溺愛の果ての大ゲンカ


「あーくそっ!腹へったなぁ…シチサンメガネにでもたこ焼き作らせっかー。」



そんな独り言をぶつぶつ言いながらキッチンへと向かうと
絶対聞きたくなかった奴の泣き声が聞こえてきて、俺様はさっきまでの呑気な考えを放り投げて血相かえながらその場へとダッシュした。



「おい花子!どうした!何かあったのか!?」


デカい声をあげて彼女の、花子の元へと駆けよればクルリと振り向いた頬には沢山の涙。
そして…



「花子ちゃん!?どうしたの!?泣き声が聞こえたけど僕の知らないところで何のプレイを…って、」



数秒遅れて駆け寄って来たライトも今の俺と同様まるで蛇に睨まれたカエルの様にビシリと固まってしまった。
…実際はうさぎみてぇにクソ可愛い花子に見つめられて、なのだが。



だが今はそうやって花子の可愛さについて惚気ている場合ではない。




いち早く動いたのは俺じゃなくてライトだった。
顔面蒼白のまま花子の手からあるものを勢いよく取り上げて
ずいっと彼女の前に顔を近付ける。
おい、それ以上近付いたらぶっ殺してやっからな!!



けれどそんな俺なんかお構いなしにライトは先程の俺よりでかい声をあげて喚く。



「自殺!ダメ!!絶対!!!!」




そう、花子はなんでかわかんねぇけど、キッチンでボロボロ大粒の涙を零しながら
片手に包丁を持ってこちらを見ていたのだ。


もうその衝撃と言ったらねぇ。
もし俺とライトに心臓ってやつがあるなら確実に10回は止まってる。



「お、おい!花子!何か嫌な事があったのか!?何でこんな事になるまで俺様に話さなかったんだ!!」


「あ、あやとく…うぅ、」




俺様達より小さな体を動揺しすぎて勢いよく何度もガクガクと揺らしてしまえば
ぱっと勢いよく彼女の体をライトに奪われてしまう。
ビキリと青筋を浮かべて睨みつければぎゅうぎゅうと花子を抱き締めながらキッとこちらを睨みつける変態野郎。



「花子ちゃんに乱暴しないでよ!アヤト君の馬鹿!!ねぇ?花子ちゃん…ホントに何があったの?誰かに無理矢理抱かれでもした?別に僕はそんな事で怒らないよ?ちゃんとソイツを殺してからまた僕が愛してあげるから…」



「ら、らいとくん?」



…おい、ライト。
何でその台詞をじっとこっち睨みながら言うんだよ。
それじゃ俺様が花子を襲ったみたいじゃねぇか!!
納得いかない俺様の弟の言動にもう我慢は限界突破だ。



「おいライト!いい加減花子を離しやがれ!!変態菌が写って花子まで変態になったらどうすんだ!!!」



「僕はそんなアブノーマルな花子ちゃんだって愛せるからいいんだよ!それともアヤト君はノーマルな花子ちゃんしか愛せない訳?小さい男だよね!!」



「んだとぉ!?俺様だってどんなマニアックプレイでも応えてみせらぁ!!!」




ライトの挑発に易々と乗ってしまえばもうそこからは地面を転がり落ちるより簡単で、
花子の体を引っ張り合って取りあいながらどんなマニアックプレイを彼女と出来るか論争になってしまった。
するとそんな俺達の争いの中小さく震える声が響き渡る。




「わた、わたし…ノーマルだし…自殺とか、かんがえてない…」




『は?』




小さな彼女の主張に二人してピタリと動きを止めて花子を見やれば
ふるふるとキッチンテーブルを指さした。




その先には大量のたまねぎが散乱していた。




「んだよぉ〜…た、たまねぎか…」



「よ、よかったぁ…僕達てっきり花子ちゃんが何か悲観して死んじゃうんだとばっかり…」




へなへなと、その場で俺とライトがへたり込めば
おずおずと俺達の視線に合わせるようにしゃがんだ花子はとても申し訳なさそうにその眉をはの字に下げた。



「心配かけてごめんなさい…でも、あの…うれし、かった」




えへへと、嬉しそうに笑う花子はぶっちゃけアレだ。イマドキの言葉で言うとぎゃんかわって奴で…
そして俺様とライトは流石三つ子なだけあって
二人動に真顔でサッと携帯を取りだしてカメラモードオンだ。




カシャ




「え!?な、なんで私を撮ったの!?二人とも!!!」




ボフンと顔を赤くしてわたわたし始める花子も、問答無用で携帯に収めれば
俺様とライトは心底意地悪そうな顔で花子に微笑みかけた。




『心配料、確かに頂きました!』



「ひ、ひどい!二人が勝手に勘違いしただけなのに!!」




んなの知るか。
俺様達をここまで心配させるだけ夢中にさせた花子が悪い。



それはどうやらライトも同じだったようでバチリと目が合ってお互いにニヤリと笑って宣戦布告。




(今度花子を心配できるのは俺様だけだ!)


(今度花子ちゃんを慰めてあげるのは僕だけだ!)




静かな俺達の戦争が始まった。



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