日向ぼっこ


「うーわーこの超大型犬かわいいよーぅ。ホレホレ、もっとぎゅってしてやんよ。」



「おうおう、もっとしてくれて構わねぇぜ?つかもっと構え、花子」



「………」



俺は今目の前の光景に絶句してる。
珍しく眠れなくて昼間に起きてしまって
そのまま足の赴くまま外に出てみれば花子とクソムカツクでかいアイツが薔薇の咲き乱れる丘でいちゃいちゃしてた。


や、細かく言えば花子があいつ…ユーマの頭を膝に乗せてぎゅっと抱え込んで頭を優しく撫でてた。
いちゃいちゃっていうより…冒頭に花子が呟いてたように犬とご主人様みてぇ。



実際ユーマは花子に何をする訳でもなく
只柔らかな日差しと彼女の手に気持ちよさそうに目を細めているだけだ。
でも…なんか、面白くない。


するとユーマがこちらに気付いてニヤリと悪く微笑みやがった。
そしてこちらにも聞こえる様に少しばかり大きな声で彼女と会話し始める。



「おう花子。おめぇ、もう一匹デカイ犬…欲しくねぇ?」



「え?いるの?」



「いるんだなーこれが。花子にぎゅってしてもらってなでなでしてもらいてぇ淋しがりの白い引きこもりのわんこがよぉ。」



なんだよその言い方!!!
ユーマの台詞にビキリと青筋を浮かべたけれど花子がこちらをゆっくり振り向いて
すげぇ嬉しそうに笑ったからその青筋はどっかに引っ込んで代わりにぼふんと顔面に熱が集まってしまった。



「スバル君!スバル君だ!!ほらほら、おいで〜?」



「おう引きこもり。この慈悲深いユーマ様が花子の片膝譲ってやっから来い。」



二人がもぞもぞと移動して俺の場所であろう空間を確保して
花子はそれはもう嬉しそうに
ユーマはすげぇ余裕めいた笑いで俺を誘う。
いつもならうるせぇって叫び散らしてどっかいくけれど足が二人の元へと向かったのはきっとこの咽返る薔薇の香りの所為だ。







「…自分から来てみたが、何だコレ。」



「いいだろー。俺の特等席だっつーの。」



真顔で呟いてしまったがその言葉にユーマが自慢げにドヤ顔で応える。
いや、なんでそんな自慢気なんだよ。
…正直羨ましいけれど。




ニコニコ
ニヤニヤ
…そして困惑。



花子は俺達を膝に乗せて大満足なのかニコニコと嬉しそうに微笑んで
ユーマは固まってしまっている俺見てさっきからニヤニヤしてる。
肝心の俺はこの初体験に困惑を隠せない。



…ヴァンパイアが昼間から花畑でひなたぼっこって何事だよ。




すげぇ意味の分かんねぇこの光景にどうすればいいかわからずガチガチに体を固めてしまっていれば
花子の小さな手がふわりと降りてきて何度も何度も優しく俺の頭を撫でる。



「花子…?」



「えへへ、気持ちいい?スバル君…」



「おいおい花子、引きこもりにとっておきの場所を譲ってやった心優しいユーマ様に褒美はねぇのかよ。」



「はいはーい。んーちゅっ」




撫でられる感触が心地良くて思わず目を細めていれば
ユーマが訳分かんねぇオネダリを初めて花子はそんな彼の瞼に優しくキスしたから
腹が立って必然的に近くにいてるユーマのそのにやけきった顔面に頭突きをかました。



「いいってぇぇ!?こ、この引きこもり!!やんのかコラ!!!あぁ!?」



「うるせぇ!俺の花子にキスされてんじゃねぇよ馬鹿!!!」



ぎゃんぎゃんと花子の膝の上で痴話喧嘩。
だって仕方ない。
俺だってずーっと花子の事好きなのにそんな事、された事無い。
すげぇムカついて悔しくてちょっとだけ涙目になってれば頭にコツンと軽い痛み。
驚いて上を見上げれば困ったような、でもやっぱすげぇ優しい微笑みの花子。




「喧嘩はだーめ。折角のいいお天気なんだら…ね?」



「「………わん。」」




花子に軽く怒られてしまって二人して少ししょんぼりしながら
そのまま、また大人しく彼女の膝とぽかぽかの太陽を堪能する。
ああもう、本当に花子の犬になったみてぇだなコレ。




「えへへ、ユーマ君もスバル君もだいすきだよ。」



「「………おう。」」




ぽかぽか
ふわふわ



チクショウ。
今回は…つか今だけは見逃してやんよこのクソ無神ユーマ野郎。
太陽が気持ちいいから
薔薇の香りが心地いいから
…なにより花子が幸せそうだから。



それは目の前のコイツも同じみたいで
こちらをチラリと一瞬睨みつけてそのまま彼女の腰に手を回してぐりぐりとすりよってた。
…俺は恥ずかしいからできなかったけど、うん。
正直後悔はしてる。






「くそ、寝不足だ。」



その夜結局眠ることが出来なくて1人、小さくぼやいたけれどふわりと自身から香った薔薇と花子の香りに小さく溜息をついた。




もしかしたら俺、吸血鬼だけどたまにこれから昼、起きてあの場所へ行ってしまうかもしれない。
それ位あの時間は酷く心地よくて幸せだった…気がする。



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