仕切り直し!


「やっぱ女はチチがでかい方がいい!!」



「いやいやアヤト君、少し小さめで自分好みにカスタマイズする方がいいでしょ?」



「やっぱ下着はセクシーなもんに限るよな!」



「…アヤト君、敢えて清楚な下着を付けていて実は夜淫らですの方が萌えない?」




…花子って女のクセに俺様よりすげぇ何かエロい事に関して男前すぎる
っつーかなんだよそのエロ親父みたいな思考回路は!!



俺様と花子は所謂悪友ってやつだと思う。
18禁のエロ本とかこっそり読みながらこの女はイイけどこっちはちょっと、とか普通に話すし
体育の後とかはチチナシの本日の下着の色発表会とか勝手にしてくるし
あと、新しいたこ焼き屋とかできたら絶対に一番に俺様に教えてくれる



ぶっちゃけ他の男友達とか女とかといるより
花子と一緒に居る方がすげー楽。




そんなある日、俺様は廊下でとんでも無い光景を目の当たりにした。




「は?え?マジ?」




何と花子が廊下で涙を流していて、それを何とあのシチサンメガネが優しくハンカチでぬぐっていたんだ。
ちょっとあまりにも驚いてビシリと固まってればシチサンメガネはこちらに気付いたようでニヤリと厭味ったらしい笑いかたをして
そのままちゅっと彼女の瞳を舐めあげてしまった。




「何してんだこのシチサンメガネ!!!学校でキモいっつーの!!つーか花子もなに好き勝手されてんだよ!!!花子はシチサンネガネが好きなのか!?」



「おやおや、煩いですよアヤト。…では花子さん、私はこれで。」



「あ、どーも。逆巻センパイありがとうございまーす。」




俺様がデカイ声をあげて割って入ったらまた嫌味に笑ってシチサンメガネはそのまま何処かへ来たし
花子はなんともなかったかのように奴に礼を言ってヒラヒラと手を振った。





…イラァ。




は?
な、なんだコレ…
なんで俺様いらっとしてんだ?
それにさっき何で花子とシチサンメガネの間に慌てて割って入ったんだよ。
え?は?
こんなの俺様が1人でやきもち妬いてるみたいじゃねぇか…
やきもち…




…………は?




自身の感情にドン引きして固まっていれば
花子が不思議に思ってずいっと俺の顔を至近距離で見つめるから
ぼふんと顔面が赤くなってしまった。



「え、何その反応。キモチワルイ」



「うううううるせぇよ!!!おれ…俺様だってすげぇ気持ち悪いんだっつーの!!!馬鹿花子!!!」




恥ずかしさを隠すために思いっきり近くにあった彼女の額に頭突きをかませば
ガチギレした花子が10倍位の勢いで俺にヘッドロックをかましてきたからその場に倒れ込んでゴロゴロとのたうち回る。
ありえねぇ!こ、こんな狂暴思考回路オッサンな馬鹿花子にやきもちとか!!
俺様マジありえねぇだろ!!!!



「うおおおおおおおお」




「えぇ?そんな痛かったの?アヤト君吸血鬼のクセに弱すぎじゃない?」



違う。この断末魔は別に痛みであげてるわけじゃねぇんだよ。
お前へのくそダサい恋心的なアレを自覚しちまって認めたくなくて苦悩している悲劇のヒーロー逆巻アヤト様のどうしようもない声なんだよ察しろ馬鹿。




じたじたもだもだと手足をばたつかせて未だにゴロゴロとのたうち回れば
「行動がうるせぇ」って言われてそのまま踏まれてしまった。
…俺様はサッカーボールじゃねぇ。




でも、うん。
そうか…好きな奴って…そっか。
見た目が綺麗とか、ただひたすらにエロイとかそんなんじゃなくて
花子みたいに一緒に居て楽で自然に笑えてるのが好きって言うのかも知んねぇ…
そんな恋心の基本中の基本を悟った気がして
俺様はそのままの気持ちを口に出す決意を決めた。




なんだよ…俺様、花子の事が好きだったんだ。




だからさっきシチサンメガネと一緒に居たり
彼女が涙を流していたり
アイツが花子に優しくしてる所を見て
胸がざわついたんだ。




「花子…………すきだ。」




簡単な三文字だけれど
これはすげぇ重要な三文字だ。




俺様の恋心を確定させるもので
これから花子にガンガン迫って俺様を好きにさせるって言う決意表明で
…そんで、もう絶対に俺様以外の男に彼女を触れさせないっていう…誓い。



ゼロからでいい。
ゼロから、俺様の好きって気持ち…花子に伝えたい。




「…あれ?アヤト君って俺様系ドSじゃなくて俺様系ドMだったっけ?」



「うおおおおお!チクショウ!!そうだった!!!シチュエーションって奴を考えるべきだった!!!」



上から降って来たのは照れたような声でもなく、感激したような声でもなく
ただひたすらに「ドン引きですよ私は」という声で…
瞬間今自分が置かれている状況を把握して勢いよく立ち上がる。
そうだった!!!好きな奴に踏まれっぱなしで愛の告白はねぇわ!!!!俺様って馬鹿じゃね!?




「仕切り直し!!仕切り直しだ!!!」



「お、おう?ど、どうぞ…」




ぎゅうぎゅうと彼女を抱き締めて
二三回大きく深呼吸。
くっそ、なんでこんないっぱいいっぱいになるんだよ。



すげぇ恥ずかしくて、でもここで伝えなきゃ俺様が廃るって思い、
もう一度、今度は真剣に・・・ゆっくりと彼女の耳元で愛の告白をした。




今この瞬間俺様はまだ知らない。
巨乳には興味のない彼女が毎回俺様のエロ本談義に付き合ってくれてた理由を
同性には勿論興味のない彼女が毎回チチナシの下着の色を俺様に教えて笑顔になってる理由を
実はたこ焼きが大嫌いな花子がここら近辺のたこ焼き情報にすげぇ詳しい理由を…




「花子、好きだ。」





俺様の言葉に困ったように微笑んで
「わたしも」って四文字が返って来るまで、馬鹿な俺様は何にも気づかないままだ。




(「つかシチサンメガネとなにしてたんだよ」)




(「只目にゴミが入っただけだよ?…ああでもレイジさん過保護だよね。いつも目舐めてくれたり眠かったらお姫様抱っことかしてくれるし」)




(「……シチサンメガネあいつ確信犯だ!!」)



戻る


ALICE+