第四回王様ゲェェム!
「まぁな、こうなる事は何処かで予想はしていたというかなんというか…」
「る、ルキさんがもう王様ゲームにトラウマを持ってしまっている!!!」
俺は相変わらず最愛である花子を強く抱き締めながら小刻みに震えてしまっている。
仕方ないだろう…以前やって来た悪魔たちとはまた別の問題児三つ子が王様ゲームをくじ片手に無神家にやってきてしまったんだから。
「ダル男から聞いたぜぇインテリ…すげぇ無様なお前を見れるって!!」
「確か学校でシュウとデキてるって噂になってましたもんね…ねぇテディ」
「だからぁ僕達も実際にそんな無様なルキが見たいなーって。んふっ♪」
逆巻シュウホント嫌い!!!!!
奴がこの三つ子に全て吹き込んだのか好奇心旺盛なこの馬鹿共はわくわくとした様子でこちらを見ている。
くそ…一通りやってやらないと帰ってくれない空気だ。
まぁ今回はあの大魔王逆巻シュウはいないからきっと大惨事は免れるだろう。
「仕方ない…一通りやったら帰れよ。…コウ、アズサ…申し訳ないが付き合ってくれ。」
今回家にいたであろう無神家でも可愛い系である二人に手招きをして
これから開始されるであろう下らない遊戯にひとつ、溜息をついた。
「さぁて王様ゲーム開始だよー!?王様だーれだ!!!」
今回は芸能界で司会進行などを任された事のあるコウがとりしきる。
明るい声にガタリと立ち上がったのは俺様一番大好き万年赤点男である。
「っしゃぁぁぁ!俺様だぜ!!やっぱ一番は俺様だよな!!んー…じゃぁ、1番が3番に最近流行りの肩ドンだ!!!」
「あっ!3番俺だぁ!だれだれ?アイドルのコウ君に肩ドンしちゃう幸運な女の子は!」
…だから女は花子だけなのにどうしてコウはそうピンポイントで花子狙いなんだ。
じっと花子を見つめながら言葉を紡ぐコウに対して花子は苦笑しながらひらひらと番号を見せる。
良かった…花子は4番だ。
確か肩ドンとは相手の肩にそっと頭を乗せて甘えると言う何ともこう…うん。
あれだな。守ってやりたくなる仕草と言うか甘えさせたくなる仕草と言うか…そういったアレだな。
そんな事を考えていれば俺の想像していた肩ドンとは全く違った行為が目の前に広がってしまった。
ゴスッ!!!!!!!!!
「いいいいったぁぁぁぁあ!!!!?肩!!!肩へこんだコレ!!!いいいったぁぁぁ!!!!」
「あれ?肩ドンって、相手の肩をベッコリへこませる位手刀で殴りつけるものではなかったでしたっけ?」
コウが右肩を庇いながら高速でゴロゴロと転げまわっている傍で
キョトンと可愛らしく首を傾げているがアイドルの肩を陥没させたのは紛れもないこの悪魔だ。
「さ、逆巻カナト…貴様一番初めのお姫様抱っこといい、なんだかその…豪快だな。」
「そうですか?僕はか弱いですよ?ねぇ、テディ…?」
どこがか弱いと言うんだと反論したかったが
自分の肩も陥没させられそうだったのでそこはぐっと口を噤んだ。
無神ルキは大人の男なのだ…
「うう…コウ君大丈夫かなぁ…と、取りあえず気を取り直して王様だーれだ!!」
コウが再起不能になってしまった為急遽花子が司会をする運びとなって
そのまま続けられた王様ゲーム。
なんと今回の王様は引いてはいけない人物になってしまったようだ。
「んふっ♪僕だねぇ〜。んんーじゃぁ4番が5番に本気の告白をする!!」
なんだ、逆巻ライトとしては結構まともな命令じゃないか。
いや、本気の告白だぞ…?男比率の高すぎるここで本気の告白…。
……、考えたら少し気分が。
「あ…4番…俺、だ。」
「お、5番は俺様か。」
ゆったりとした口調のアズサと先程王様だった逆巻アヤトが同時に宣言してしまう。
アズサが逆巻アヤトに本気の告白?…想像が付かない。
するとアズサがゆっくりと逆巻アヤトに近付いてそっとその場に跪いた。
ん?あ、アズサ…?
「え?は?」
「アヤト…さん、」
ちゅっ
!!!!?
