か。





しみじみと今まで精神的な成長の見られなかった野生児を目の前に
最愛と言うかもうなんか母親のような感情に浸り何度も頷いていれば
ガシリと、その大きな手に手首を掴まれ、そのまま加減なしに引かれてしまい
今はあっという間に彼の腕の中。




「え、ゆ、ゆ、ゆーまく、私……もうあげないよ?」




「あぁ?別にいいぜーもう…」






急に強く抱き締められてしまって思わずドキリと少女の様に心臓が高鳴ってしまうけれど
この雰囲気に流されてまたあんな台詞を言ってしまってはそれこそ今年ごねた意味がない。
必死に抱き締められたままの態勢で反抗すれば不意にちゅっと軽いリップ音。






さっきより、少しだけ濡れた唇は彼のそれが触れた所為






「よく考えたら小分けにして花子を毎年貰うのがめんどくせぇ。今年一生分のお前を貰っとく」




「……………え、ちょっと意味が分かんないですユーマさん」




「あ?だから、俺に一生分のお前を寄越せつってんだよ頭ワリィのか雌豚」





至近距離で得意気に笑う彼はなんとも贔屓目なしに男前で
そんな恥ずかしい言葉に思わず顔を赤くして分からないふりをしたけれど
それはそれでこうして最高に馬鹿にされて本当に腹が立つ。





だって、だって一生分の私を今プレゼントするって…
それって何だか…






ドキドキドキドキ
心臓の音が酷く煩く聞こえて思考が働かない。
もしかしてそう言う事なのかいやしかし逆に違った意味なのかもと
パニック状態寸前の頭で必死に考えていればもう一度、今度はゆっくりと優しく塞がれた唇に
彼のその言葉は私の考えていたそのものなんだと確信してしまって涙が溢れて止まらない。





ずるい。





こういういい方はちょっと狡すぎやしないや無神ユーマ君





「な…今年は一生分の花子、俺に寄越せよ」




「じゃ、じゃぁ……これからの誕生日プレゼントはどうするの?私以外要らないんでしょう?」




「今度は毎年俺と花子とのガキがいい」




「煩い黙ってこのエロ野生児だいすきよ」





彼はニッコリと笑ってるのに私は感激の涙でぐしゃぐしゃの酷い顔
まさかこんな日にそんな事言われるとは思ってなかった
何だかんだで長い時間共に最愛として過ごしてきて意識してなかったと言えば嘘になる。
でも……まさかユーマ君も考えていてくれてたなんて、嗚呼…





嗚呼、なんてしあわせ





「どうしよ……ユーマ君の誕生日なのに私がプレゼント貰った気分」




「ま、一生分の花子をやる代わりに一生分の俺もくれてやるって事だしな」




「ユーマ君の誕生日なのに私も貰っていいのかな?」




「あ?いんじゃね?硬い事は言いっこなしだ。」





彼の腕の中でひたすらに涙を零しながらも微笑んで
そんな下らない会話を交わしているけれど…嗚呼、いつだって彼の誕生日はトクベツだけれど
今日でもっともっと特別な日になった。





「ツー訳で?一生分貰ったから今日は特に一生分抱けるって事だな」




「どういう理屈なのそれそんなの私の身体がもたないよ」




「あ?壊れちまったら俺が一生介護でも何でもしてやるぜー?奥さん?」





しあわせに浸っていれば相も変わらず脳内エロ男子な彼の口から
頭の悪そうなこじつけた口実が飛び出したけれどそれに対して反論すれば返ってきた単語に思わずノックダウン。
それ以上は何も言えずに大人しくなってしまった私にユーマ君はとても満足そうに微笑んだ。






一生分の私が欲しい





それは彼の遠回しのプロポーズ







毎年小分けで彼に自身を捧げていたけれど
私の不用意な言葉と彼の狡賢い考えによってまるっと一生分全て彼に捧げ尽してしまった
7月23日…愛しい最愛無神ユーマの誕生日と、私と彼の婚約記念日



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