赤い糸争奪戦
俺の恋のライバル、それが普通の人間や同等の吸血鬼だったらよかった。
ホントに、よかった。
「ふむ…これは意外と難しいね。」
「頑張って!ここを…こうしたら、ホラっ!!」
「おお、花子は器用だね」
「……………」
赤い毛糸で二人、楽しそうにあやとりをしている光景を只々じっと見つめる。
普段なら自分の想い人がこうやって他の奴といちゃいちゃいちゃしてたら
相手をボコボコにしてやるのだが今回ばかりはそうはいかない。
「おや、随分とご機嫌ななめのようだねユーマ」
「いえ…べつに、」
手に赤い糸を絡ませながらキョトンとしたご様子で彼は…カールハインツ様はこちらを覗き込む。
そして俺の想い人である花子もこちらを向いて彼と同じようにキョトンと首を傾げる。
それはうまい具合にシンクロしてしまっていてムカつくけど正直二人とも可愛い。
「ユーマ君機嫌悪いの?…もしかして私と一緒に居るの、嫌?」
「ち、ちげぇよ!!そうじゃねぇし!!!寧ろうれ…っ、あ、」
言いかけた言葉をとっさに飲み込む。
だって言えない。
花子の事、スゲェ好き。好きだけど…
多分…いや確実に。
チラリとカールハインツ様を見る。
彼は相変わらずニコニコと両手で赤い糸を弄びながらもこちらを見つめていた。
カールハインツ様も花子をすげぇ気に入ってる。
だから俺なんかが花子に想いを告げる訳にはいかねぇ。
けれど、カールハインツ様は何を考えたのかわかんねぇがニヤリと意地悪い微笑みを浮かべて
花子の耳元で俺に聴こえるような声で爆弾発言。
「花子、ユーマはどうやら君の事を愛しているようだよ?」
「………え、えぇ!?」
「はぁぁぁぁぁあ!!!?」
神に等しいこの方に対してデカ過ぎる声をあげればカールハインツ様はおかしそうに小さく笑って花子の頬にちゅっと音を立ててキスをする。
同時に俺と花子はビシリと固まってしまった。
「勿論私も花子の事を愛しているから…これからユーマと取りあわせてもらうね?」
「か、か、カールハインツ様!?」
動揺を隠しきれれない俺にずいっと先程まであやとりしていた両手を差し出してきた。
彼の手には綺麗な形をかたどっている赤い糸。
…俺はこんなに器用に糸を弄ぶことはできない。
「ここからは正々堂々と勝負しようじゃないかユーマ。肩書きなんか関係ないさ。」
「…………後悔してもしらねぇッスよ」
彼の手から乱暴にその糸を取り上げてぐしゃぐしゃにして放り投げると
「おや」とまたおかしそうに笑う。
そっちがその気なら俺だって大人とか神様の余裕をぶっ壊してやる。
「花子、こっち来い。俺ならお前だけを愛してやれるから…」
「ゆゆゆゆユーマ君…!」
「これは初めから手厳しいな…怖い怖い」
俺の挑発的な言葉にカールハインツ様は言葉は余裕だけれど
ぎゅっと自由になった両手で花子の体を捉える。
…上等だ。欲しいモンはなんだって奪う。
例え相手が神様であろうとだ。
「覚悟しといてください。俺の本気は結構すごいッスから。」
「ふふ…それは楽しみだ」
平凡な女をかけて俺と神との大戦争が今幕を上げた。
戻る