仲直り〜レイジさんの場合〜


「レイジさん!スタイル良くなる薬作ってください!」


「…は?嫌ですよ」


私の突然の申し出に整った眉をピクリとあげて拒否をするレイジさん。
いつもならここで引き下がるのだが今日はそうはいかない。
彼の腰に抱き付いて思いっきりぎゃんぎゃん喚く。


「つくってくださいー!ナイスバディになってレイジさんをメロメロにしたいんですー!」


「また貴女は訳のわからない事を!ああ、もう離れてください!危ないです!」


そう、今レイジさんは絶賛晩餐の準備中なのである。
ギリギリと私を引きはがそうとする彼と必死に彼にくっつく私との攻防戦。

傍から見ればきっと我儘を言う子供とおかあさんだろう。
あ、でもレイジさんにおかあさんって言うとお説教が5時間を超えるから絶対に言わない。


「やーだー!作ってー!作ってくださいレイジさぁぁん!レイジさんが私でムラムラするのが見たいー!」


「はしたない言葉を使わないでください!下品ですよ花子!」


ゴスっ!
勢いよく私の頭に彼のチョップが下りてきてこの攻防戦はレイジさんの勝利で幕を閉じた。
ずるずるとその場にへたり込んだ私は両膝を抱えて拗ねる。


「ひどい、レイジさんの鬼。」


「えぇ、そうですね。私は吸血鬼ですのである意味鬼ではありますね。」


私の言葉に対して淡々と答える彼に対してぐすりと泣きべそ。
その間も彼は次々と豪華な晩餐を仕上げていく。
くっそ、どれもこれもおいしそうだ。ていうか全部私の好物じゃないか。
そういうさりげない優しさが大好き。


「大体そんな薬必要ないでしょう。」


「必要なんですー!私はレイジさんをもっともっとメロメロに…ん、」


盛大な溜息と共に吐き出された台詞に対抗して
再び大きな声で喚けば放り込まれる美味しい晩餐の一部。
思わず黙ってしまい大人しくもぐもぐと食べてしまった。


「花子さん、これ以上私を夢中にさせて狂人にでもする気なんですか?」


「………え、」


レイジさんは怒っている。
怒っているはずなのにそんな言葉は反則だ。反則過ぎる。
嬉し過ぎてもう顔は真っ赤なんですけど。
そして額への軽い痛み。
あ、レイジさん私のおでこ指で弾いたのか。


「それに、私はいつだって貴女に欲情してますよ。」


こう見えて抑えるのに苦労しているんです。
困ったように微笑まれてはもう私の脳内は爆発するしかなくて…


「それでも薬、必要ですか?」


「………いらない、です。」


「ふふ…よろしい」



勝ち誇ったかのような彼の台詞にもう頷くしか私に選択肢は残されていなかった。



「…おい三つ子、ありったけの火薬持ってこい。スバルは火もってこい。今ならトラウマを克服できる気がする。」


『ば、爆発させられる!リア充が長男の手で爆発させられる!』



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