仲直り〜ユーマ君の場合〜


「ユーマの馬鹿。」


「知らねぇ。」


お互い顔を背けたまま数時間。
私は今非常に、ひっじょーに怒っている。
何故なら無神ユーマ君(17)の衝撃浮気現場を目撃したからである。


「あれだけ私以外の血はいらないとか言ってたくせにー!」


「おわっ!ちょ、いてぇよ馬鹿やめろ花子!」


ぼふぼふとクッションでユーマを集中攻撃。
学校の廊下を歩いていると何か不自然なもの音がしたから、ちょっとした興味本位で空き教室を覗いてみればユーマが知らない生徒の血を啜っていたのだ。

バチリと目が合えば顔面蒼白のユーマに対してにっこりと微笑み鉄拳制裁。
それでもこうして隣に座ってあげているんだから少しは感謝してもらいたい。


「あーもーユーマは私の事遊びだったんだ。サイテー。私は本気だったのに。」


「ちげぇよ!俺だって…!」


「うるさい、離してよ。」


掴まれた肩の手を思いっきりひっぱたく。
けれどその手は私を離そうとしない。
くっそ何だよさっきまでこの手が他の子を抑えてたかと思うだけでイラッとする。


「俺は花子だけだ。」


「じゃぁ何で他の子の血吸ってたのさ。」


「それは…、から、」


ん?
ユーマはいきなり恥ずかしそうに口をもごもご動かしながら何かつぶやいた。
ちょっと、図体デカいくせにそんなもじもじしないで可愛い。アレ、そう思う私は末期?


「ユーマ?」


「っだぁぁぁあ!もう!」


名前を呼ぶといきなり大声で喚き出し、わしゃわしゃと頭を掻きむしる。
何だなんだ一体何なんだ。


「お前っ!吸血ん時いっつも痛いって泣くだろ!嫌なんだよ!お前が泣くの!なんか…胸痛くなるし、その…だから…あーくそっ!」


真っ赤になってしまったユーマはそれ以上私に顔を見られたくなかったのか自身の胸に私の顔面を押さえつける。
ちょっと、苦しい。


「花子には、痛い思いしてほしくねぇ、から…」


「………ぶはっ」


「んだよ…」


思わず吹き出してしまった私にユーマは不満気。
分かってない。全く女心を分かってないねユーマ君。


「あのねぇ、確かに痛いのは嫌だけど。私はそれでユーマが他の子の血を吸うだなんてもっといや。」


「花子、」


「女って変な所で独占欲強いのよ。テストに出るから覚えておいてね。」


「…おう。」


バツが悪そうに頷いた彼を見て再び笑い、自ら服を乱す。それを見て驚く彼に抱き付いて耳元で囁くのだ。



「ホラ…早く私で口直し、して?」



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