件名:無題


「レイジさん、淋しいです今すぐ会いに来てください。」



「…今何時だと思っているのですか。馬鹿も休み休み言いなさい花子さん」



「うわん!その気になれば飛べるくせにこの執事系ドSはやはり鬼だ!!」



「…………今すぐこの電話を切ってしまっても構わないのですが?」



「あ、やだやだ嘘。ウソですごめんなさいレイジさん」




私は思わずベッドの上で正座して何度もその場にいないレイジさんに対して頭を下げる。
現在お仕事で少しばかり彼と離れたところにいる。
その距離が酷く寂しくてホテルで我慢できず彼に電話をかければ酷く不機嫌な様子な彼。
現在午前3:00。


「全くこんな時間まで起きて…貴女明日も仕事なのでしょう?早く寝てはいかがですか?」


「だ、だって淋し過ぎて寝れないですよ!!」


「花子さんは少しばかり私離れを覚えるべきですね」



ため息交じりのそんな台詞にぶわりと涙が出てきてしまう。
そんなそんな!私がレイジさん離れだなんて出来る訳ないじゃない!!
もうこれでもかって位レイジさんの事大好きなのに!!


「うぅ…ヤですよ…レイジさん離れとか…わたし、しんじゃう。」


「はぁ…花子さん、携帯はこのままで結構ですので横になってください」



まるで子供に言い聞かせるように少しばかり柔らかい口調の彼に言われるがまま
正座を崩してゆるりとベッドに横になる。
するとまるで見ているかのように電話越しに「宜しい」って言われてしまう。


「レイジさん…?」


「花子さんは私の声…好きでしょう?」


「はい!大好き!です!」



勢いよく彼の問いを肯定すれば少しばかりのノイズとまじって苦笑の声が聞こえる。
ああ、きっとまた相変わらず呆れられてしまっているんだろうなぁ。


「そちらには行けませんが…花子さんが眠るまで、こうして話して差し上げます。」



「ほ、本当ですか!?」



嬉しくて思わずガバリと起き上がればまた電話越しに怒られてしまう。
…本当は何処かで見てるんじゃないの?
大人しく眠る体勢に戻ってピタリと耳に携帯をあてる。
少しでも彼の声が聞こえるようにと、私は必死だ。


「ふふ、ホントはココにご本人がいたらなぁ…ギュって出来るのに」


「この季節ですと花子さんは風邪をひいてしまいますよ?」


「いいんですよ、レイジさんにもらえるものは風邪だって嬉しいもの」



そんな何気なさすぎる会話でも彼の声は酷く心地よくて
いつものクリアな声色では無いくせに確実に私を微睡へと誘う。
そしていつの間にか意識は途切れ途切れになってしまって…



「えぇ、そうですね…花子さん?眠ってしまいましたか?」


「ぅむ…ま、だ…です…ねてませ、…れいじ、さ…」


いつまでもずっとずっとレイジさんの声を聴いていたくて
必死に目を開けようとしていたけれどもう限界で、
迫りくる睡魔に完敗してしまいそのまますんなり意識を手放してしまった。


落ちる瞬間に遠くから彼の相変わらずの苦笑が聴こえた気がした。






「…………ん?メール?」



朝になってゆっくり目を開ければ当たり前だけれど通話は終了していて
その事実が酷く寂しくてちょっと泣きそうになった。
けれどチカチカと光っている携帯を徐に操作する。
どうやらメールが一件新着で来ているようで…



「…………、もう。」



そのメールを確認して思わず顔は綻びその携帯を抱き締める。
ああもう、だから私は貴方がだいすきなの。



そして気を引き締めてお仕事の準備。
今日終わらせて真っ先い向かうは彼の部屋。



「行ってきます、レイジさん。」



誰もいないのにそんな台詞を呟いて液晶画面にキスをした。





件名:無題

本文:おやすみなさい、愛おしい人



たったそれだけの文章で私はこの一日全力で頑張れる
単純でお馬鹿な貴方の下僕。



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