ぽかぽか
「しゅ、シュウ君…何その恰好。」
「………ん、」
仕事から疲れて帰って来てみれば私の部屋で待ち構えていた愛しのシュウ君。
普段なら嬉しくてそのまま彼の腕にダイブしてしまうのだけれど
彼の異常な恰好にビシリと固まって身動きが取れない。
そんな私を気にも留めず彼は私のベッドの上でゆらゆら揺れている。
「ほら、外…寒かったろ。あっためてやるから…おいで、」
「な、なるほどぉ!!!」
もふもふという効果音が今の彼にはお似合いで、
彼の台詞でようやく彼がどうしてそんな格好をしているのか見当がついた。
現在彼は何枚もの上着やコートやらを羽織って
手袋やマフラーなども完全防備である。
…多分これはきっとこう言う事だろう。
「私をシュウ君であっためたいけど体温がないからそうやって出来るだけあっため体勢を取ってるって感じ?」
「ん、正解。花子、頭いいな。」
いやいや、頭良いとかそう言うんじゃなくてですね。
気持ちはすごく嬉しいし、その発想はとんでもなくかわいいけれど
シュウ君おかげさまで雪だるまみたいにころころじゃんよ。
小さく笑ってぽーんっと彼に体を投げ出せば
案の定動けない彼はそのまま私と一緒にベッドへと転びこんでしまった。
けれど彼は満足そうに笑ってもぞもぞと暖かい腕で私の身体を抱き締める。
するとなぜかふわりと暖かい感覚に首を傾げる。
幾ら服を何枚も重ね着したからってこんなにあったかいはずないのに…
するとシュウ君はそんな私の顔を見て勝ち誇ったようなドヤ顔を見せる。
「花子、知ってるか?この世には貼るカイロというモノがあるんだぜ。」
「やだもうシュウ君ホント可愛い。」
そんな馬鹿げたことにそんなドヤ顔とか本当に反則だろうが。
余りにも可愛すぎてぎゅうぎゅうと彼を抱き締めていれば
次第に私を抱き締めていた彼の腕の力が抜けていく。
「しゅ、シュウ君…?」
「…………あつい、」
「で、ですよね!」
どうやら相当の厚着と数十枚の貼るカイロさんのおかげで
シュウ君はすっかりのぼせてしまったようで
私に抱き締められながらぐるぐるとめを回してしまっている。
大慌てで彼の沢山纏っている服を一枚一枚脱がせていると
ぐったりとした様子のシュウ君が必死に嫌味な顔を作る。
「男の服、自分から脱がすとか…やら、」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ!お馬鹿!!」
茶化す彼に盛大なげんこつを浴びせてようやくいつもの普段着まで戻せば
私も彼も小さく息を吐いた。
…これですこしは楽になるだろう。
全く、自分で私をあっためたいと思うのは非常に可愛いけれど何事もやり過ぎってやつだ。
「なぁ、花子…」
「ん、どうしたのシュウく…ぅわ!」
ぐるりとシーツに包み込まれたかと思えば至近距離の何とも真剣な表情の彼に思わずドキリ。
頭からすっぽりと包まれてしまったからなんだかこうしてると内緒話をしてるみたいでまたドキドキしてしまう。
「これなら、少しは…あったかい?一緒に寝て…いい?」
…なぁんだ、そう言う事か。
この寒い夜人間である私が体温を持たない彼との添い寝を盛大に断ると思ったのだろう。
だから先程の妙な格好。
彼なりの打開策と行ったところか。
そんな不安気な彼が可愛くて愛おしくて、私はそのまま彼にぎゅっとシーツごと抱き付いた。
「勿論!一緒に寝てくんなきゃ私の仕事の疲れとれないし!」
大きな私の言葉にシュウ君は少しばかり嬉しそうに頬を緩めて
そのまま私を腕の中に収めて満足気に笑ってくれた。
身体は少しばかり冷たくても
もう心は十分すぎる位ぽかぽかであったかい。
(「ん、でもやっぱりあったかい…?」)
(「………じゃーん」)
(「シーツに大量のカイロ!もしかしなくてもシュウ君カイロにハマっちゃった系だね!」)
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