お話をしようか


俺はどうやら少し変わっているみたい。
みんなみんな俺が自分を傷つけるとおかしな顔をする。
どうしてだろう。よく分からない。
それでもよかった。だってこの行為が俺の生きてる証だもの。



でも、あれ?
気が付けば周りには誰もいなかった。
家族は優しく見守ってくれていると、思う。
けれど誰も俺を抱き締めてはくれない。


それはきっと俺がみんなとちがうから。


ふいに腕を広げてみても、只々ヒヤリと風が吹き抜けるだけ。
俺がみんなと一緒なら誰かがこの腕にその手を絡めてくれたのかなぁ。



「…ぅ、」



パタパタと涙が零れる。
どうしようもない、幾ら足掻いても俺は俺だ。
理解していくれるのは俺がつくった身体に刻まれた彼等だけ。
それだけで十分なはずなのに、いつから欲張りになってしまったんだろう。


おかしい生き物は誰にも愛されてはいけない。
それは悲しいけれど現実だと思う。
けれど…ああ、けれど


だれでもいい。誰か【俺】を解って…理解して、受け入れて
何人もいらない、ひとりだけでいいんだ。


「アズサ君…!」


震える声で誰かが俺を呼ぶ。
気が付けば広げられていた腕の中に納まる一人の女の子。
震えてる…ああ、やっぱり俺が怖いんだなぁ。


「いいよ…無理しないで、花子。」


彼女の名前を出来るだけ優しく呼んで微笑んだ。
君は俺と一緒に居るにはあまりにも眩しい人だから…無理はしてはいけないと、思う。
けれど彼女は相変わらず震えているのに一際大きな声で俺の名前を叫ぶ。


「無理だってなんだってする!させて!わ、私は…、アズサ君の事、すきだから!」


「…どうして?」


俺は変わっているよ?
ヒトって言う生き物は変わっているモノが怖いんでしょう?
なのにどうして花子は俺の事を好きって言うの?
分からないことだらけなのに、花子の言葉はじわりと俺の胸を溶かしていく。


「どうしても…!なんでも…!好きだから!怖い…怖いけど好きなの」


「じゃぁ、一緒に…堕ちてくれる?」



震える彼女を抱き締めて聞いてみた。
誰も一緒に堕ちてはくれなかった俺と、一緒に…
すると花子はギュッと体温のない身体に抱き付いてきた。
ああ、寒くないかなぁ…


「アズサ君が、こうしてぎゅってしてくれているなら…どこまでも一緒に、堕ちるよ。」


「………そっ、か」



そんな簡単なの事でいいんだ、君は…
きっと今は俺の事を何も理解してはくれていないだろう…
けれど、それでも受け入れたいと願ってくれているんだね。



「なら、堕ちよう…ふたりで。」



ぎゅっと、花子を抱き締める腕に力を込めて微笑んだ。
ねぇ、今から沢山お話をしよう?
俺の事、おしえてあげる。沢山理解して、受け入れてね?


そして花子の事もたくさん聞かせて…
俺に、たくさんたくさんお話して。全部受け入れてあげるから。



だから、どうか…



「俺の事、あいしてね。」



小さく囁けば、花子は嬉しそうに頷いた。



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