ド近眼故


「彼シャツで萌えるなら彼眼鏡も萌えるはず!へぶぅ!痛い!」



「全く…貴女はどこまで馬鹿なのですか!返しなさい花子さん!」



愛しの彼氏であるレイジさんの眼鏡を奪い去る事に成功した私はそのまま奪い去った眼鏡を装着してあざとく彼の前に現れようとして大失敗。


度数が合わない眼鏡に世界は酷く歪んでしまい勢いよく壁に激突してしまった。


レイジさんはそんな私を見て大きな声で叫んだけれど
彼も現在メガネがない状態だ。
私に向かって叫んでいるつもりだけれどその相手は私じゃない。



「わ、わた…っ私はそんな緑でとげとげじゃないですよレイジさん!!」



そう、歪んだ視界でとらえたのは小さなサボテン君相手に怖い顔をして叫んでいるレイジさんだった。
まさかの!せめて間違えるなら人間がよかった!!


「おや、これは失礼…とは言ってもそもそも花子さんがわる…ん?花子さん、随分大きくなってしまって…おや白髪も…何か苦労されました?」


「レイジさん!ソレ!末っ子です!!」



ご自慢の銀髪を白髪呼ばわりしてしまいスバル君の顔には青筋が経ってしまったけれど
レイジさんは見えないかそのままゆらゆらとまた別の所へと歩き出す。
わ、私は!私はここにいますよー!レイジさーん!!



「全く人騒がせな…おや、花子さん、こんな所で寝てしまっては風邪をひいてしまいますよ?花子さん?花子さ…お、重!?身長180cm体重65kg級に重い!」


「レイジさん大正解!ソレGO・KU・TSU・BU・SHI!!」


「…おい、レイジ。俺はお前のお姫様になる気はないけれど?」



今度はシュウさんをなんとお姫様抱っこしてブルブルと震えてしまっている。
ど、どうしよう…申し訳ないけれどすっごく面白い光景だ。
事実三つ子ちゃん達はおなかを抱えて泣きながら爆笑してしまっている。



「もーもーもー!私はこっちって言ってるじゃないですかレイジさーん!」



大きく叫んで装着していた彼の眼鏡を外して元の場所、即ちレイジさんの顔へと戻してやれば
瞬間ボトリと落とされてしまったシュウさんに苦笑しながらも
私はレイジさんの頬を両手で挟んで彼の瞳を私でいっぱいにする。



「はぁ…全く悪戯しないで頂けますか?」



「だって、レイジさんの眼鏡姿の私って可愛くないですか?」




呆れたような言葉に不満気に唇を尖らせれていれば不意に塞がれた唇。
そして彼は不機嫌なまま言葉を続ける。



「貴女が私の眼鏡をかければ私は花子を見れないじゃないですか。」



「レイジさ、」



ぴんっといつもの様に綺麗な指で額を弾かれて
思わず攻撃された部分を涙目でさすっていれば彼はまた困ったように微笑んだ。




「私はいつだって貴女をはっきりとこの目に映していたいんですよ」



「レイジさん…って、うわっ!」



彼のそんな言葉にときめく隙なんか与えてもらえなくて
いきないりレイジさんはその小奇麗な顔を超至近距離まで近付けてしまった。


い、今彼の吐息が近くに感じてドキドキして非常にヤバいです…。
そして徐に私が返した眼鏡を取り外してにっこり。



「まぁいつでもコレ位近くで見ていてよろしいのであれば眼鏡、貴女がかけていても結構ですよ?」



「や、うん…やっぱり眼鏡…そのままお返しします。ごめんなさいレイジさん。」



「おや、それは残念」



顔を真っ赤にしてしまった私に満足したのか意地悪に笑ってレイジさんはようやく離れてくれた。


ほっとしたのもつかの間、今度は頬に感じた冷たくて柔らかい感触に立ててはいけないボフンと言う音と共にその場に倒れ込んでしまった私に彼は声をあげて笑う。




「頬にキス位でこのような反応だなんて…先程は唇にしたでしょう?花子さん」



「れ、れ、レイジさんの仮面紳士ー!!」



私の訳のわからない反論に彼はいつも通り余裕めいて笑うばかり。
全く、目が見えなかったレイジさんはあんなに面白くて可愛かったのに
眼鏡を取り戻したらすーぐ格好いい彼に戻っちゃうんだから反則だ。



…まぁでもそんな彼が大好きなのは紛れもない私なのだけれど。



何をしても反則な彼に降参とため息をつけばその意味を理解したのか
レイジさんは嬉しそうに笑う。



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