両片想い


「ルキ君ルキ君、だいすきよ。」



「……そうか。」



殴りたい。
この私の一生懸命な愛の告白を目線もこちらに向ける事無くスルーしてくれやがる参謀系ドSマジ殴りたい。



ブルブルと怒りに体を震えながらもそこはぐっと我慢だ。
先程も言っていたけれど私はルキ君が好き。
大好きだからそんな彼の事を殴るなんて頭で考えていても実行に移すことは出来ない。



「すきだよー。ルキ君…だいすきだよ。」



「…………。」



「………ぐすっ。」




しまいには無視ですか。
彼の余りにも酷い反応に小さい声で泣いてみる。
うう…知ってはいたけれど、こう…実際に片想いを突きつけられると言うのは辛いものだ。
ふらふらと戦意喪失してしまった私はおぼつかない足取りで彼のベッドへダイブして
そのままぐすぐすと愚痴を零し始める。



「なんだよう…好きじゃないなら好きじゃないって言えよバカルキ君ー。」



「………。」



「どうせ私ばっかり片想いですよーだ。家畜マジ辛い。」



「…、………。」



「スーパーイケメン無神家長男は大人気だからこんな平凡女には構ってる暇もないってか。ふーんだふーんだ。」



「……はぁ。」




パタリ。
分厚い本が閉じられる音がして私の体はビクリと揺れる。
やばい、もしかしなくともルキ君怒っちゃったかな。
自業自得だと言われればそれまでだけれど私だってか弱い人間だもの、弱音位吐きたくなるの。


さっきまでマットに突っ伏してぐちぐち言っていたのだけれど今は怒ってるであろうルキ君の顔を見るのが怖くて
シーツに顔を埋めたままガタガタ震えてたけれど一向に殴られないし外に放り出される気配もない。



おかしいなって思ってようやくそこで顔を上げればびっくりするくらい間近にあった彼の綺麗な顔に思わず息を忘れる。
ビシリと固まっているとルキ君がじっと私の顔を見つめてびっくりする言葉を投下しちゃう。




「いつ俺が花子を好きではないと言ったんだ。馬鹿。」



「え?ルキ、く…んぅ!?」



ちょっとその言葉に動揺してもう一度聞き返そうとしたら
いきなり塞がれてしまった唇に顔面と脳内が沸騰する。
え、あの…その台詞…あれですけど、私、都合よく取っちゃいますけどいいんですかルキ君。



「る、る、るき、るきく…ルキ、」



「ホラ、真正面から愛を囁いた訳でもないのに花子はこうなるから言えないんだ…」




ぼぼぼと、もうホント燃えちゃうんじゃないのって位さっきから顔が熱い。
後声もすごく震えてるし、目だって自分でわかっちゃうくらい涙が凄く溜まってる。
そして揺れる視界には困ったような、呆れたような顔のルキ君しか映らない。



「花子は分かってない。…俺がどれだけお前を好きなのか。愛してるか。…想ってるか。」



「う……うぅぅぅ〜」



やめてくださいこれ以上は無理ですと、言いたいのに言葉が出ない。
出ない代わりにさっきから甘すぎる言葉ばかり紡いでるその口を両手で抑えた。
そして何度も首を横に振る。
知らなかった…私、ルキ君にこういう事言われるとこんなにどうしようもなくなってしまうだなんて知らなかった。




「ん、花子…花子…好きだ。いや違うか…愛してる…愛してる。」



「やややややだやだやだやめてお願いホント無理。」



「…貴様先程どの口が俺に片想いだと抜かしたんだ?これじゃ逆だろ?ん?」



「むいむいむうううう」



手を優しく撮りはらわれて再び紡がれる愛の言葉に
もはや思考回路が追い付かずに顔を逸らして甘い言葉の打ち止めを申請するけれど
ビキリと青筋を浮かべたルキ君がわしっと私の頬を鷲掴んでこちらを向かせるからもうホント心臓が悲鳴をあげてしまう。




「全く…ほんの少し素直になってやればこの反応…花子、早く慣れないと愛し合う事さえできない。」



「むいいい!むぁむあー!!(勘弁してください愛し合うとか何事ですか無茶ですよルキ君。)」



「ほう…俺の愛を拒むとは………花子、貴様は本当にイイ度胸をしている。」



むにーばちんっ!


機嫌を悪くした彼はそのまま鷲掴んでいた私の頬を限界まで伸ばしたかと思うと
急に離すものだから頬に激痛と衝撃が走って、ルキ君のお部屋に可哀想な私の断末魔が響き渡る。



「いいいいたい!!!ばっか!ルキ君の馬鹿!!!!酷いよ!」



「酷いのは貴様だろう。俺に片想いだとか馬鹿な事を抜かすからデレてやれば拒否なんて…大概にしろこの自称家畜。」



「自 称 家 畜 !!!!」



訳のわからない愛称で呼ばれてしまいショックを受けていると
やれやれと言った感じでルキ君は再び少し離れた椅子に座り直して読書を再開し始めた。


や…まぁ、うん。


確かに好きじゃなかったらこうして大事な読書タイムをすっごく邪魔しても怒らないって事はないだろうし。
勿論好きでも無い女が自分のベッドに勝手に上がりこんでぶつぶつ言ってたらルキ君ならもうなんか肉塊位にはしてると思うけど…




でも…うん。
やっぱり私みたいな自称家畜にはまだルキ君のデレは時期尚早みたいだ。




だって今でもまだ心臓がバクバク煩いし顔だって真っ赤だもの。
だからごめんなさい…私に好きって言うの、もうちょっとだけ待ってね?
もうちょっとだけ、自称片想い、自称家畜を続けさせてください。




せめてルキ君の我慢の限界がるくまでにはちゃんと慣れるようにするのでどうか…





「…ねぇねぇルキ君、だいすき。」



「………そうか」




もうちょっとだけ、お互いこの無意味すぎる片想いを続けさせてください。



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