仲直り〜ルキ君の場合〜

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「う…ぅえ…うぅ…」


「はぁ…どうしてお前が泣くんだ花子。」


「だって、だって…！」


ルキ君が怪我をした。
大したことはないらしいのだけれど、腕に巻かれた包帯はやはり痛々しくて
それを目の当たりにしてしまっては胸がぎゅうっと苦しくなり思わずボロボロと涙を零してしまう。
そんな私を見てルキ君はため息をつく。


「別にお前が痛い訳じゃないだろう…ホラ、泣きやめ。」


「…やだ、」


「花子、」


少し怒ったような声。
ルキ君は私が泣くのを酷く嫌う。
彼曰く愛する者の涙は見たくないと言う事らしいのだが


「俺の言う事が聞けないのか？」


「き、きかない…きょうは、きかない…」


「何故？」


未だに溢れる涙を自由の利く方の腕を動かして
そっと指で拭ってくれるルキ君は本当に優しい。
だいすき、だいすき、だから…


「だいすきなひと、が…こんな怪我…悲しい…もん…っ！」


折角ルキ君が拭ってくれたのに涙はまだまだ溢れる。
途切れ途切れになりながらも必死に言葉を紡ぐと
彼は片腕だけで、けれど力強く私を抱き寄せた。


「ならば、この大嫌いな涙は俺が花子を悲しませてしまった罰、か…」


「…うん、そうだよ。」


私の耳元で小さく苦笑した彼をぎゅっと抱きしめ返したらピクリと動く体。
ああ、もしかしたら傷に触れてしまったのかもしれない。
けれど何も咎めない彼を良い事にぎゅうぎゅうと抱き付く。


「もう私に泣いて欲しくなかったら怪我しないで…」


「クク…善処しよう。」


善処じゃなくて誓いなさいよ馬鹿。
そんな悪態を心の中でつきながらも私は静かに彼の腕の中で瞳を閉じた。


貴方が私の涙を嫌うなら
私は自身を顧みないあなたを嫌うわ。


だからどうかお願い、もっと自分を大事にしてよ。
貴方のためにじゃなくて貴方を愛している私の為に。

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