えろはぷ!


「人生には何かしらの刺激が必要だ…そうは思わないかい?」



「……随分と格好いい事を言うのだね。まるで私みたいだ。」




ちょっと低めのイケメンボイスでそう呟いてみれば私の後ろからパチパチと間抜けな拍手が聞こえて長い溜息を吐く。



「んもう!格好良い台詞台無しじゃないですか!!カールハインツ様!!折角頑張ったのに!!」



「だって花子が今からすることは全然格好いい事ではないし…」




勢いよく振り返って喚けば先程の拍手の主、カールハインツ様がちょっとしょんぼりしてくたりと首を傾けた。
まぁ確かに今から始める事は格好良くはないけれど潔いとは思ってる。




「仕方ない!私も起こす!エロハプを!!!」



「素晴らしい川柳だね。」




五七五の言葉遊びで本日の目的をかるーく宣言してみる。
そう…足りないのだ。エロハプニングが!!
毎回毎回ぎゃんかわ天使なユイちゃんには馬鹿みたいに振り掛かるえっちなシチュエーション…すなわちエロハプニングが私には微塵もやってこない湧いてこない!!!


こんなに美形吸血鬼がいるにも関わらず!!!
ならばもう自発的に起こすしかないと思ってカールハインツ様にお願いしてさりげない日常にガッツリ濃いハプニングを起こしてもらおうって魂胆である。


因みに面白い事大好きヴァンパイア王は二つ返事でOKしてくれたから恨むんなら彼を恨んでください逆巻と無神の両家諸君。



「さて、最初はやっぱりアレですよ。道の角でぶつかってこけちゃってお胸鷲掴みパターンですよね!!」




シュッシュッ




「………花子が鷲掴みにされるのではなくて、花子が鷲掴みしちゃうんだね。」




唸る右手でわきわきとイメトレしていたら
「おじさんちょっとひいちゃうよ」みたいな声色で苦笑するカールハインツ様なんて無視だ。


エロハプニングは起こしたいけれど受け身はちょっとプライドが許さない花子ちゃんお年頃ですこんばんは。
誰にもその姿勢がエロハプニングを遠ざけているだなんて言わせない。




「さぁ!最初の餌食は誰だ!!おおっと足がすべったぁぁ!!!」




勢いよく曲がり角でわざとらしくスっ転べばもさっとした感覚が私の手に宿る。
…もさ?
え、ちょっと待って私が遭遇したのは吸血鬼君だよね?どこぞのビッグフットではないよね?
恐る恐る顔を上げれば視界に入って来たのは大きな瞳に沢山の涙を溜めてぷるぷる震えてるカナト君だった。



「え?あ、あれ?カナト君?…え?もさって…………やべぇ。」



「花子さんの……花子さんの痴女ぉぉぉぉお!!!!」




私の手でもみもみされているのはカナト君であってカナト君ではなかった。
そう…私が厭らしい手つきで揉みしだいていたのは紛れもない彼の相棒…テディ君のおっぱいだった。



「どうしたヒステリー!花子が痴女ってどういうことだよ!!」



「花子ちゃんが痴女と聞いて!!!何のプレイ!?ねぇねぇ!!!」



「花子さんが…花子さんが僕のテディを無理矢理…嫌がるテディを無理矢理…っ!!!ひぅぅぅ」




……………。




「「………え。」」



カナト君の金切り声に反応したアヤト君が駆け付けたかと思うと
私が痴女って言うワードを聞きつけたライト君がどこからかひょっこり現れて二人がカナト君に詰めよれば
彼はぎゅっとテディ君を抱き締めてきゅうきゅう縮こまって震えながらそんな事言っちゃうものだから
アヤト君とライト君がまるで私を変質者みたいな目で見つめてきてしまった。



「お…おい花子、いくら溜まってっからって…その、獣姦?いや、ぬいぐるみ姦はどうかと思うぞ俺様はよ…」



「花子ちゃん…そんな頭イっちゃう前にどうして僕に相談してくれなかったの?何か辛い事があったなら相談してくれればよかったのに。」




「……えっと、ライト君が意外にいいこですね。」




アヤト君とライト君にがしりと肩を掴まれて詰め寄られれば
もはや出てくる言葉はこれくらいである。
チクショウ、最初から大失敗だよエロハプニング。





「全く…弁解に二時間もかかるとか思わなかったよ。次行きましょう次!!」



「まだ懲りないのかい?全く…人間とは恐ろしい生き物だ。」




困ったように微笑みながらもカールハインツ様はポチポチと携帯をタップしている。
多分心に傷を負いまくってしまったカナト君が頭おかしくなって彼に鬱メールを送信したのだろう。
お父さん、いちいち返すあたり優しい…。



