構ってちゃんの悪戯


「………こんな事が二度起こるとは思ってなかった花子ちゃんもうちょっとカールハインツ様構ってよ」



「寂しがりな王様がメル友だと苦労するわー。」




二人で真顔でそんな台詞。
今俺たちは狭くて真っ白な部屋に閉じ込められてます二度目だ。



「んもおおおお!!今度は!!今度は何したら扉開くのかな!?怖い!!空から降ってくるお題が怖い!!」



「まぁ何が来たところで頑張って答えて見せよう……コウ君が。」



「俺!?俺なの!?ちょっと花子ちゃん彼氏の扱い雑すぎるよネェ!!!」



だんだんとその場で地団駄を踏んで扱い酷い自身の最愛にひたすら文句。
そう…以前もこんな風に暇を持て余してしまったカールハンツ様に何かの指令をクリアしないと外に出れない小部屋に閉じ込められてしまったのだがそれの二回目らしい。
前は俺か花子ちゃんが泣かないと出れないって酷い内容だったけど今回…今回は一体何がやってくるんだ!!




そんなことを考えていればヒラリと以前のように空から一枚の紙が舞い降りた。
すかさずそれを取ってじっと中身を見た瞬間俺の顔はぼふんと音を立てて赤くなってしまう。
………俺、カールハインツ様に何かひどい事しちゃったりしたかな!?




「なになに?コウ君何かいて………ほう?」



「い、いやいやいやいや言わない…ぜぇぇったい言わないからねこんなの!!」



俺の反応に疑問を持った花子ちゃんがひょいと横から指令所を覗き見たけれど
その顔は次第にニタリとゲスい笑いになってにやにやと笑みを浮かべながらつんつんと肘で突いてくる。
俺はそんな彼女に対してぶんぶんと勢いよく首を何度も横に振るけれど俺も分かってる…




この指令を達成しない限りここから出ることは出来ない。




「ええー…と、あの…うんと、えっと」



「………、」



きょろきょろと視線を泳がして気持ちを落ち着かせる。
その間にも花子ちゃんのにまにまは止まらない。
じっと黙ったままコチラを見つめるばかりである。



「〜っっ!もおおおお!NAME1ちゃん!!ちょっとは!!ちょっとは俺の緊張をほぐす手伝いしたらどうなの!!」



「え〜?私は一刻も早くここから出たいなぁ…そしてサカマキング達の元へタイブしたい。」



「なんだよそれ!!お、俺が!!俺が今からいう事聞くの分かっててそんな事言っちゃってさ!!」



だんだんともう一度、今度はさっきよりももっと強い地団駄。
もうもう!カールハインツ様!!もう二度とカールハインツ様に寂しい想いさせちゃだめだ!!こんな目に合っちゃう!!
あれ!?いつの間にコウ×カールハインツ様みたいになってんの!?なんかヤダ!!



すーはーと深い深呼吸をして恥ずかしさで少し涙目になりながら
じっと未だににやにやしてる彼女を見つめる。
うう…恥ずかしい、こういうの…ほんっと恥ずかしい。




「………俺に向ける笑顔。」



「……うん、」



「う…う…俺にだけ…愛してるって…言ってくれるとこ…」



「………うん、」



「も………もうやだぁ…」




言葉を紡ぐたびに声が震えるのがわかる。
恥ずかしい…こんな面と向かってとか…もう死んじゃいたい。
でもこれを言わないとどうしてもここから出ることが出来ない。


恥ずかしすぎて足の力が抜けたのか、へなへなとその場に崩れ落ちてしまえばコツコツと近付いてくる足音。
ここには俺と彼女しかいないので間違いなくこれは花子ちゃんのものだ。
ゆったりと下を向いていた顔を上げてみれば至近距離に彼女の顔。
さっきまで赤かった顔はそれだけでもっともっと赤くなってしまう。
………こんなんだから総受けって言われちゃうんだ。



「コウ君、あとひとつ。」



もう限界ってぶるぶる震えてればどこまでも優しい声色でそんな事言っちゃう花子ちゃんは俺と違ってどこまでもイケメンで…
もしかしたら自分で言うのもなんだけど可愛い可愛い総受けな俺とどこまでイケメンな花子ちゃんでちょうどいいバランスとれてるんじゃないかなぁ…なんて。
でも俺だってこんな可愛い所ばっかり見られてるだけで終わりたくない。
ブルブルと震えながらもそっと何の断りもなしに彼女の唇を塞いだ。



「コウ君」



ふわり、
先程までゲスな笑みを浮かべていた彼女の表情が和らいだ。
嗚呼、そう…それが一番の…



「俺にしか見せないその顔。」




ガチャリ




扉が静かに開く音が聞こえた。
嗚呼もう、こんな茶番二度とごめんだ。




「さーて、扉開いたことだし逆巻さんの所へ行こう!!」



「ちょ、ちょっと待って!!今!今めちゃめちゃいい雰囲気だったよね俺達!!何で!!何でそういちいちフラグバキバキにしちゃうわけ!?たまには大事に抱き締めてよフラグと俺を!!!」



さっきまで暖かい雰囲気だったのに、扉が開いたとたん彼女の顔は獲物を捕らえるようなものになって
一目散に俺を置いてその場から飛び出した。
そして残された俺はいつものように叫ぶのだ。



「馬鹿!花子ちゃんの馬鹿!腐女子!!!だいすきなんだからねっ!!!」



手に握られた指令所
『無神コウは花子の目を見て彼女の愛おしくて仕方ないことろを3つ述べよ』
と書かれた文字は俺の叫びと共にくしゃりと握りつぶされた。




ホント、恥ずかしくて死ぬかと思った…
でもまぁ…



「隠せてないよばーか」



走り去る彼女の少しばかり赤い耳を見れたのでまぁ…
今回ばかりは王様の構ってちゃん的な悪戯も多めに見るとしようか。



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