わんこ戦争!
「僕の方が花子ちゃんを愛してる!」
「いーやっ!俺の方が花子ちゃんの事愛してるね!」
「………私はどっちに転んだとしても嬉しくないけどね。」
さっきからギリギリと睨み合いをしている二匹の吸血鬼に向かって盛大な溜息をついて
そんな言葉でツッコんでみても彼等は私の言葉なんか無視である。
…おい、愛してる女の言葉を無視するとか良い度胸してんじゃないか。
ぎゃんぎゃんとまぁ飽きもせず言い争いを続けては睨み合い。静かな空間を愛する私としては果てしなく迷惑である。
「ライト君もコウ君も、私の事愛してんなら少しは静かにしてくれない?」
『いいいいったぁ!?』
ギリギリと分厚い辞書を片手ずつに装備して
思いっきり彼等の頭に急降下させれば甲高い断末魔と共にようやく訪れてくれた静寂に安堵のため息。
…この際「痛すぎる…花子ちゃんの鬼畜!」って言う泣きながらの抗議は耳から遮断するとしよう。
小さく息をついて椅子に座れば後ろからライト君にぎゅうぎゅうと抱き付かれてしまい、前にはコウ君が跨ってきてしまう。
おう、吸血鬼サンドとか嬉しくない。
「ちょ〜っとぉ、コウ。花子ちゃんの足がコウの体重で潰れちゃうでしょー?どきなよぉ!」
「平気だもん!俺、アイドルだから超軽いし!ていうかライト君こそその他のビッチちゃんを触りまくってる汚い手どければ?花子ちゃんが穢れちゃうよね」
「…お前らどこの思春期女子だよ。」
私を挟んで互いに嫌味の応酬を繰り広げる彼等は見た目は格好良いくせに何だか陰湿な女子高生みたいで思わず苦笑してしまう。
本当に…本当に黙ってたら格好良いんだけどなぁ。
仕方なしに、私の上に跨っているコウ君にぎゅっと腕を回し、抱き締めて
そのまま後ろへと体重を預けてライト君へともたれ掛れば
驚いて目を見開き、すぐさま顔を赤くしてしまう二人。
…全く、普段女慣れしてるクセに本命には積極的にされるのは弱いってか?
本当にお約束な子達だなぁ。
でもそういう所、嫌いじゃないよ。
「ライト君もコウ君もだいすき。だから仲良くして。」
私の心からの言葉に彼等は心底嬉しそうに同時に笑ったけれど
タイミングが一緒だったのが気に食わなかったらしく再びバチバチとその綺麗な瞳から火花が散り始める。
「僕の名前先に呼んだんだから花子ちゃんは僕の方が好きなんだよねぇ。んふっ♪コウ、お疲れ。」
「真のヒーローってのは遅れて登場するんだよ!だから最後に呼ばれた俺が本命なの!ライト君はお呼びじゃないの!」
「…………どっちでもいいよもう。…っていひゃい、いひゃってば…」
呆れかえってしまい盛大にため息をつけば
言い合いだけじゃ収まらなかった彼らは私を挟んで取っ組み合いのけんかを始めてしまった。
だから…私を本当に愛していると言うのなら、こんな風に愛しい人を揉みくちゃにしないでしょうが!
「お、お前ら…!ステェイ!!!」
「ぐふっ!」
「がはっ!」
いい加減至近距離でわちゃわちゃと煩すぎて遂に堪忍袋の緒が切れた私はそのまま
抱き締めていた腕に最大級の力を込めてコウ君の腰をバキっとサバ折にして、ライト君の顎目がけてヘッドロックをかましてやった。
そしてゆらゆらと立ち上がり二人を鋭い眼光で睨みつける。
「さて、楽しい楽しいお説教の時間ですよ。」
私の地を這うような低い言葉に思わずビクリと姿勢を正して
躾された様に素早く前に正座をしてしまう二人は本当に犬のようで…
私はそんな愛しい愛しい二匹のわんこの為に今日も1人静かな時間を無駄にする。
(「ああん!怒った表情も可愛いよぉ花子ちゃぁぁぁん!」)
(「俺もなんだか新しい扉開いちゃいそうだよ…!」)
(「………何、アンタ達体罰とかしないと懲りない系?」)
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