キミとお揃い
「ああ、この形もかわいい!あ、でもこっちも何だか知的でいいかも…!」
「人ものを粉々にしておきながらよくはしゃげますね」
「ご、ゴメンナサイ」
私とカナト君は現在メガネ屋さんでデート中である。
それもこれも私がカナト君の眼鏡を粉砕してしまったからなのだが。
事の始まりは数時間前。
いつもの如く、お人形になれだのお菓子を5秒で作れだのテディの洋服を今すぐ作れだの
訳のわからないカナト君の我儘を全力で叶えようと奮闘していた時だった。
バタバタとお部屋を走り回っていた時、足に少しばかりの痛みが走ったかと思えば
パキョっと不気味な音がしたのだ。
冷や汗と共にゆっくり足を上げてみれば見るも無残なカナト君ご愛用の眼鏡さん。
それを見た彼がこの世の終わりじゃないのかと思うくらい大きな声で泣き喚いてしまい
数時間の土下座と私のおごりで新しい眼鏡をプレゼントすると言う事でようやく泣き止んでもらったのだ。
「全く…たかが眼鏡くらいであそこまで泣かなくたって…」
「何か言いましたか?花子さん」
「カナトくんは相変わらず可愛いなぁって言いましたごめんなさい私が悪かったですだからほっぺ抓らないでいたい!」
ぐいーっとほっぺを抓られてしまい涙目で彼の腕をバシバシ叩けばようやく解放された私の頬。
嗚呼、すこしばかり腫れちゃってる…
すりすりと頬をさすればそんな私を見て涙を溜めるカナト君。
「ぼ、僕の花子さんに傷が…!ひどい!」
「理不尽すぎる!」
盛大に喚きながら先程から見ていたお気に入りのフレームを勢いよく彼の顔に装着すれば
ピタリと涙はとまり、きょとんを首を傾げるカナト君は悔しいけれどすごくかわいい。
「花子さんはこれが気に入ったの…?」
「うん、たまにはこういうのもいいかなぁ…って」
彼がいつもかけていたおおきなメガネフレームとは逆の小ぶりなレンズに
下だけフレームが付いている珍しいタイプ。
プラスチック素材だから固くなり過ぎず、でも少しばかり知的なイメージはカナト君の新しい魅力を引き出してると思う。
すると彼は徐にかけている眼鏡とは色違いのものを私に静かにかけた。
「カナト君…?」
「じゃぁ花子さんはこっち…ね?」
少しばかり嬉しそうに微笑んだ彼につられて私も笑顔。
ああ、なんだかお揃いってすごく特別な感じで嬉しいかも…
だってこれをつけていればなんだかカナト君を近くに感じる事が出来るもの。
「えへへ、お揃い…嬉しいなぁ」
「ふふ、僕も嬉しい…」
ちょっと踏んづけちゃった眼鏡君には申し訳ないけれど
壊しちゃってよかったかも…だってこしてカナト君と同じものが一つ増えたんだもの。
それってなんだかとても素敵な事じゃない?
これからもこうして彼とお揃いなものが沢山増えていけばいいのになぁ…
そしたらいつだって、カナト君の事近くに感じることが出来るもの。
乙女チックにそんな事を考えながら感情の赴くまま彼にぎゅっと抱き付いた。
こんな風にいつも、いつでも貴方を近くに感じたいだなんて相当溺れてしまっている証拠だね。
でもそんな私、嫌いじゃないの。
(「じゃぁ二本とも花子さんのおごりでおねがいします」)
(「ここは私の分はカナト君が買ってくれるパターンじゃないの!?」)
(「はぁ?」)
(「あ、ハイ、ごめんなさい調子に乗りました二本とも全力で買わせていただきます。」)
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