溺愛的誕生日
「そう言えば穀潰し。もうすぐ花子さんの誕生日ですが、貴方…何か贈り物用意してるのですか?」
「…………は?」
何もない通常運転過ぎる日常の中、このレイジの一言でさっきまでうとうとしていたのに一気に目が覚めてしまい
ツカツカと詰め寄って勢いよくその胸倉をつかみ上げる。
「おいどう言う事だレイジ。なんでお前が花子の誕生日知ってるんだというか俺でさえ教えられてないってのに。」
「私だって好き好んで知ったわけではないですよ。彼女を陥れるときに色々情報収取した際に偶然手に入れた情報です。」
俺に対して嫌悪感丸出しで眉間に皺寄せたレイジの言葉にこっちだって青筋が立ってしまう。
なんで花子はこういう大事な事を俺に伝えないんだ馬鹿。
人間にとって誕生日って特別な日じゃないのか。
イライラとしていればレイジが俺の考えを読み取ったのか
大袈裟に溜息を吐いて俺の手を払いのける。
「大方“自分ごときが大天使にお祝いなど恐れ多い”などそう言った下らない理由でしょう。全く…両想いなくせにすれ違わないで頂きたい。見ているこっちが腹立たしい。」
「………ちっ」
レイジの嫌味なんか聞いてる暇はなくて
俺は小さく舌打ちをしてそのまま腰を痛めて寝込んでる某末っ子の元へと足を向けた。
「お、おう花子…えっと、その…なんだ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ…」
「ん?なぁに?スバル君。算数の問題がとけないの?」
「こ、高校だからもう算数じゃねぇし!!数学だし!!!馬鹿にすんなクソ馬鹿花子!!!……はっ!」
ビシリ。
俺の恐ろしい視線に気付いたスバルが花子への罵声を途中で放棄して一度咳払いをする。
今スバルと花子はリビングでふたりきり。
そして俺はそんな二人を扉の向こうで見守っている。
永遠を生きる俺達吸血鬼は誕生日とかそんなのどうでもいいけれど
刹那しか生きる事の出来ない人間…花子にとってそれは毎年毎年特別なものだろうし
今回は俺と付き合い始めて初めての誕生日だからちょっと何かしてやりたいとからしくない考えを巡らせて
てっとり早く花子の一番欲しいものをくれてやろうとは思ったまではいいけれど…
流石に直接聞くのは何だか恥ずかしくて、最近俺の言動にときめきすぎた花子に遂に腰が変な音たててしまって寝込んでたスバルを叩き起こして
滅多に使わない威圧で脅し、彼に花子の欲しいものを聴きだす役目を背負わせた。
けれどやっぱり流石花子。
俺の予想をいつだって斜め上へと行ってしまう。
「花子の好きなものは何だ?」
「シュウさん」
「…花子の欲しいものは何だ?」
「シュウさん」
「……花子のお気に入りのモノは何だ?」
「シュウさん」
「………花子の好きな食べ物は何だ?」
「シュウさ…はっ!どうしようスバル君!!シュウさん食べものじゃなかった!!!」
…………。
おいスバル。
すげぇ困った目でこっち見るな。俺だって今顔面真っ赤だよ。
花子の欲しいものが聞きたかったのに
スバルの問いの答えが全て俺でもうなんか…うん。
花子が俺の事好きすぎてツラいのを再確認しかできなかった。
「…どうするんだよ、プレゼント。」
へなへなとその場に座り込んで頭を抱えてしまう。
だって仕方ない。
花子の好きなものも欲しいものもお気に入りも好物も全部俺なんだ。
だからって馬鹿正直に俺をプレゼントなんてしてみろ。
花子が誕生日に感激で心臓発作起こしてそのまま命日となって葬式直行フラグだ。
「………くそう。」
何とか頭をフル回転させてひとつだけ思い浮かんだものを作るべく、俺は忌々しいレイジの元へと向かった。
ていうか、この俺が、手作りをするとか…ホント、何事。
そして数日後…
「………。」
