魅力的なお誘い


俺は誇り高き始祖で
花子は普通の人間で…
そんな女なんかに恋心抱くなって全く思ってなかったんだけど……うん、




好きになっちゃったもんはしょうがないし
そもそも始祖様に惚れられたんだから花子だって光栄だって思ってる。




なのに…なのにこれだよ!!!





「ねぇねぇ、カナト君。このお洋服とかどうかなぁ」



「うーん…これも可愛いと言えば可愛いですけど……ちょっとフリルが多すぎな気がします」



「そっか!何でもあればいいってもんじゃないのか!!!流石カナト君っ!頼りになるよ!!」



「…………。」




今俺のだいすきな花子は目の前の下等な吸血鬼ときゃっきゃと大はしゃぎ。
俺のイライラは収まらない。こんなの使い魔呼んで滅茶苦茶にしてやってもいいけれどそんな事したら花子に嫌われるのは分かっているので我慢だ。
くそ……なんでこの俺が我慢しなきゃならないんだ。
そもそもこの空間吸血鬼くさいし。無理。でも花子の傍にはいたい。この葛藤。
自分で言うのもあれだけれど花子が好きすぎてつらい。




「あれ?シン、さっきから不機嫌顔ですね。僕と花子さんとの会話に入れないから不満なんですか?ふふっ」



「そんな訳ないだろ!!!花子の乙女趣味に付き合えるカナトが気色悪いなとか思ってたけどね」



「は?」




さっきから刺さるような嫉妬やその他諸々複雑な気持ちで視線を送っていれば
それに気づいたカナトが最高に嫌味な微笑みでこちらを見つめてそんな台詞。
吸血鬼ごときに俺の本心を射貫かれて少しばかり大きな声を出してしまったがすぐにいつもの調子を取り戻してこちらも嫌味をひとつ。
すると奴の頬に一筋ビキリと青筋が立ったのでニタリと口角を上げて嘲笑った。
全く……本当に下等種族は煽り耐性0だよね。




「でも私、この趣味はいつも誰にも理解してもらえないからカナト君には本当に感謝してるんだけどなぁ…」



「………………そうですよね。特にお高くとまっていて花子さんの可愛いお人形への愛情を理解できない始祖なんかとは話なんて会いませんよねぇ?」



「……………くそっ!」




一触即発の空気を一気に壊してしまったのは花子の少ししょんぼりした言葉だった。
そう…俺が愛してしまった彼女は可愛いものが大好き。
特に人形には目がないらしく、先程から同じく人形などが好きなカナトとソイツに着せるための服選びで話が盛り上がっている。
………正直俺には理解できないし、しようとは思わないそんなの気持ち悪いと思うし。
でも、でも……





花子の事は好きだから、
傍にいるのも話を聞くのも全部俺でいたいんだよね…




そんな事を考えながら再び二人の世界に入ってしまった花子とカナトを少し離れた場所で見つめてればまたカナトと目が合った。
そしてそんな彼のニタリとした微笑とその「どうだ、羨ましいだろ」と言った目つきで俺は彼の考えにさっと血の気が引いてしまう感覚を覚えてしまう。




え、ちょっとまって
これ、カナトも花子の事好きな訳!?




「……っ!……っっ!」




予想外のカナトの気持に気付いてしまえばもう全部が気になってしまう。
ちょっとちょっと花子と距離近すぎじゃない?
あれ、人形の服触ると見せかけて指さわってんじゃない!
あ、あ!視線!!!視線を人形じゃなくて花子へ向けてる!!!やばい!!!





このまま見てるだけだと
下等種族に花子が取られてしまう!!!





「あああああもう!」



「シン君!?どうしたの!?」



「ちょっとシン!何するんですか!!今僕は花子さんと…っ!」



「花子!」




遂に耐え切れずに二人の間に割ってしまえば困惑の声と激怒の声。
けどもう俺だって限界。無理。
このまま始祖だから―とか花子の趣味理解できないからーとかで放っておいたら花子をカナトに取られてしまう。
そんなの……それだけは始祖のプライド守るよりもっと嫌だ!




「俺だって……俺だって人形じゃないけど可愛いから!!」



ぼふんっ




「!わ……わぁぁぁ!可愛い!!」



「あ、ちょ……っシン!それは狡いです!!反則ですよ!?」




ギロリと花子を睨みつけて始祖のプライドをかなぐり捨てて彼女のご機嫌取りの為に姿を変える。
すると彼女はぱああと目を輝かせて俺にぎゅうっと抱き着いてきてしまった。
嗚呼、俺……始祖でオオカミに変身出来て本当によかった!!!




「ね、ねぇねぇシン君!あの……もふもふって…もふもふってしてもいい!?」



「い、いいけど……ってわ、く、くすぐったい…っ」



「シン!!!花子さんから離れろよ!!!ムカツキます!!」




嬉しそうに俺の首元に顔を埋めてもふもふと毛並みの手触りを楽しむ花子に
くすぐったさと、嬉しさと、恥ずかしさとが入り混じって声がビックリするくらい上機嫌になってしまっているのが自分でもわかる。



そして今は俺が花子に抱き着かれてカナトが悔しい思いをしていると言う形勢逆転。
もはや俺のドヤ顔は止まらない。




「(ぜーったい花子は渡さないからねっ)」



「(花子さんが離れた瞬間消し炭にしてやる…っ!)」




俺の毛並みでもふもふして幸せそうな彼女に気付かれないように
視線と視線でリアルファイト。
負けない…始祖のプライドを捨てて女に媚びる位俺はこんなにも花子に夢中なんだから
こんなヴァンパイアなんかに負けてたまるかってんだ!





今、カナトの花子への恋心が判明したこの瞬間
始祖と吸血鬼のちょっと小さいかもしれない戦争が巻起こる事となってしまった。





………吸血鬼と和解した兄さんにばれたら
滅茶苦茶怒られてしまうかもしれない。





(「花子さん、今月のドールの新作衣装、僕持ってますよ」)



(「花子、俺の事ぎゅってしながら寝たらもふもふで幸せだと思うよ」)




(「どっちも魅力的なお誘いなのになんで二人の背後に殺気があるのかな?」)



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