「次はアレですよ!お風呂に入ってると突然の侵入者!“ひゃぁ!花子ちゃんのえっち!!”大作戦!!」



「…やはり花子が見ちゃう側なんだね。男の裸とか…何のサービスだい。」




呆れたように呟いたカールハインツ様を再び無視してそのまま逆巻邸へダッシュである。
男の裸が何のサービスかって?
私へのサービスに決まっているじゃないか何言ってんのあのおじさん。
イケメンの裸体とか滅多に見れるもんじゃないですよ。あ、痴女ではありません花子ちゃんです。



向かうは一直線浴室の扉である。
さて、本日私に裸体を見られちゃうラッキー吸血鬼はどこのどなたかな!?




「ヘイどーも!足が勝手にこんな所へこんばんは!!!」




「………あ?」



「……ハイ?」




…………カポーン。




ええと、これはどういった状況ですか。
乱入した浴室ではどうしてだか服を着たままどっぷり湯船に浸かってうとうとしてたシュウさんと
そんな彼の胸倉を掴んで服を一生懸命脱がそうとしていたであろうレイジさんがこちらを同時に見つめていた。




「ええっと、近親相姦的なアレですか?あ、違うその前に性別…」



「………へぇ、アンタそっちの趣味もあったの?花子。」



「全く…穀潰し、貴方が服を着たままで入浴などするから誤解されているではありませんか。」




シュウさんはニヤニヤと意地悪に笑いながらちょいちょいと手招きをするから
私はそのままスススと彼らの所へと寄っていく。
レイジさんが誤解って言うんだから多分彼は純粋にシュウさんの服を洗いたかっただけなのだろう。
けれど私のそんな脳内の考えはよそにシュウさんがぐいっと私の手を引っ張ってばしゃりと体を浴槽に引きずりこんだ。



「え?シュウさ…?」



「ねぇ花子…俺は別にレイジとそう言う事する気ないけど…三人で…スる?」



「待ちなさい穀潰し、私はまだ洗濯と掃除が残っておりますのでその後にしていただきたい。」




レイジさんがツッコミを放棄したら誰がこのボケボケ長男を抑えつけるんですか!!
チラリとレイジさんを見てみればもはやその瞳は疲労困憊で死んでいた。
くそう!皆が調子にのってレイジさんを苛めるからもはや手遅れじゃないか!!!


じたばたと浴槽で大暴れしてもシュウさんががっしり抑えつけてるから
只々自分の服を濡らすしか効果はない。
やばい、食われると思った瞬間救世主のようなそうでないような悲壮な声が響き渡る。




「………まさか俺の兄貴二人がデキてて浴室プレイで更には花子とまじって3Pだと?」



「……ちょっとどうするんですか末っ子涙目じゃないですか。」




大暴れしてた音を聞きつけて何事かと思ってやって来たであろうスバル君が
この世の終わりのような瞳でこちらを見つめていた。


や、う…うん。すごく誤解ですよスバル君。
けれどそんな彼にとどめを刺したのは私でもシュウさんでもなく疲労困憊で頭のネジが外れてしまっているこのお方だ。



「ふふ…スバル、貴方もご一緒にいかがです?兄弟仲良く…ね?ふふ。ふふふふ」



「…おい花子どうすんの、レイジおかしくなったしスバル泣いちゃったけど。」



「全部シュウさんの所為ですよねたまにはレイジさん孝行してあげたらどうですか?」


どうしようもないこの空間に私とシュウさんの溜息が響き渡ってしまった。






「全く…スバル君ガラスのハート過ぎるし、レイジさん可哀想だから今度カーネーション送ろうと思います。」



「ねぇねぇ花子…すごいよ。あのシュウが屋敷の掃除してるんだけど。」



一通り落ち着いて溜息を付けばカールハインツ様が嬉しそうにいそいそと私に写メを見せてくれた。
そこに写っていたのはせかせかとお掃除をしているシュウさんとソファでぐったりしてしまっているレイジさんだ。
送り主は先程泣いちゃったスバル君みたい。
うん、明日は嵐、というか世界が崩壊する。



「ならばもう最後の砦だ無神家に行ってきます!!」



「その格好でかい!?」



ちょっと驚いたのかカールハインツ様が声を荒げる。
それもそのはず、先程浴槽で濡れてしまった服は今お外に干しちゃってるので
今私は生まれたままの姿にバスタオル一枚というモノだ。
もはや偶然を装ってエロハプニングは難しいと見た!
ならばこんな恥ずかしい格好の美少女を目の当たりにしたイケメンのリアクションだけでも見たい!!



