ネガティブ的誕生日
「ここはルキ君の男体盛り一択だと思うんだよね。」
「…ルキ自身を花子にプレゼント?ふざけるな俺がそんなの許さない。」
「るせぇ!ニートは黙ってろ!!いやでもすっぽんぽんのルキはちーっと刺激強すぎねぇか?」
「だよねぇ…せめて麻縄で亀甲縛りくらいはアレンジしてあげないと…」
「花子と、ルキの…初夜は…儀式並に、神聖じゃないと…許さない。ライトさん、黙って…」
ど、どうしよう…!!!
私は今教室の扉の前でガチガチに固まってしまって全身から汗を流して顔は真っ青でいて真っ赤だ。
そして先程まで扉に手をかけていたけれどその手は今自身の頭を抱え込んでいる。
現在教室内でイケメン吸血鬼会議が行われている。
チラリと少しだけ開いている扉の空間から様子を覗き込めば机を円状に並び替えてそれぞれ真剣な面持ちで意見を言い合っているようだけれど…
う、うん。ルキさんの男体盛りだけは避けて頂きたいところである。
弟さん達の姿が見当たらないからと言う事でルキさんと私で手分けして探していればこのありさまだ。
実は明日、私の誕生日なのだけれどまさか彼らがこんなにも真剣に考えてくれてるなんて思っていなかったのですごく嬉しい…
嬉しいのだが…
「500歩譲ってルキをプレゼントしたとして、アイツが花子にやらかさないように手足は縛れ」
「まさかの緊縛焦らしプレイ!?花子ちゃん…ちゃんとルキを責めれるかなぁ…ううん!お友達として心配っ!」
「………まぁ、それがアイツ等の愛の形なら俺はなんも言わねぇけど。」
「いやいやいやいや言おう?そこは言おう?ユーマ君。俺、お兄ちゃんが花子ちゃんに抱かれるとかやだよ。」
「………俺も、みとめない。」
取りあえず誕生日にルキさんをプレゼントから是非離れて頂きたいというかルキさんの誕生日も私をプレゼントとか言ってた気がする。
あれ、吸血鬼の世界では誕生日に最愛自身をプレゼントするのが流行ってるのか?
けれどそこで、ルキさんの誕生日に私を選んで譲らなかった彼らの言葉を思いだした。
「…………うわぁ。」
思わずその場にへたりと座り込む。
だって前、どうしてルキさんへのプレゼントに私なんだと聞けば彼等はルキさんが喜ぶ事全てに私が関連してるって言ってた。
つまり今回、彼らが私へのプレゼントとしてルキさんを選ぶという事はそう言う事で…
「そ、そんなに私…うぅ、」
思わず両手で自身の顔を隠す。
でも、うん…そう、そうか。
私、ルキさんといるときいつだって幸せだった。
「も、もうルキさんの男体盛りでもいいかな…」
「ふざけるな誰がそんな卑猥な贈り物許してたまるか」
「………デスヨネ。」
後ろからとんでもなく低くて恐ろしい声が聞こえたので
ギギギと首を向ければ綺麗なお顔に何本もの青筋を浮かべて眉をヒクヒク動かしてる最愛の姿。
そのあまりにも恐ろし過ぎる光景に思わず真顔になってしまう。
「全く…姿が見えないと思ったらこんな所に…というかどうして逆巻シュウと逆巻ライトも一緒なんだ。」
「ううん、シュウさんは分かりませんがライトさんは私のお友達なのできっと一緒にプレゼント考えてくださってるんだと思います。」
二人で扉の隙間から次第にヒートアップしていく会議をこっそりのぞきながらそんな会話。
なんだか自分で言っててアレだけど少しくすぐったいなぁ。
「花子、よかったな。お前の誕生日、こんなにも一生懸命考えてくれる輩が出来て。」
「そうですね。ふふ…プレゼント、何になるんでしょう。」
「まぁ…その、なんだ。俺も…ちゃんと、考えているから。」
小さな咳払いが聞こえたかと思うとふわりと頭に優しい感触。
嗚呼、私…こうしてルキさんに撫でられるの、実は結構好きかもしれない。
「ルキさん、ありがとうござ、」
彼に感謝の言葉を紡ごうとした時、遂にヒートアップしすぎた会議に大きな声がこだまする。
「わかった!!いっそルキをケーキにすればいいんだよ!!そしたら生クリームプレイが出来て一石二鳥じゃない!?んふっ♪」
「おお!なら家庭菜園のとっておきの苺を収穫しねぇと!!やっぱでけぇのがいいよなぁ」
「キャンドル!キャンドルどうしよう!!やっぱりルキ君の格好いいイメージに合わせて黒かな!?あ、でも黒魔術っぽくなっちゃう!?」
「甘いの…ばっかりじゃ、飽きる、から…ここは俺特製の…一味唐辛子…」
「……………いいんじゃないか?くくっ」
最終的に全員の意見が合致してしまい、私の誕生日にルキさんは生クリームまみれで黒いキャンドルをさされて更には一味をブレンドされる大惨事が決定してしまい、
思わず「ぶっ!」と本人から変な声が出てしまって、その後すぐにふわりと私の体が宙に浮いた。
「ええと、ルキさん?」
「逃げるぞ」
「え、ちょ…まっ!」
私を小脇に抱えたまま問答無用で何処かへ走り抜けるルキさんに思わず笑ってしまう。
だってルキさん、すごく真剣と言うか…必死な表情なんだもの。
「そ、そんなにバースデーケーキになるの嫌だったんですか?ふふ…っ」
「当たり前だ黙って聞いていればもはや苛めじゃないか。何で花子の誕生日に痴態を晒さなければならないんだふざけるな。」
廊下を走り抜けてそのまま昇降口へ。
キュッと曲がり角もスマートに方向転換してそのまま全力疾走だ。
「全く…花子、誕生日なんだが俺とふたりきりで頼む。俺はまだ羞恥で死にたくはない。」
「え…じゃぁもしかしなくてもこのまま…」
「ああ、少しばかりの逃避行と行こうじゃないか。」
思わぬ言葉にドキリと心臓が高鳴ればそれを肯定してしまう彼の言葉と笑顔に再度心臓が跳ね上がる。
心のどこかでルキさんと誕生日、ふたりきりで過ごせたら…なんて図々しい事を考えていたから余計に嬉しい。
「ルキさ………あ、」
「?どうした、花子」
昇降口を飛び出して不意に見上げればそこに映ったのは先程までとんでもない会議をしていた5人の吸血鬼さん達の笑顔。
みんなこちらを見降ろして手を振ってくれている。
…ええと、もしかしなくとも今まで大袈裟に話し合ってたのって
「私達が見てたの知って…?ふふ…ふふふっ」
「?さっきから何を笑ってるんだ?どこかぶつけたか?」
「い、いえ…なんでも…ふふっ」
遠回しすぎる彼らの優しさが嬉しくて笑顔も声も収まらない。
ありがとうございます。誕生日プレゼント、しっかり受け取りますね。
「ルキさん、ルキさん…このままどちらへ行くのですか?」
「ああ、そうだな…決めてなかったが…花子の行きたいところへ行こう。折角の誕生日だしな。」
「そうですね…ルキさんと二人きりならどこでもいいんですが…ええと、ええと…」
彼らがくれた、“最愛とのふたりきりの時間”を大切に使おうと
自分の希望を頭でフル回転して考える。
嗚呼、もしかしなくともこんな幸せな誕生日
生まれて初めてじゃないだろうか。
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