何も知らない


「ルキ君、ルキ君…また、さよならって言われちゃった」


「そうか…」



今日も1人友達を失くしてしまった私はボロボロと涙を流しながらルキ君に縋り付く。
ああ、悲しい…悲しいなぁ。


いつの日からかは分からないけれど、どうしてかひとり、またひとりと
私の傍から大切な人が離れていってしまう。
彼等、彼女達は決まって理由も何も言わないまま
只々「さよなら」って言って私の前から消えてしまう。


いつも浮かべる怯えた瞳が余計悲しい。



「どうしよう、もう私の事知ってるのルキ君だけになっちゃったよ…」



「花子…」



震える腕で彼だけは消えないようにと必死に縋りつく力を強くする。
すると、どうしてかルキ君はとても嬉しそうに笑うんだ。



「花子、俺はお前の傍から離れないから…」


「…ほんとう?」




もう今の私は完全に独りきりで、ルキ君がいなければ誰も私を認識してはくれない。
だって、今日、最後の1人が私に別れを告げたのだもの。
だからもう私はルキ君がいないとこの世に存在していても生きていない事と同じなってしまう。



「ルキ君、ルキ君…絶対さよならなんて言わないでね?」



「ああ、勿論だ。」




優しく抱き返してくれた優しいルキ君に酷く胸が高鳴る。
嗚呼、もしかしていつもいつもサヨナラって言われる度に泣いていた私にこうして手を差し伸べてくれていたルキ君に恋をしてしまっているのかもしれない。
ううん、もしかしてなんかじゃなくて絶対そうだ。



だってそもそも、彼がいなければもう私はこの世に存在できないのだもの。



「お願い、私を離さないで…」


「離すものか…何の為に此処までしてきたと思っている。」



後半の彼の言葉の意味がよく分からなかったけれど
最初の離さないという言葉がとても嬉しくて嬉しくて
私はそのまま自分から彼に小さくキスをした。



ルキ君はそんな私を見て今までで一番うれしそうに笑った。



「嗚呼、これでようやく花子が俺だけのものになった…」



そんな台詞。
おかしなルキ君。
ようやくだなんて…今まで何かをしてきたみたいな言葉じゃない。



深くは考えなかった。
だってこれ以上誰かにサヨナラはされたくないもの。



だから私は知らない。
何も知らない。




サヨナラを言った人たちの怯えた瞳に彼が映っていた事実なんて何も知らない。



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