二人の構ってちゃん


困った…困ったけれど、嬉しい!
困った!!!




「えへへ〜久々に花子ちゃんを充電だぁ」



「あ…あわわわ、コ、コウ君…!」




ぎゅうぎゅう、そんな言葉がよく似合うくらい私は今コウ君に前から抱き締められてしまっている。


最近ずっと芸能界のお仕事が忙しかったらしくて暫く会えなかった。
だから今日、コウ君は私を見るなりその綺麗な瞳にじわりと涙を浮かべて
大きな声で「花子ちゃーん!!」と叫んでそのまま抱き付いてきてしまって現在に至る。



「あ、あの…コウ君、こんな所コウ君ファンの子に見られちゃったら…!」



「知らないよそんなの!…それとも花子ちゃんは俺にこうやってぎゅってさっれるの…いや?」




小 悪 魔 か !!!!



そんなしょんぼりと泣きそうな顔でそんな事言わないでよコウ君!!
嫌な訳ないじゃない!!嬉しい…すっごく嬉しいよ!!!


そんな気持ちを込めて自分からもぎゅうぎゅうと彼に抱き付けばコウ君の顔は嬉しそうな笑顔に変わる。
嗚呼、この顔をさせているのが私だって思うとなんだかすごく嬉しい…
けれどそんなほんわかした雰囲気もここまでだった。




ゴチンっ!




「いいいいいいったぁぁぁぁぁ!!!?」




彼の頭に白手袋のげんこつが降って来たのだ。
驚いて体を固めているとぐいっと後ろに引っ張られてしまう。
そして見知った香りにドキリと心臓が高鳴る。




「全くあなた方は…少しは節度というモノを考えてはいかがですか?」


「れ、レイジさん!」



「なんだよー!俺と花子ちゃんの甘い時間を邪魔しないでよねー!!!」




レイジさんに引っ張られて離れてしまったコウ君との距離が少し悲しくてがっかりしていればレイジさんが大きな溜息。



「全く…貴女も貴女ですよ、花子さん。こんな公共の面前で…恥を知りなさい。」



「…ごめんなさい。」



まぁ確かにそうかもしれない。
だってここは学校の廊下だし…人通りが少ないとは言え、誰かが先程のシーンを見てしまえばいい気分はしないだろう。
しゅんっと反省していれば今度はコウ君が意地悪な顔をしてレイジさんにたてついた。



「なになに〜?レイジ君ってば俺と花子ちゃんがいちゃいちゃしてるからやきもち妬いちゃったの?」



…もう、コウ君ってば。そんな訳ないじゃない。
レイジさんは只私達が所構わずじゃれついていたのを注意してくれただけで…



「ええ、その通りですよ」



「え」


「え」




彼の何を当然の事を言っているのだと言うような声のトーンでのそんな台詞に私もコウ君もビシリと固まってしまった。


私はてっきり「何を馬鹿な事を!」って怒りだしてまたコウ君の頭にげんこつを降らせるんだと思っていたのだけれど。
レイジさんはそんな私を見つめてニッコリと優しげに微笑んだ。



「花子さんはご存じないでしょうが、私だって愛しい人が他の男とじゃれていて平常心でいられるほど出来た男ではないのですよ?」



「れ、レイジさ…!?」



そんな言葉と共に降って来た頬に冷たく柔らかな感触に
私の顔面は盛大に赤面してしまったが、更に追い打ちをかけた彼の耳元での甘い台詞にもう赤と言うか何だか別の色に私の顔は変色してしまいそうだ。



「ねぇ花子…私も、構って?」



「れれれれれれれレイレイレイジさ…」



「ちょっとー!!!な、な、何俺の花子ちゃんのほっぺにチューしてんの!?せ、節度!節度はどうしたのさ!!」




わなわなと震えながらレイジさんを涙目で睨みつけるコウ君に対して
レイジさんはクスクスと上品に頬んだ。



「おや、あなた方が守らなかったものをどうして私が守らなければいけないのでしょうか…ねぇ?」



「あーもう!あったまきた!!花子ちゃんを返せ!!!」



くたりと首を傾げてコウ君を挑発しちゃったらもう大変だ。
強制的にコウ君に抱き寄せられてそのまま食べるように唇を奪われてしまう。
ああ!どうしよう!わたし、アイドルとキスとか…!



パニックになってしまっていればコウ君は優しく微笑んで、また私の顔を覗き込む。



「ねぇ花子ちゃん…あんなのより、俺の事を構ってくれるでしょ?俺の方が花子ちゃんの事大好きなんだから」



「随分な言われようですが…子供の様に無理矢理唇を奪って愛情を懇願して、余裕がないのも程がありますよ。」



「うるさいっ!紳士の皮を被った野獣め!もうぜぇーったい花子ちゃんは渡さないんだから!!」




折れちゃうんじゃないかって位強く抱き締められてコウ君はそのままレイジさんに宣戦布告。
すると彼は未だに余裕めいた微笑みを崩すことはない。



「えぇどうぞ。私…こう見えても奪うの、得意なものですから………ほらね?」



彼のそんな台詞の元、ふわりと体が宙に浮いたかと思うと
気が付けばとんでもない格好だった私はもう今すぐにこのまま死んでしまいたい。



「レイジさん!おひ、お姫様抱っことか!!!あのココ、廊下!!!!」



「花子さんは守らなかったじゃないですか。ならもう、いりませんよね?……節度」



「ああもう!お前ホント、ぶっ殺してやる!!」



レイジさんの腕の中バタバタ暴れてみても全然効果がなくて
その代りコウ君の顔にビキリと青筋が浮かんでしまった。
いかん…これ、うぬぼれじゃなくて確実に私を巡って戦争が起きる…!



とりあえず今後廊下でむやみやたらとじゃれつくのはよそうと反省しまくった深夜。
節度、超大事。



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