アズサ以外のここにいるメンバーが度胆を抜かれた。
なんとアズサが逆巻アヤトの前に跪いたままその手をとって優しく唇を落としたのだ。
そしてとても穏やかな笑顔で彼は言う。
「アヤト…さん、俺は、こんなだけど…アヤトさんの笑顔…守りたいって、思うんだ…だから…ね?いいでしょ…?俺に…守らせて…?」
「あず、あず…あずさぁぁぁ…俺様…俺様なんで女じゃねぇんだろ…っ!!!」
優しく、暖かな声色でそう言うアズサに対して
こういう風に優しくされた事が無いであろう逆巻アヤトの涙腺は崩壊しており
只のお遊びなのを忘れてしまうくらい感激してしまっている。
正直俺も二人がいつまでも幸せになればいいのにと一瞬思えてしまうくらいにアズサの行動にときめいてしまったから
末っ子の本気は恐ろしいモノだと再確認させられてしまった。
逆巻アヤト…せめておともだちならいいんじゃないだろうかとアズサの兄は思っているのだがどうだろうか。
「うぅぅ…アヤト君、アズサ君と末永くお幸せにね…さてこれで最後かなぁ…ええと、」
花子が先程のアズサの告白に感動しながらも
最後の王様コールをしようとした時に突然バターンと大きな音を立てて扉が開いた。
そしてゆらりと現れたのはこのゲームにおいて俺が最も忌み嫌い恐れをなしている大魔王シュークリームだった。
左手にはでかでかと王様と書かれたくじを持っている。
「王様おーれだ。」
「喧しい!!!何が“王様おーれだ”だ!!!!さっさと逆巻邸へ帰れ逆巻シュウ!!!」
思わず椅子を倒す位の勢いで立ち上がり大魔王、逆巻シュウの胸倉を掴む。
しかし彼は全く動じずニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてチラリと驚きで固まっている花子を見つめる。
「俺の事仲間はずれにしてルキといちゃいちゃしてたの?花子。……俺、悲しい。」
「う、うぅ…わ、分かりました。ではシュウさんが特別に王様でいいですよ?」
何が特別に王様でいいですよだ花子優しい!!!
けれど基本花子に甘い吸血鬼達は何も反論することはなくそのまま彼が王様という運びになってしまった。
もはや嫌な予感しかしない。
チラリと自身のくじをみてガタガタと震えながら呪いの様に脳内で呪文を唱える。
1番来るな1番来るな1番来るな
1番来るな1番来るな1番来るな
1番来るな1番来るな1番来るな
「ええと、王様と…3番に、」
王様と3番になんだ。もう1番じゃなければ何だってイイ。
1番以外が酷い目にあえばいいんだ俺だって正直自分の身が可愛いんだ
そんな自己中心とか利己的とか罵りたければ罵ればいいじゃないか
もはや俺さえ助かればそれでいい!!!!
すると逆巻シュウはちらりとこちらを向いて
それはもうゲスの極みと言った笑顔で死刑宣告を言い放った。
「1番が語尾をにゃんにして5時間ご奉仕だ。」
「きっさまぁぁぁ!!!さては見たな!?先程俺が貴様に掴みかかったときに俺の番号見たな!!!」
「暴力的なルキが悪いよな。ホラ三つ子、王様の命令は?」
『ぜったーい!!!』
逆巻シュウの掛け声に面白い事大好き三つ子が声を揃えてそんな事を言う。
最後の助け舟と思いアズサを見ればとても優しい笑顔で右手をぐっと握って「ルキ。俺はルキはちゃんと任務を全うするって信じてる」のサイン。
くそう…純粋にも程があるだろう。ここにコウがいてくれれば何とかしてくれたのかもしれないが生憎頼れる次男は病院送りである。というか3番は誰なんだ。
ブルブルと膝をついて悲しみに打ちひしがれていたらひょいっと俺の目線に合わせた花子がひらりとくじをこちらにむけてわくわくとしたような笑顔を向ける。
………数字はまごう事無き3番だ。
「えへへ、五時間もルキさんにご奉仕して頂けるなんて…何だか贅沢ですね…嬉しいなぁ。」
「………ご奉仕頑張るにゃん。」
そんな嬉しそうにしないでくれ。
逃げることさえできないじゃないか。
そんな天使のような笑顔に負けて俺はこの屈辱すぎる5時間を甘んじて受け入れる事にしたけれど
花子の後ろでニヤニヤと笑っている逆巻シュウはもうホントいつかカールハインツ様とかアダムとかイヴとかそんなの関係なしにボコボコにしてやる。
後日俺の可哀想すぎる5時間がノーカットで何処かの動画サイトにアップされてしまい
腹筋崩壊してしまったカールハインツ様から動画の感想を頂いた挙句
それを見た家畜に「ルキ君…いやなことがあるなら相談に乗るよ?」と同情の眼差しで見つめられたからもうホント…
「逆巻シュウを暗殺したいから殺し屋を雇いたい。」
部屋の隅で蹲ってそう呟いたら気を利かせた花子とアズサがぽんと俺の肩に優しく手を置いてくれた。
…もうお前達だけが俺の心のよりどころである。
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