きみは私の魔法使い
きみは私の魔法使い
「ねえ、シュウは覚えているんでしょうね?」
「何をだ?」
「何じゃないよ!ほ、ほら、あ、あれ!!」
「……あれって言ったぐらいで、『ああ、あれか』ってなる訳無いだろ。具体的に言え」
「!! い、言ったらまるで私がバカみたいに期待しているみたいだから、イヤ。」
「元からバカなのにか?」
「し、シュウと比べたらバカかもしれないけど、周りと比較したら普通だよ?!」
「無いな」
隣で寝ていたシュウは、話の後にすぐに寝てしまった。まあそれが彼の癖なんだけど…。
彼とは付き合って2年以上経つが、それなりに色々と可愛がって貰えるし、彼女としては文句の付け所の無いぐらいだった。ただ一つ言うのなら、誕生日の事だ。それは1年前のこと。サプライズで何も無く普通に味気の無い誕生日をして、それで終わったのだ。普通なら彼女のために色々あれこれするのに、シュウの場合それが無かった。プレゼントも時期外れのマフラーでバースデーソングも歌わないという、彼らしいと言っちゃ彼らしいけど、私としてはちょっと何かあって欲しかった。だから終わった時に私は「あー、来年はコスプレしたシュウが見たいなー!出来たら軍服とかスーツとかアイドル系の服を着てさー!」とワザと大きな声で呟いたら、当然シュウからの返事は無し。あれから一年が経って、明日が私の誕生日。何をしてくれるのかなと期待して、寝る準備をした。
・・・
・・
次の日になって私の誕生日。シュウ以外から沢山のプレゼントを貰った。彼の弟達である、アヤトからはたこ焼き券、カナトからは珍しくお菓子の詰め合わせ、ライトからは一生着る事の無い破廉恥な服、レイジからは紅茶のセットを貰った。まあ中にはプレゼントとしてどうかと思う物があるけど、それでもわざわざ選んでくれるなんてありがたいと思った。スバルは「どうでも良い」とか言いながらも、そっと可愛い動物のキーホルダーをくれた。
末っ子ですらくれたのに、彼氏のシュウからは何も貰って無い。まあ誕生日が始まってすぐだし、そう簡単にはやりたくないのかとプラスに考えて1日を過ごした。待てど待てどシュウは動く気も無く、期待をしている私がバカに見えてくる。ま、まさか忘れているんじゃないのか…?いやいや付き合って2年以上で一応去年はお祝いしたから、それはないと信じたい。
「(ああ、なんか不安になって来た…。まさかこのまま動かないつもりか?って、あっ、今起きてそのまま何処かへ……って戻って来た…。)……」
何をしに行ったんだと心の中でツッコんだ。それからは全く何も変化が無かった。何処まで期待をさせたら気が済むんだ!!と内心はすごいキレて、言いたい気分だが、抑えて顔はニコニコと笑顔のまま。夜になって、後もうちょっとで私の誕生日が終わる。彼氏に何もされぬまま、誕生日が終わってしまう。肝心の彼氏であるシュウは何故か違う部屋に行ってしまって、ぼっち状態。ああ、ぼっちは嫌だよ…!
「……ってホントもうあれだよね、こんな誕生日迎えるぐらいなら、季節外れの誕生日プレゼントが良いわ!ああ、ケーキ食べたい…。」
独り言が虚しく消えて、泣きそうになった瞬間、プルルと携帯が鳴ってみたらシュウからだった。ポチっと押すと「例の場所へ来い」と一言言って、そのまま消した。例の場所は何処だと考えながらも、想う場所へと向かうと、そこにシュウが居た。えっ!?まさかの一発で当たっちゃうとか、怖い…。
「シュウ…?」
「なんだ、もっとこっち来い花子」
「えっ、あっ、その……シュウ…その格好は…?」
「あんたが望んだんだろ?」
「う、嘘…!」
シュウの格好を見たら、私が見たいと思っていた服の一つ、軍服だった。あの時の呟きを聞いてくれたんだと感激して涙が出てしまった。
「う゛ぅ゛……シュウ゛…う゛ぅ゛……」
「泣くな気持ち悪い」
「だ、だって…!やってくれるなんて思わなかったし、待っても待ってもシュウは動かないからてっきり忘れているんじゃないかって思ったら泣きそうになったんだからね!!もう、バカ、好き!!」
「あっそ。で、花子やりたい事があるんじゃないの?」
「えっ!?やりたい事…?シュウがあまりにも焦らすから全然考えて無かった。」
「…はあ、なら着替える」
「!! ダメ!!じゃ、じゃあ……キス!!いつもと違う、誕生日限定の…!」
「ふぅん」
どんなキスをしてくれるんだろうと期待していたら、ぐいっと手を引き寄せられて、ちゅっと優しくキスをしてくれた。いつもと変わらないキスだけど、私に取っては甘く特別に感じた。
きみは私の魔法使い!
(「シュウ、ありがとうね!ホント魔法使いみたいで嬉しかったよ!」)
(「ああ、そう。でももう二度としないからな。こんな面倒な事」)
(「ごめんね、着替える時は手伝うからさ!」)
(「ん」)
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