さわって、触れて
ちらり、ちらり。
アズサ君がこちらを何度も見ては視線を戻す。
何かを言いたいみたいだけれど、私は馬鹿だから
彼が何を言いたいのかなんて全然わかんない。
ああ、こんなんじゃ彼女失格かなぁ…
少しばかり情けなくなってしまったけれど
このままの状態を放置しておけるほど私の神経は図太くない。
意を決してアズサ君の方を見つける。
「アズサ君、」
「ん…花子…どうしたの?」
聞きたいのはこっちだよアズサ君。
じっと彼の顔を見つめて私から質問。
「さっきから私の事見てるけど…どうしたの?」
「え…っと、」
少しばかり頬を赤く染めて視線を泳がせてしまう彼の言葉をじっと待てば
言いにくそうに、もごもごと言葉をゆっくり紡いでくれた。
「あの、ね?花子に…触れたい、」
「え、」
意を決して言った言葉がそんなものだなんて予想していなくて
思わず固まってしまえば彼はそのまま慌てたように普段より少しばかり早い口調でまくしたてる。
「で、でも…俺なんかが花子に触れて…いいの、かなって…ああでも触れたい…って、どうしようって…思って、」
「…アズサ君ならいいよ」
必死に、一生懸命にそう言ってくれるアズサ君が愛おしくて私も精一杯大胆な答え。
うん、アズサ君になら触れてもらいたい。
だから俺なんかがなんて言って欲しくない。
両手を広げて受け入れる体勢を取れば
アズサ君は少しばかり戸惑いながらもゆっくり私の頬に手を添える。
ああ、細いのに大きい手はひんやりして心地いい。
「手、にぎっても…いい?」
「ん、」
おずおずと包まれた両手。
ああ、どうして彼に触れられたところは冷たいはずなのにあったかいのかなぁ…
「ぎゅって、して…いい?」
「いいよ…」
肯定した私の言葉を聞いて優しく壊れ物を扱うように抱き締めてくれるアズサ君に泣きそうになる。
ああ、私こんなにも優しく愛されてるんだ…
嬉しい…うれしいなぁ…
そんな事を考えてれば徐に体を解放されて
不意にちゅっと唇にキス。
こんな事初めてだったから私は反射的に顔を赤くしてしまった。
「キスは…いや、だった…?」
「う、ううん…ヤじゃない…よ、」
私の反応に少し泣きそうな表情になってしまったアズサ君に慌てて弁解すれば嬉しそうに微笑んでくれた。
嗚呼、私はそんな彼の顔が大好き。
「えへへ、花子…だいすき」
「私も、大好きだよ。」
二人ともお互いが大好きなんだなぁって
そんな事が嬉しくて嬉しくて
私もお返しにと、彼の唇を塞げば今度はアズサ君が赤くなる番。
「私からのキス…いやだった?」
「ううん、嫌じゃない…うれしい、」
いたずらっ子の様に問うてみれば
本当に幸せそうに笑うアズサ君につられて私も力なく微笑んだ。
ねぇねぇ、大好きだから…
もっともっと私に触れてね愛おしいひと
戻る