Blind luv


今日はルキさんと舞台を見に、少し遠くまで来た。
私たちが楽しんでいる間に、突然の季節外れの大雪に見舞われて、交通機関は完全に麻痺してしまった。
わずかな希望を持って、駅前まで来たものの…


「やっぱり動かないみたいですね…野宿でもします?」

『…おい、そんなことをさせるわけがないだろう。冗談でも言うな』


電車も動かず、家にも帰れないのだから仕方がないのに。

どうしたものかと考えていると、同じく、何かを考えていたルキさんは突然何処かに連絡をする。


『あぁ…頼む。二人だ……まさか、…あぁ仕方がない』


わずかに聞こえてきた会話は途切れ途切れで、
話の流れが全く分からない。

私はあたりを見回して風が避けれそうなところを探す。


『…どうした』

「いや…寒さを凌げる場所を探していて…」


私の手を軽く握りながら反対の手でさすり、


『こんな寒い思いをさせて悪い…』


と、心底悪そうに言う彼の手を微笑みながら強く握り返した。

いくらルキさんの手が冷たくても、ずーっと握っていると
徐々に私の熱が伝わり、暖かくなってくる。

私はこの瞬間がすごく好きだ。

私の気持ちが、少しでもルキさんに伝わっているような、そんな気がして…。


『…タクシーもつかまりそうにない。少し歩くが…平気か?』

「はい、大丈夫です」


そうは言ったものの、私の足元は春用のパンプスで、
雪の積もったアスファルト、しかも気温は少し高めだから、水分を多く含んだ雪。

そんな足場の悪い状態のところを歩くのは至難の業。

こけまいと、思わず握っていた手を強く握り返すと、
その手を解かれ、腕へと誘われる。


『俺に捕まっていればいい』

「あ…すみません」


その好意に甘えて、腕を組みながらゆっくりと進んでいったその先に合ったのは一つの小さなホテル。


『…予約した無神だが』

「お待ちしておりました。こちらがルームキーでございます」


鍵を受け取ると、エレベーターに向かう。
私は何が何だか分からないけれど、とりあえずルキさんに着いていく。
部屋を開けると、そこにはキングサイズのベッドが一つだけ置かれている。

その周りには沢山の薔薇や風船などで彩られている。


「あの…ルキさん…??」

『たまたまこの部屋が空いていたらしい。他の部屋は満室だ。
どうせ雪で電車も今日は動かないだろう…仕方がない、ここで一晩過ごそう』


…誰かのサプライズで宿泊する予定だった人が、
雪の影響で来れなくなったのかな?

ふかふかのベットに腰かけながらぼんやりそんなことを考えていると、
コーヒーの香りが部屋に漂う。


『少しは温まるだろう』


差しだされたコーヒーは私好みのミルクがたっぷりな甘い、コーヒーだった。
両手でマグカップを持ち、ゆっくり飲み進めれば、
体の中から温まっていく。


『少し落ち着いたらホテルの中を歩こう。どうせ外には出られないのだから』


コーヒーを飲み終え、部屋を後にする。
着いた先に見えてきたのは、結婚式に使うチャペルだった。

高さ20mはあるだろう見事なステンドグラス、
ヴァージンロードにはカサブランカのアレンジメントが添えられている。


「素敵…」


思わず一歩、また一歩と前へ歩きだせば、後ろからルキさんもついてくる。

下から見あげるステンドグラスはとても素敵。

普段ならきっとこの夜の時間、ステンドグラスに光が当たらずこんなに綺麗ではないのだろう。
しかし、積もった雪に街の明かりが反射し、ぼんやりと彩りを与える。


『…俺は花子と、永遠の時を過ごしたいと思っている』


後ろから聞こえた声に、振り返るとルキさんは真っすぐこちらを射抜くような瞳で見ている。


『しかし、仮に永遠を共に過ごせたとしても、花子を愛し尽くせない…』


ポケットから小さな箱を取り出す。
その箱を開けようとしているがなかなか開けられずにいるルキさんの傍に寄り添い、
震えるその手の上に、私の手を重ねる。

少しの静寂の後、目をつぶりながら小さい深呼吸をしたルキさんが、再び口を開く。


『だから…この場で誓わせて欲しい。花子を愛し尽くすと。
永遠よりも永い時、お前を想い続けたい…』






今ルキさんに添えられているこの手は、私の気持ちを伝えてくれているのだろうか…

私が口になんて出せないこの気持ちを、どうか彼に伝えて……




私も貴方を愛し尽くしたい…








fin



戻る


ALICE+