俺様彼氏とセクハラ教師


私の彼氏はとても俺様で…
たまにその態度は私の豆腐メンタルをやすやすと踏みつぶしてしまう。





そんな時、いつだってどうしてか逃げ込むのは
決まっておいしいハーブティを出してくれる保健室。





「おやおや花子君……今日も逆巻君にいじめられたのかな?」



「いじめられたと言うか……私のメンタルが弱いだけなんですけど」




いつだって大人しくて精神的にそんなに強くない私にとって
時々アヤト君の愛ゆえの意地悪が酷く胸に刺さるときがあって…
だからと言って別れるつもりなんて毛頭ない。アヤト君だいすき。
でも……でも時々……時々大好きだけど悲しくなる時があるのだ。




「まぁ仕方ないと思うよ?花子君は普通の女の子なんだし……アヤ……逆巻君の意地悪が耐えれない事もあるさ」




「普通の女の子って……普通じゃない女の子なんているんですかね…」




「うーん……いるんじゃなかなぁ。世の中には特別な存在とそうじゃない存在がいるからね」




「…………、」




そっと落ち込んでここに逃げ込んできたときにいつも出してくれるハーブティを手渡されて
彼のそんな言葉に私はますます落ち込んでしまう。
嗚呼、もし私がその特別な女の子だったならアヤト君の意地悪にも傷付かずに済んだのだろうか。




「嗚呼、余計落ち込ませてしまったね。でも花子君…世の中トクベツばかりじゃつまらない。」



「先生……?」



「特別な者は案外平凡な者に癒され、救われるものさ………逆巻君……アヤト君がそうだよね。」



「え?」




私の考えていたことが分かったようにぽんぽんと頭を優しく撫でながら諭してくれるラインハルト先生に思わず目を見開いた。
あれ、先生…アヤト君が特別って……もしかして先生はアヤト君が吸血鬼だって事、知っているのかな。



そんな事を考えながらじっと彼の瞳を見つめれば、先生はお茶目に微笑んで人差し指を自身の唇へと持っていきナイショのポーズ。
あれ、この無邪気な先生の微笑み…どこかアヤト君に似ているような?




「先生……あの、」



「花子!!!ったく、またここに居やがったのかよ!!!」



どうして先生がアヤト君の事に詳しのか
どうしてその笑顔がアヤト君と少しばかり似ているのか
色んな疑問が頭に浮かんでひとつひとつ言葉にしようとしたときに勢いよく開かれた扉と声にびくりと体を揺らしてしまう。
ううう……今日のお迎えは予想外に早いかもしれない。




「あ、アヤト君…」



「花子、お前どんだけメンタル弱ぇんだよウゼェ…お前じゃなかったらこんなめんどくせぇ奴ぶち殺してるっての!」



「う、う、う…」




わざわざお迎えに来てくれたことは素直に嬉しかったのに
その後の言葉がまた私のハートを深く抉ってしまう。
め、めんどくさい……そうか、そうだよね。
アヤト君にとって彼のちょっとした言葉で傷付いちゃう私はめんどくさい人間だよね…




大好きな彼の言葉にまたずずーんと沈んでしまえば
誰かにふわりと抱き締められてしまった。
それはいつも感じている香りではなくて先程手渡されたハーブティの香りで
私は勿論だけれど、抱きしめられながらもチラリと視界に写るアヤト君も大きく目を見開いてしまった。




「え、え?ラインハルト先生?」



「あ?俺のもんに何してくれてんだオッサン!!」



「だって花子君が余りにも可哀想だから、私が取ってしまおうかなって」




予想外すぎる今の状況。
もう頭がうまい事まわらずに只々ハーブティーの香りの主であるラインハルト先生にぎゅうぎゅうと抱き締められっぱなしである。
え、なに。どうした先生。
いきなりこんな……セクハラじゃないのか。




「おい花子!早くこっち来い!!それともそんなオッサンに抱かれる程欲求不満ってか?」



「そ、そんな事……うぅ」




「ほら、花子が特別だからめんどくさくとも毎回此処に迎えに来る事や今も私に抱きしめられてるのが気に喰わないと素直に言えばいいものを……お前はいつだってそうやって人を傷つける。」




……………ん?




