4:水曜


「す、すごい…!」



「あ、花子ちゃ…おつかれ、うわっ、ちょ、あの!花子ちゃんたすけてぇぇぇ!!!!」



水曜日はコウさんがお仕事帰りに迎えに来てくれると言っていたけれどコレはすごい…!
どうやらお仕事がキリギリだったようで変装をしないで私を迎えに来てくれたのだろう
今彼は女生徒の海でブクブクと溺死寸前である。


あああ、潰される…アイドルが物理的に潰されてしまう!!!


大慌てでもはや彼の手だけが女性達に埋もれず無事だったからそれを掴んで一生懸命引っ張ってみる。
そしたらすぽんっとコウさん本体が抜け出してそのまま素早く私を横抱きにして猛ダッシュを仕掛けた。



「ちょちょちょコウさん!私お姫様抱っことかあのあのあの!」



「いいいい今はそんな事を言ってる場合じゃないよ!俺の美貌にメロメロなエム猫ちゃんから逃げるのが先決!!」



「ファー!?」



スーパーアイドルのコウさんにお姫様抱っことか恐れ多すぎてやめてもらうように言えば
それをあっさり否定する彼の後ろを見ればとんでもない数の女の子達が追っかけてきていたから
私は三日連続の変な声を出してしまった。




「し、死ぬ…っ!いつも思うけれど美しい俺ってマジ罪…っ!」



「お、おつ、お疲れ様です…っ!」




ようやく彼女達を振り切ってやって来たのはとある公園のベンチだ。
コウさんはぜぇぜぇと肩で息をするけれど私を離そうとはしない。
もうみんないないから大丈夫なのに…



「えっとコウさん…重いでしょう?降ろして頂いて大丈夫ですよ?」



「んー…ヤダ!」



「えぇ!?うぷっ!」



私の言葉に暫く考えていたコウさんはそのまま私をぎゅうぎゅうと抱き締める。
えええどうしたって言うんですか。
突然の事でされるがままだったけれど彼は私を抱き締めたまま小さく、でもはっきりと呟いた。



「花子ちゃん一人くらい重くないもん。大丈夫…ていうか、うん。背負わせてよ」



「コウさん?」



「今回はさ、よっぽどだったから俺達に知らせてくれたけれど…他は俺達の負担になるからって隠してるでしょ?」




ああ、そうか…コウさんは人の考えていることが読めるから私の事もわかってたんだ。


確かに些細な事で嫌な事は沢山ある。


でも一々そんなの彼等に話していいのかなって思ってたから遠慮してた。
だって全部本当に些細な事だし、ああでも…コウさんの声がとっても悲しそうだから…



自分からもぎゅっとコウさんに抱き付いて恥ずかしいから彼の顔を見ては言えないけれど…



「ごめんなさい、コウさん。これから…時々愚痴、言ってもいいですか?」



「!勿論だよ!だいすきな花子ちゃんの愚痴なら大歓迎だよ!!」




二人でそう言い合って互いにニッコリ微笑んでようやく一息つけたのでそのまま帰路についた。
たまには素直に甘えるのも悪くない。



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