弟の恋


私の弟は救いようのない変態。
その目に余りすぎる行動に何度胃を荒らされたことか。
だが…
だがしかし。





「ああん!ライト君!!今日はどのおもちゃにする?あ、それとも薬?嗚呼、でも両方も素敵だね!」



「まってまって花子ちゃんその手に持ってるの僕見たことないそれどこにツッコム気?あ、まって聞きたくないとりあえず手を放して怖い。」




いつものように花子さんがライトの腕にぎゅっと抱き着くが
ライトの表情は恐怖で引き攣り、花子さんは反対にとても幸せそうな微笑みを浮かべている。
そう…彼女はド変態。
ライトの上を行く珍しすぎるド変態。
どこをどうしてそうなったのか…



変態は自身の上をいうド変態に恋をした。





「んー…昨日のはあまりお気に召さなかったみたいだからもっと強いのがいい?」



「いやいやいやもうアレで精一杯だよアレ以上されたら僕、壊れちゃう。」



「え!?壊れてくれるの!?私の手で!?わぁ…がんばるっ!」



「余計なこと!僕、間違いなく余計な事言っちゃった!!」



抱き着く彼女を自身の腕の中へと収めてぎゅうぎゅうと強めに抱き締める意味を私は知っている。
花子さんが愛おしくてもあるだろうが、それと同時に彼女の動きを抑えるためだ。
少しでも今自由にしてしまうと花子さんの手に持っているその…大人の玩具が今ここでライトに突っ込まれてしまうのだろう。




そんなの私だって見たくありませんよ。




そしてライトの失言に腕の中の彼女はパアアと輝いて嬉しそうにすりすりと胸元へ擦り寄る…
そこだけ見ていれば微笑ましいカップルなのだが彼氏であるライトは自身の発言に後悔して泣いてますからね。




「ちょ、ちょっとレイジ!!さっきから見てないで花子ちゃん!!花子ちゃんを窘めてよ!!」



「……貴方の最愛でしょう。貴方が何とかなさい。」



こちらの視線に気付いていたライトが暴走しかかっている花子さんを必死に抑えながら助けを求めるが
私はそんな懇願の言葉をスパリと切り捨てた。
………私だって自身の身が可愛いのですここで邪魔をしてしまっては彼女の毒牙がこちらへ向かってきてしまうやも知れない。




「………こんなにぎゅうってされてたらライト君に何も出来ない。」



「はぁ…そんな可愛い顔でしょんぼりしないでよ花子ちゃん。お部屋なら…ね?んふっ♪」



「!やっぱり私のお願い聞いてくれるライト君だいすき!」




彼の腕の中で悲しげに眉を下げた花子さんを見つめて少しばかり頬を染めながらも妥協案を出してしまうライトに首を傾げる。
このまま押さえつければいいのにどうして…
しかし彼女はライトの腕の中で嬉しそうにはしゃぎ、自身からもぎゅうぎゅうと彼に抱き着いて頬を寄せる。




「ああ………やはりライトは変態に変わりないですね。」




その様子をずっと見ていて小さく笑って呟いた。
何故って…ライトの顔、本当に…





本当に嬉しそうな顔をしているから。




「そんなに嬉しいですか?ド変態に愛され尽くされるのが。」




小さな言葉は誰にも拾われることは無かったがそういう事だろう。
彼女の変態行為は愛情表現。
それを分かり切っているライトはいくらひどい目に遭ったとしても最終的にはこうして彼女の願いを聞き入れてしまう。




あんなド変態に愛されて喜ぶなんて彼も相当なモノだ




「嗚呼、ライト…貴方は変わっていませんね。」




花子さんに引きずられる形でリビングを後にした二人を見送ってまた笑う。
彼女の愛情表現を受け入れることが出来るなんてこの世にライトくらいの変態しかいないだろう。



「お二人、お似合いですよ。」




救われたのは愛される喜びをもらったライトなのか
それとも個性的すぎる愛し方を受け入れてもらった彼女なのか…
はたまた両方か…それはわからないけれど。




「さて、マカロンでも作りますか」




二人が幸せそうに変態プレイに興じた後は必ず彼氏であるライトが泣きついてくるのは勘弁願いたいですがね。
なんて…



実はそういう所も楽しんでいる、なんて…
本人に聞かれたら怒られてしまうかもしれないけれど。




愛されて幸せそうに笑い、泣いてしまう弟の顔は正直嫌いではない。



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