私の神様


私はこの世界が大嫌い。
本当に全部全部壊れてしまえばいいだなんて考えている。
けれどそれはどうやっても叶わない事で…
だからせめて、自身を彩っているものだけでもと、そう願ってしまう。


「ふふ…また、壊しちゃったの?」



「だって、花子さんが…」



「うん、そうだね…ごめんねカナト君」


大きな瞳に涙をたくさん溜めて私に縋ってくる私の愛おしい人。
よしよしと頭を撫でるととても幸せそうに微笑むものだから思わず笑ってしまう。
こんな場所でこんなほのぼのとしたシーンを演じるのだから私達二人はどこかおかしいのだろう。



彼の両手にはいつもの相棒の代わりに鋭いナイフ。


小さな手は真っ赤。


鉄の香りが鼻につく。




足元にゴロリと転がる元人間。ああ、邪魔だなぁ…



「カナト君、これ、やだ。」


「ああ、ごめんね。燃やしちゃおうか。」


私が不機嫌な顔をして足元の肉片を蹴飛ばすと
カナト君は慌てたように私と彼以外を全て炎で包み込む。
ごうごうと燃える肉の匂いはあまり好きではないからカナト君にぎゅっと抱き付いて彼の香りを堪能する。ああ、甘いこの香りが大好き。


「嬉しいなぁ。花子さんに抱き締めてもらえるだなんて。」


「カナト君は本当に私が好きなのね。」


「うん、だいすき。」


えへへと照れながらもぎゅっと抱き返してくれる彼は本当に愛おしい。
そしてそんな彼を利用している私はとんでもなく悪い人間だろう。


「もう僕以外を見ちゃダメだよ?ね、約束…」

「うん、わかったよカナト君。だいすき。」


だいすき、だいすき、だいすき。
私の視界に入る全てを壊してくれる貴方が大好きよ。
そっと触れるだけのキスをして彼に微笑んだ。




これからもきっと私はアナタを裏切り続ける。



そしてその度に貴方は壊してくれるのでしょう?
私の世界を、全てを。
ああ、なんて素敵なんでしょう。
きっと最後にはあなた以外何もない世界が完成するのね。


「カナト君は私の神様ね。」


私の求める世界を創り上げる為に壊してくれる貴方は愛しくてかわいらしい私の神様よ。

「愛してるわ」

私の言葉にその神はまた嬉しそうに血塗れの姿で微笑んだ。



戻る


ALICE+