「ええと、こ、コンバンハ、ボクシュウくんだよ…きょ、きょうから花子ちゃんと一緒…ダヨ?」
「ひぎぃ!!!!」
さっきの女とは思えない断末魔は俺の最愛のモノだ。
そして彼女の目の前の俺はこれ以上ってない位顔が真っ赤で、両手は絆創膏まみれ。
そんな傷だらけの手の中でぴょこぴょこ動いてるのは10分の1位のデフォルメされた俺。
いや、うん。考えた…すげぇ考えたんだよ俺だって。
俺モチーフのアクセサリーとか服とかさ…
でもコイツいつだって着飾ってないし、そういうのは前足元でプレゼントしてしまってるし
誕生日なのに既にくれてやったのと同じようなものってどうなんだって思ってだな…くそう。
「おい花子、起きろ。悶絶から帰ってこい。ぬいぐるみ動かしてる俺の身にもなれ恥ずかしい。」
「だ、だって…て、天使が天使ちゃんをぴょこぴょこ…ぴょこぴょこ…うぐぐぐ…どうしてシュウさんに白い羽が生えてないのか疑問でならない。」
ぶるぶるとその場で蹲って震えまくってる自分の彼女の言葉に更に恥ずかしくなって
おもいっきり彼女目がけてお手製のぬいぐるみを投げつける。
背中に当たったそれはばいーんとバウンドして宙に浮いたけれど花子が大慌てでそれを両手で包み込む。
「えっと…誕生日、おめでとう。」
「……うぅ…うええええん、て、天使が天使を産みだして私に施し…ぐすっ、シュウさんのお子さん大事にします。」
「なんで俺が母親設定なんだ俺はどう見たって男だろ馬鹿花子」
予想通り感激で大泣きしてしまった花子にでかい溜息をついてその額をコツンと小突く。
ったく…そういう発想よく出てくるよな。
まぁ取りあえず…
チラリと自室の扉を見つめる。
少し開いた部屋の向こうには沢山の花子曰く俺の子供たち。
ったく…ホント、慣れない事はするもんじゃない。
この小さなぬいぐるみを完成させるのに少なくとも100体分くらいは失敗してるんだ。
お蔭で手だってボロボロと言うか針の刺し傷だらけだし…
でも、うん…こんだけ喜んでくれたならまぁ…報われるって奴か。
「なぁ花子、今日はコイツぎゅってしながら寝るの?」
「えぇ!?そんな恐れ多い事!!この子をベッドで寝かせて私は床で寝ます!!!」
「はぁ……ちょっと貸せ。」
俺の問いにやっぱり斜め上すぎる回答しかしない最愛に溜息をついて小さな俺をひょいっと彼女の腕から取り上げる。
部屋の主が床で寝て単なるぬいぐるみがふかふかのベッドで寝るって何事だよそこまで大切にしなくていいから。
こういうのはすごく恥ずかしいけれど、このまま花子が床で眠って風邪でも引いてしまったら嫌だから俺は恥を忍んでひとつ、咳払い。
「…、花子ちゃん、花子ちゃん、ボ、ボク…花子ちゃんと一緒にベッドで寝たいなぁ〜…だ、ダメ?」
「んんんんんんじゅうざあああああああ!!!!!!一緒に寝ようねえええええええ…っ!!!」
普段より高めな声とぴょこぴょこ動くぬいぐるみに花子はもはやノックアウト状態で
限界を迎えたその体はぼふんと音を立ててその場に崩れ落ちてしまった。
ホント…誕生日位はもうちょっと頑張れよ。失神したらもうこれ以上は祝えないじゃないか。
「ま…これも花子らしいか。」
ひょいっと彼女を抱え上げてベッドへと移動。
ゆっくりと寝かせてやって傍に自身の手作りぬいぐるみを置いてやる。
うん…なんかかわいい。
「おやすみ、花子。」
失神してる彼女の唇に気付かれないようにキス。
ホントは目を覚ましてる時にしたいんだけど…そんな事してみろ、それこそスバルの腰は粉末状になるわ花子だってまたぶっ倒れるわの大惨事だ。
「来年は俺自身をプレゼントできたらいいな…」
驚く位らしくなさ過ぎるそんな言葉を口にしてしまい、1人でおかしくなって笑ってしまう。
ああもう、俺っていつの間にこんなに花子に対して必死になったんだっけ?
戻る