「恥ずかしがるイケメン!!!絶対可愛い!!!!」



「…もはや主旨が変わっているし正真正銘の痴女だよ花子…」



「ええい!煩いうるさい!どうしてもエロハプを起こしたいんですー!ユイちゃんばっかり愛されてずるいよぉぉ!!!」



思わず出てしまった本音もそのままにみんなが揃っているであろうリビングの扉を勢いよく開けてやった。
すると案の定みんな揃っていた無神家全員がこちらを向いて一時停止である。



「はぁ…花子、どうした。そのような格好で…風邪をひくぞ。」



「る、ルキ君?」



先程まで読んでいた本をパタリと閉じてこちらへ寄って来たルキ君はそのままくしゃりと私の頭を撫でた。
コウ君、ユーマ君、アズサ君はその間に何処かへと散り散りへと消える。
え?もしかしてこのまま警察呼ばれるパターンですか?



ちょっと怖くなってガタガタと震えていればふわりとあったかいお日様の香りが私の頭を包み込んだ。
そのふわりとした感触の正体は白いフェイスタオルのようだ。



「ほんとだよー!ホラホラ、髪までぐっしょりじゃーん。俺が拭いたげるーっ」



「うわわわ!こ、コウ君!?」



ニッコリ笑ったコウ君がわしゃわしゃと、でも優しく私の髪の毛を拭いてくれた。
ん?あれ?ちょっとまってエロハプニング…
されるがままになっていると今度は顔面に真っ白い布が叩き付けられた。
何だって思ってそれをはぎ取れば視界に現れたのは意地悪に笑うユーマ君だ。



「おら、それ着てろ。俺のワイシャツだから丁度ワンピースくれぇの長さになるって、大丈夫だ。」



「あ、ありがと…?」



え、何でみんなこんなに優遇してくれんの?ちょっと意味わかんないけど…
ていうかほぼ裸の私を見てなんの反応もしてくれないとか私、そんなに魅力ないですかね?
ちょっと悲しくなりつつも脱衣所を借りて半泣きでユーマ君のシャツを被り、再び彼らの元へ現れれば
ふわりとアズサ君がぎゅってしてくれる。



「花子…からだ、冷たい…俺も体温ない、けど…ちょっとはマシ…?」



「あず、あずしゃきゅううう…」



優し過ぎる彼らの対応に何だか自分のしてることが恥ずかしくなって
ボロボロと涙を零せばルキ君がちゅって私の涙をその唇で掬ってくれてスーパー勘違い発言。



「それで…?どこの逆巻の男に強姦されたんだ?」



「…………え?」



「そうそう、さっきから逆巻さんの臭いが花子ちゃんの体からプンプンするんだよねぇ」



「ちょ、」



「おまけにその格好だ…どう考えても…なぁ」



「あの、」



「可哀想な花子…だいじょうぶ…ちゃぁんと花子以上の苦しみを…与えて殺してあげる」




………どどどどどどうしよう。
私の軽率な行動でこのままだと逆巻、無神の大戦争が巻き起こってしまう。
そしてどちらかと言えば被害者の逆巻さんがどう考えても悪者みたいになっちゃってる!
流石にそれは可哀想かな!!!



「ちが…違うんですよ!これはあの…っ!」



「花子、何も言わなくていい。」



弁解しようとすれば優しいルキ君の言葉によって遮られてしまうけれど
お願いです!言わせてくださいよ!!ホントあの私純粋にエロいハプニングが欲しかっただけなんですよ!!


どうしようって思って顔面蒼白になればそれさえも無理に抱かれた恐怖を思い出してのモノだと勘違いされて彼らの顔にビキリと青筋が浮かんでしまい
もはや私にはどうする事も出来ない。



そしてもう全ての悟りを開いてしまった私が手に取ったのは携帯電話。
勿論かける相手は1人しかいない。




「もしもし、カールハインツ様ですか?今すぐちゃっちゃっと時間戻してください。でないと吸血鬼10人の血が無駄にでろでろ流れます。」



『………何をやらかしたのか詳しく聞こうじゃないか。』



ノイズ越しの彼のトーンからしてこれから王様のスーパーお説教タイムが待ってるんだって思うと震えが止まらなかった私
深夜3時、半裸のお年頃の女の子である。




もう二度とエロハプニングを起こしたいとか言いませんよ。
そう言うのは全部ユイちゃんに任せようと思います。



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