勝者の命令


「右…右…右…っでぇぇぇ!!!」



「アヤト君は本当に単純で愛しいよ」




先程まで私の手にあったジョーカーを彼が拾い上げて思わず笑ってしまえば彼は恨めしげにこちらを睨みつける。


現在二人きりのババヌキ中である。
ぶっちゃけると至って楽しくはないのだが、彼がやりたいと言い出したのだから付き合っているだけだ。



「さぁ花子!引きやがれ!!」




彼の手には残り二枚のトランプ。
これで私がジョーカー以外を引けば必然的に私の勝ちとなる。


じっとアヤト君の瞳を見つめればひたすら左側を見つめている。
…全く、彼にはこういったゲームは死ぬほど向いていないらしい。


小さく息をついて自身の勝利を確信し、勢いよく彼が凝視しているものとは反対のカードを引き抜いた。



「ああああああー!!!!」



「ふ…、逆巻アヤト、弱すぎるザコだったぜ…」




ペアのトランプをひらひらと舞い踊らせて完璧な勝利を謳えばアヤト君は机をだんっと音を立てて叩いてすごく悔しそうに唸る。
けれど今日はこれからが本番なのである。


「さぁ、罰ゲームの時間だよアヤト君」



「くっそ…言ってみろよ、花子」




そう、このゲームには予め罰ゲームというモノを設置していた。
それは勝者の言う事を何でも聞くと言うもので
これも全部アヤト君の提案だ。



それもきっと全て先程から隠しているその小さな箱が原因なのだろうけれど…




「負け犬逆巻アヤトに勝者花子ちゃんが命令します。」



「…………、」



黙りこくったままコチラをじっと見つめるアヤト君。
きっと彼の計画としてはこのゲームに完全勝利して全乙女号泣の台詞を言いたかったのだろうけれど…
生憎そんな思い通りに行くほど可愛い生き物ではないだ、私は。


身を乗り出して徐に彼の唇にキス。
すると彼は驚いてその体を固めてしまう。



「負け犬は一生私の傍に居る事。」



「花子、」



「そして…、」




ちょんっと、今まで彼の後ろに隠してあった小箱を指させばビクリと揺れるアヤト君に苦笑。
そして彼の目を捉えて離さないまま不敵に微笑んだ。



「この婚約指輪を私に捧げる事」



「〜〜〜っ、くそっ!」




私の言葉に顔を真っ赤にして唸れば勢いよく隠していた箱を差し出して
恥ずかしさを紛らわせるためにじっとこちらを睨みつける彼がとても愛おしい。



「おら、受け取れよ。負け犬からのプレゼントだ。」



「ふふ…ホントは勝って私に“一生傍に居ろ”って命令したかったんだよね。可愛いなぁアヤト君は。」



「だぁぁぁ!るせぇ!良いから、手ぇ貸せ!」



乱暴に左手を取られてしまい、薬指にはめられた美しいリングに満足気に微笑むと
彼も嬉しそうに笑った。



「嬉しい…アヤト君、ずっと一緒に居てね。」



「ったく、俺様は負け犬だから…勝者様のゴメイレイは何だって聞くぜ?」




負け惜しみにそんな台詞を吐いた彼はそのまま私にはめられた指輪に唇を落とした。
その光景はまるで御伽噺の王子様のようで思わず見惚れてしまう。




「一生幸せにさせて頂きます。勝者サマ」



まるでプロポーズのような台詞に必然的に頬を染めてしまう。
どうやら私はゲームだけでなく人生でさえも勝者になってしまったようで。
これから訪れる幸せの数々を想像してまた小さく微笑んだ。



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