あれ、ちょっとラインハルト先生の声色を空気が変わった気がする。
ちらりと彼の腕の中から表情を窺ってみても彼は彼のままで変わらないのにどこか威圧めいた雰囲気に思わずぶるりと背筋を震わせるけれど
彼はそんな私の変化に気付いたのか離れないようにと抱き締めている腕の力を少しばかり強くした。




けれどそんな彼の少しばかりの変化も気になるが
それよりもラインハルト先生の言葉に私もアヤト君も顔が真っ赤である。




「は…?はぁ!?そんなんじゃねぇし、俺様のモンが勝手にどっかいくのが気に喰わないだけだ。」



「ほら、またそのような事……彼女はイブでもないし……本当に私が取ってしまうよ?」




顔を真っ赤にしながらいつものような意地悪を言われても
幾らメンタルが弱い私でも全然それが本心じゃないのは分かってしまう。
……ラインハルト先生ってアヤト君煽るの上手なんだなぁ…なんて、今自分の置かれている立場も考えず呑気にそう思っていれば
ガシリと腕をアヤト君に掴まれてそのままぐいぐいと強く引っ張られてしまい、その力の強さに思わず顔を歪めてしまう。




「ぃ……アヤトく、痛いよ、」



「うるせぇ。花子…お前は俺様のモンだろ。」




酷く怒ったような色を宿したその瞳にまたびくりと体を揺らしてしまえば
私を抱き締めていたラインハルト先生がながーい溜息をひとつ。
そしてちゅっと可愛い戦争のゴングが保健室一体に響き渡って
私は顔面蒼白。
アヤト君は怒りでお顔が真っ赤。
そしてその音の犯人であるラインハルト先生はしれっと意地悪なお顔。




「て、テメェェ!!!こ、こんのセクハラ教師!!!俺の…俺様の花子に何てことしてくれやがるんだゴルァ!!!」



「だって、こんなにも心身共にか弱い女の子に乱暴するなんてありえないじゃないか。全く…やっぱり花子君は先生がもらうよ。」



先程の可愛らしい音はラインハルト先生のリップ音。
その唇の際は見事に私のアヤト君以外が触れたことのない同じく唇で…
遂に堪忍袋の緒が切れてしまったアヤト君が先生に殴りかかったけれど彼はそんなアヤト君の攻撃を私を抱きながらひょいひょいと軽々躱してしまう




「っだぁぁぁ!!!オッサンいい加減にしろよ!!!何なんだよさっきから!!!」



「アヤトが………ごほん、逆巻君が花子君に優しくしてあげるまで先生は花子君をはなしませーん」




時々現れるラインハルト先生の誰かのお父さんみたいな雰囲気がひっかかるけれど
けれどアヤト君はそれどころじゃないようでさっきからラインハルト先生と私を離せ離さないの痴話げんかばかり…




「(うーん、)」



じっと先生の腕の中からアヤト君を見つめる。
今の彼の顔…今まで見たことない位必死ですっごく怒ってて
正直不謹慎だけれど……




「(嬉しい……かも)」



「ちょっとなんだい花子君いつも君の弱音を聞いてあげてる私が不利とかありえないよ」



「え!?」




そんな本当に必死なアヤト君には申し訳ないけれど不謹慎ながん替えを持てば
とっても不満そうな声が降ってきて思わず変な声が出た。
なんだか先生…さっきから私の考えを読めてるみたいで不思議。



「とにかく!!早く花子をこっちによこせよオッサン!!!」



「イブなら考えるけど花子君は普通の子だからいやだよ私がもらう。」



まぁ今はそんな事考える余裕がないほど
私は今俺様彼氏とセクハラ教師の間で壮絶な自身の取り合いに巻き込まれてしまっているのだけど…
ううん、これ…いつ終わるのだろうか。




(「私だって平凡に癒されたんだからアヤト君が彼女を大切にしないなら先生がもらってもいいはずだよね」)



(「はぁ!?わっけわかんねぇよ!!!つーか俺様が言うのもおかしな話だけど、どんだけ俺様なんだテメェ!!!!」)




(「(うううん、やっぱり二人って似てる気がする。)」)



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