ひかり
この目が見えなければと、何度思っただろうか。
醜い世界を見たくないだなんてそんな悲劇のヒロインを気取るわけではなく
ただ単に、周りの視線から怯えてビクビクしている自身を見たくなかった。
「花子、どうした?考え事か…?」
「ええと、ね。」
彼の腕に包まれて、彼の指で髪を掬われて
心地よさに目を細めていれば少しばかり不満めいた言葉。
独占欲の強い貴方に苦笑してしまう。
そんなに心配しなくたって、この心地いい場所から逃げる気はないのに…
髪で遊んでいる指を自身のもので絡め取って
そのまま唇を落とせば傾げられてしまう首。
そんな何気ない仕草だってだいすき。
「目、見えなければよかったって思って、」
「どうして?」
私の言葉にあくまでも優しく柔らかない口調で問うてくれる。
頭ごなしに否定しない貴方は酷く優しいと、思う。
「鏡や反射するものに私が映るとね、何だか惨めな気分になるの」
「花子…」
いつだってそこにうつるのは不安げな表情の私。
相手の顔色を窺ってビクビクしていて何とも滑稽。
そんなに怯えるのならもう誰ともかかわらなければいいのにと思ってしまう。
「でもね、ルキくん」
「ん…?」
くるりと首だけ彼の方へと振りかって微笑んだ。
その漆黒の瞳に映る私だけは例外だ。
「ルキ君の瞳の中の私はとっても素敵だから、考えが変わったの。」
愛しい瞳の中の私はいつだって幸せそうに微笑んでいる。
それはもうこの世で一番しあわせそうに。
この私はキライじゃなくて、いつだって見ていたくて…初めて自身の目に光が宿っていてよかったと思えた。
貴方の瞳は漆黒の闇色なのに私にとってはソレがこの世で唯一の光だ。
「そうか…花子の瞳の中の俺も、嫌いじゃないな。」
「そうなの?」
彼の言葉に疑問を投げかければ塞がれた唇。
冷たくて、暖かくて、甘い。
ゆっくりと離されて再び闇に映る私は相変わらず幸せそうで…
そんな私をじっと見つめて彼はいつもの様に柔らかく笑う。
「ホラ、花子。俺も…幸せそうだ」
嗚呼どうやら私も彼の光になれているようで
その事実が嬉しくて嬉しくて…こんな時、どう表現していいのかが分からない。
「ルキ君、だいすき」
「それだけか…?」
せめて、言葉にして表現しようと思い紡げば意地悪に微笑んだ彼。
そうだよね、だいすきだなんてそれじゃ足りない。
きっと今の私達にはもう一歩先の表現がお似合いだ。
『愛してる』
どちらかともなく囁けば
互いの瞳に映った自分達は本当に愛おしげに、幸せそうに微笑んだ。
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